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猫池罵詈雑言雑記帳
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 先ごろ、韓国からの輸入モノが氾濫する日本のテレビ界がひとしきり話題になった。そこではちょっとした騒動が起き、そのあたりについては当ブログでもなんどか触れた。もとより、騒ぎそのものはそのきっかけとはまったく異なる性質のものだったらしく、とりたてて論評にあたいする内容だったとは思えない。だが、「韓国モノが多すぎるのでは?」という感触、あるいは疑問は別段おかしいものでもなく、日々のテレビ番組表をみればその数に驚かされるひともいるに違いない。

 韓国ドラマにも面白いものはあって、個人的に続けてみているのがNHKで放映中の「トンイ」である。その前の「イサン」も最後まで楽しめた作品だった。つい最近は、「赤と黒」(原題「悪い男」)が集中的に放映され、珍しく最初から最後まで腰を据えてつきあった。内容は現代を舞台にした復讐物語だが、韓国ドラマには珍しいサスペンス調の展開にスリルがあり、物語の展開をあれこれ想像しながら楽しむことができたものだ。
 この「赤と黒」。初回のみ1時間枠だったが、2回目以降は1日2話ずつ毎日(月〜木曜日)放映され、全部17話が都合9日間でまとめられていた。おかげで集中して楽しめたわけだが、驚いたのは10月7日からさっそく再放映されるというのである。それも吹き替えなし字幕だった初回放映とは異なり日本語吹き替え版だという。終わったばかりの番組を、どうしてわざわざ再放映をするのか? しかも音声を変えてまで。最終回終了直後に流された予告をみてクビをかしげざるをえなかった。もっとほかに番組はないのだろうか……?

 強引な国策によるデジタル化に伴い、タテマエとして複数の音声や字幕などのカスタムに対応した機器が普及しているワケだが、とすれば、視聴者は好みや都合に合わせて音声を選べるハズである。したがって、初回放映時から原語+字幕と吹き替え音声を視聴者に選ばせればいいだけの話であり、あの放映手段の狙いがよくわからない。じつは、これは「赤と黒」にはじまったことではなく、たとえば「イサン」でも同様の手法がとられていた。つまり、吹き替え版を全話放映し、直後にあらためて原語版を放映したという案配である。まぁ、人気番組の再放映と好意に解釈することも可能だし、NHKでいえば「大河ドラマ」や「朝ドラ」も本放映期間中での再放映をしているので、視聴者としてはみたいときにみればいいということもいえるかもしれない。だが、ふと思ったのは、これはテレビ界の悲鳴なのではないかということであった。

 現在、地上波とBS、さらにCS(ほかにケーブルなどもあるが)が番組を放映しているが、これは比較的最近になってから成立した放送形態である。そこで感じるのは、そうした放送枠の増加に対し、制作側があっぷあっぷなのではないかということだ。放映枠はあるけれど、ソフトが追いつかないのである。したがって、“埋め草”よろしく再放映番組に頼らざるをえないワケだが、ところがそのネタすら十分に持っていないというのが実態なのではないか? そもそもが地上波をみられよ。ドラマやドキュメンタリーなどと比べて制作の手間が軽い(例外はあろうが)「バラエティ」の類ばかりではないか。
 そんな番組群。専門的なことはわからないが、外野からみて感じるのは以下のようなドロ沼の構図である。すなわち、

・イ:よりよいコンテンツをつくるための資金集め
 の破綻と、
・ロ:カネを集めるためのコンテンツづくり
 である。

 主従関係でみた場合、「イ」の主はコンテンツである。より優れた番組をつくり視聴者を掴む。そのための資金源としてスポンサーを募る。ここではあえて「生活の糧」という部分を外しておいた。対する「ロ」では主がカネになり、当然のこととしてスポンサーウケのしやすい企画を立てざるをえなくなる。集めたカネは制作にではなく資本側のフトコロあるいはサイドビジネスに召し上げられる。視聴者の支持を得るということでは同じじゃないかと思うかもしれないが、その仕掛けも異なれば、支持を得た結果も異なる。企画先行と営業独裁という言い方もできるかもしれない。

 そうしたツケが、いまの「あっぷあっぷ」なのだとしたらどうだろう。ドラマの再放映で埋めようと思ったところで、あるのは乱造されている「おまわりモノ」かとっくに旬をすぎたアイドルタレント主演モノばかり。でなくても再放映にかかる「出演料」が「利益」を圧迫してしまい、おいそれと再放映できない可能性だってある。そんなところに白羽の矢が向けられたのが韓国からの輸入モノだったのではないのか? ドラマだけじゃない。かつて盛んに放映されていた「歌番組」が激減し、タイアップだなんだなどと歌謡曲(ジャンルはさまざまだがようは日本のポップス)の流通形態(権利関係)がより複雑になってしまった。テレビ画面に設えられたステージで歌ってみせるというあたりまえのことがやりづらくなったのが日本のテレビ界なのではないか。言い換えれば、韓国モノの“仕掛け”と“流行”とは当然の帰結であり、仮にそれを否定してみたところで、自らが招いた事態にすぎないともいえよう。崩れ去った主従のバランスがモノづくりのスキルを喪失させ、こんどは営業のキャパシティを自らの力でフォローできなくなってしまったのだ(ここには景気の問題もからんでくるが)。

 輸出国としての韓国ではどうか。忘れてはならないのは、韓国では国家として映画やドラマを重要産業として捉えてきたことである。映画館では年の3分の1を自国作品の上映を義務化してきたほどで、現在の輸出攻勢は、いわばその延長線上にあるといえるだろう。各テレビ局はこぞってドラマづくりに力を入れ(一方で報道に重きを置く局などもあるが)、営業(数字)という点でも切磋琢磨を展開している。肝心なのは、そこではドラマ対ドラマとしての視聴率競争が生きているということであり、ドラマで勝てないからバラエティをやればいいという戦いでないことである。もちろんそれぞれが自主制作だ。個人的には、その競争が逆にドラマの乱造につながるなど一部で無理が生じているとみているが、こう言っては悪いけれど、より安易なカネモウケに流れてしまったわが国の同産業と比べてどれだけ活き活きとしていることか(制作現場などの内情はそうとばかりはいえないかもしれないが)。

 蛇足だが、韓国のテレビでは、ドラマ放映中のコマーシャルはけっして多くはない。テレビをつけるタイミングによっては延々とコマーシャルばかりでヘキエキとさせられることもないではないが、少なくともドラマや映画の放映では比較的じっくりと楽しむことができるのだ。対するわが国ではどうか。かつて30分枠であれば、オープニングのあとに1分間のコマーシャルが入り、24分前後の本編を2つにわけて途中に1分間のコマーシャルを挿入、次回予告とエンディングの手前にさらに1分……という案配だったハズだが、いまや本編は3〜4切のブツ切れ状態であり、しかも1回ごとの枠が増大している(先ごろ、テレビで宮崎アニメ=映画=をやっていたが、それもまたそんな状態だったので、3回目のコマーシャルあたりでみるのを止めたことがある)。だいたいが、こんなところからしてマトモなモノづくりができる体制になっていないのがわが国のテレビ界だというのは筋違いの見方だろうか? もっとも、キャパシティに「あっぷあっぷ」なのは営業サイドも同様なのだろう。BS放送のコマーシャル(通販番組を含む)のラインナップをみれば大方の想像はつく。

 翻って。韓国ドラマがどうのと槍玉に挙げるのも結構だけれど、そうなった背景について、ほかならぬ祖国のもろもろをみつめ直してみたらどうなのか。韓国に負けるのがイヤなら、さらに上質でかつ輸出競争に勝てるテレビ番組(ドラマだけでなくドキュメンタリーや歌謡モノだってある。一部のアニメについては外国での人気を得ているが)をつくればいい。そのための土壌づくりということを、官民挙げて真剣に取組む。それこそが現状打開への第一歩なのではないかと思うのだが、いまの状態では単なる「負け犬の遠ぼえ」である。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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