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猫池罵詈雑言雑記帳
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「週刊現代」が報じた大相撲の八百長疑惑にからむ事件は、日本相撲協会が民事訴訟に踏み切る展開となった。ここまで、同協会では疑惑の中心とされた横綱=朝青龍から事情聴取をなど独自に事実関係についての調査を続けてきていた。提訴に及ぶということは、協会としてきちんとした裏取りができたということもあるのであろう。
 大相撲をめぐる八百長疑惑というのは、なにも今回にはじまったことではないし、実際にあるのかどうかはわかりようがない。実際にテレビで観戦してみても、「あるとは思わないけれど、あるのかもしれない」というのがオレの感想だ(つまりはわからない)。もちろん、仮にそうした事実があるとすれば大問題であり、報じた「週刊現代」側だけでなく、事実関係を明らかにする絶好の機会といえるかもしれない。
 提訴については、ここに至るまでにとうの協会内部で調査をくり返したうえでなされており、そういう点を含めて、いちおうは正常な手続きを踏んでいる。提訴云々以前の段階として、版元に抗議の意志を表わし、同時に内部での調査をしてきた。あたりまえのことである。版元としても裏取りの強化はしてきたことだろう。そのうえで双方の見解が大きく異なっている以上、仕方のない展開といえる。

 ところが、こうした一切の手続きや事実確認の作業をなしにしていきなり提訴に踏み切った事件が起きている。フリージャーナリストの烏賀陽弘道(うがやひろみち)氏が現在巻き込まれている訴訟がそれで、流行歌のヒットチャート作成などで知られる株式会社オリコンから5000万円もの損害賠償を求められているというものだ。



 この事件、ほとんどの大手マスメディア(とりわけテレビ)が丸っきりといっていいほど報道していないことから、いまのところ認知の度合いも不当なまで低いように思われるが、ネット上では早い段階から情報が飛び交っているので、すでにご存じの方も多いだろう。
 月刊誌『サイゾー』(インフォバーン)に掲載された記事のなかで烏賀陽氏が電話インタビューに答えた内容が「名誉毀損」にあたるとされているもので、版元や記事を書いた記者を含めずに談話者個人だけを取り沙汰して提訴した点がこれまでに例のない特異な訴訟となっている。とうのコメントは文字数にしてわずか300字ていど。オリコンの統計方法などについて疑問を呈した内容だが、記事としてまとめたのが烏賀陽氏ではないばかりか、質問に答えただけでこの有り様なのである。じつはこの点をオリコン側も見方によっては認めているようだが、恫喝訴訟なのであった。合法的口封じ。こんなものがまかりとおるようでは、ジャーナリズムは壊滅してしまう。

 詳細は先にリンクした烏賀陽氏のサイトなどをご覧いただくとして、このように訴訟権を乱用した恫喝裁判は、 SLAPPと呼ばれ、アメリカ合州国では適用を禁じている州があるという。日本における最近の例で有名なのは、大手サラ金会社「武富士」による賠償請求訴訟だ。ジャーナリストの三宅勝久氏が『週刊金曜日』に発表した記事をめぐって同じく「名誉毀損」として総額1億1000万円の損害賠償請求を求められたもので、この裁判では三宅氏側の勝訴が確定、さらに同社に対して三宅氏側が起こした反撃訴訟においても原告の勝訴が確定している(関連記事)。
 リンク記事のなかで、裁判を戦うことがいかにたいへんだったかを三宅氏は証言しているが、このふたつの訴訟に共通するのは、反論の機会や手段もあり、そのための潤沢な資金を持つ側が、抜き身に近い形の相手を訴訟という手段を用いて攻撃していることである。しかもオリコンのやり方ときたら、事前の抗議や協議に関する手続きの一切を無視し、いきなり、無警告で個人を相手に提訴しているというものだ。言論封じを目的とした合法的テロといってもいいだろう。遣り口としては、アメリカ合州国による原爆投下以下のシロモノではないか?
 武富士の例では、記事をねつ造あるいは誤りだとしながらも、そうでない証明については自らはせずに進めていたという。本来なら、誤りの証拠について、原告側こそが提示してしかるべきだと思うのが、今回の裁判ではどうなるのだろうか……。

 こうした提訴の場合、訴える側には少なくとも金銭的な負荷はほとんどないといっていいだろう。なにしろ上場企業である。しかし、受ける側にとっては、弁護士ひとり雇うのだって大きな負担となる。しかも組織力をもって臨める企業とは異なり、個人にとってはその時間的・体力的な負担も図り知れないものがある。つまりはハナっから力のある側にとって有利な仕組みのなかで強いられる戦いなのだ。そんななかで勝訴した三宅氏に敬服する一方、こんなものに巻き込まれた烏賀陽氏の状況を慮ると、気が重くなってくる。これはオレ自身も書き手であることもそうだが、今回のようにコメント者だけをターゲットにした恫喝裁判が認められることになると、ジャーナリズムだけでなく、社会全体の言論封鎖につながる可能性すらあるからだ。いまはなんら関係ないと思っているひとびとにとっても、常にこの種の裁判にさらされるかもしれないのである。そして、これだけの大事件にも拘わらず、なんら、あるいは“申し訳”ていどにしか報道することのないわが国の大手メディアとは……。


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 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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