「17~20日の日程で韓国取材に行くんだが、休暇をとってあんたもくればいいよ。うまいもので一杯やろうじゃないか」
「そそられるが、仮に休みが取れたら、1月は15日しか働かないことになっちまうな……」
友人との間に交わされたひとコマなり。
私事ではあるが、ここ数日、わが母堂が身体の不調を訴えている。幸いにしてインフルエンザだのそれに類するような緊急性はないものの、話を聞くと、かかりつけの診療所に連れていくほうがよさそうな気配だ。それが7日・土曜日の夜だったので、「(明日は日曜で休みだし)様子をみて、よくないようなら月曜日に連れていってよ」と母堂。もちろん請け負ったが、よくよくみれば月曜日(つまり今日)はなんだかの休日になっている。いちおう電話で確認すると、予想通りに診療所は休診。それなら火曜日にと思うのだが、その火曜日が(たまたま)定休日ときている。日曜日も休診日だから3連休ではないか。
考えるまでもなく、つい数日前まで年末年始の休暇週だったわがニッポン。新年を迎えて「さぁこれから!」というところでの連休である(もちろんそんな休みなんぞ関係ないというひとや業種もあるが)。
勤め人時代は、こうした休日はありがたかった。繁忙期などには休日出勤を余儀なくされるケースはふつうにあったにせよ、休みを疎んじるサラリーマンがそうそうにいるとは思えない。
しかし逆から、つまり経営者側からみると、これって必ずしも喜んでいられるものなのだろうかとの疑念も浮かぶ。多くの場合、社員への報酬は月給という形で定額化されているだろうから、休日が増えれば、勤務1日あたりの単価が高くなってしまう。くわえて、稼働日の減少が業務や売り上げに影響することだってあるだろう。その稼働日不足を補うために休日出勤だの残業だのとなれば、(法令としては)割増賃金を支払わなければならない。働くほうも休日のしわ寄せはあるだそうし、ちゃぁんと辻褄が合うようになっているワケだ。
しかし、コレはあくまで「正社員」を対象としての話(くわえて、きちんと法令どおりに割増賃金を支払っている企業なり法人なりへの勤務人に限られる)。パートタイマーなど、いわゆる非正規雇用者の場合は、(例外はあるかもしれないが)単純に出勤日に応じて受けられるべき報酬が減るだけの話だからだ。
これは、たとえば弁護士の白川勝彦氏(リスペクト!)が繰り返し指摘している。
※官邸は“してやったり”、国民にとっては最悪・最低の事態。
<非正規労働者は、休みが多過ぎると困るのだ。正規労働者は休みの日でも給料が出るが、非正規労働者等は、働いた日しか賃金が貰えない。それが、現実なのだ。わが国には、そういう人が約3割以上もいることを忘れないで欲しい。>
世界中の国々をつぶさに検証したわけではないが(いずれヒマをみてリスト化してみたい)、諸外国と比較して、わが国の公的休日は、ときにズバ抜けて多いように感じる。休みが多いのは大いに結構。だが、その一方で有給休暇取得率の低さがたびたび話題に挙がる。筋違いの見方になってしまうかもしれないけれど、公的休日もまた「有給休暇」とした場合、その「取得率」はどうなるのだろうか……。そうしておいて、自主的な休暇取得もママならず、公的休日に右往左往させられているニッポンジン。
こうして公的休日が多いにも拘わらずなおそれを増やそうという動きがあるというのだから驚くほかはない。はたしてなんのための施策なのか?
これはあくまで個人的な憶測にすぎないけれど、白川氏の指摘がひとつのヒントになるように思う。
コイズミ以来、アベになってさらに雇用の「非正規化」が深化している。うがった見方をすれば、公的休日は「非正規雇用」に頼る企業なりにとっては都合がいいとはいえないだろうか。単に雇用云々でみると、たとえば生産現場であれば減産期には休日をそのまま休日とすればいいし、そのぶん人件費が削減できる。公的休日を稼動させたい場合でも「非正規」であれば支払うべき割増賃金を合法的にうやむやにしやすい。もちろん、正規雇用にもシフト制といったものはあるにせよ、足かせの少ない「非正規」のほうが増える公的休日との相性がいいのであるまいか。
もっともこれは、おそらくは一部の大企業などがももっぱらの話で、ただでさえ賃金を支払うのにあくせくしている中小企業などにとってははた迷惑といえるかもしれない。公的休日であっても営業しないとやっていけないし、かといって従業員に出勤させれば人件費の割り増しがのしかかってくる。ましてや「ブラック企業」云々も盛んに取りざたされているご時勢。まぁ、オレが勤めていた某企業を含め、周囲には残業代だの休日出勤手当てだのがどこふく風といった会社はいくらでもある。しかし、そんな企業にとっても、公的休日だらけの社会がどのように映っているのかと思う。
いずれにせよ、どこかで辻褄をあわせざるをえないのであろう。どのような形になるのかはいざ知らず……。
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