詳しくはリンク記事をお読みいただきたい。安原氏の記事の題材は8月29日づけ朝日新聞に掲載された消費税増税をめぐる対談「消費増税どう考える 本社論説委員と経済部デスクが議論」である。
これは、反対・賛成の相対する立場から、社内の記者同士が議論するというものだ。この対談について、安原氏は「消費税問題担当のベテラン記者が名乗りを上げて議論し、賛否の主張を明確にする姿勢は評価に値する」とし、それぞれの意見を咀嚼したうえで「私としては批判派に軍配を挙げたい」としている。もとより、それは「親近感を覚える」というレベルでの賛意であり、安原氏ご自身は必ずしも対談そのものを評価しているわけではないようにも読み取れる。
件の対談記事は、一見すると反対と賛成との立場から意見をぶつけあっているようにもみえる。両者の意見が根拠とするは、安原氏がまとめるように、
※賛成的意見……
・規制緩和の徹底
・いつになったら増税できるのか。
・増税を先送りする口実は、もう許されない。
※反対的意見……
・「まず消費増税」でいいのか。国民の暮らしの目線から考えると、問題が多すぎる。多くの家庭が負担増に耐えられるのか。
・来年度の予算編成では生活保護費が削減の標的にされている。結局は削りやすい弱者にしわ寄せがいく。
・収入や財産が多い人が税金も多く払う。それが社会保障に回り、お年寄りや収入の少ない人たちを支える。そうした「再分配」機能が重要だ。
・消費増税の前に、既得権益に切り込んで歳出を減らす。裕福な人にもっと負担してもらう。そうしないと政治不信がますます強まる。(リンク記事より引用)
である。こうしてみると、たしかに片方からは消費税増税に対する反対の立場が窺えるかもしれない。だが、この朝日新聞の対談記事は、まごうことなき消費税増税是認を誘導するまやかしなのではないのか? たとえば、反対的立場を演じる側からつぎのようなセリフが語られている。
『消費増税はいずれ避けられないと思う。しかし国民が納得できる手順を欠いたまま、「決める政治」と言われても信頼は得られない。』
この「消費増税はいずれ避けられない」。これが問題なのだ。いくらか慎重かつ遠回しになっているだけの話で、こんなものは消費税大増税を推進する側のそれとなんら変わらない見方であり方便ではないか。このあとには増税の前にすべきこととして歳出減だの「裕福な人にもっと負担してもらう」だのとただし書きが添えられているけれど、言っていることは賛成を演じている人物と基本的には大差がないのである。一方で、賛成役は「歳出の見直しや税収増につながる経済活性化策に政府がどこまで踏み込んでいるか、しっかり目を光らせていく」としているのだからなおさらであろう。
しかしこの対談が巧妙なのは、消費税増税を推進する側の正体に目隠しをしているところにある。逼迫する社会保障費や富裕層への課税強化。あるいは弱者への救済策などがあやふやながらいちおうは語られるなか、消費税増税によって何者がトクをしているのか、そしてそれはたとえばだれなのかという点にはけっして踏み込もうとしないのである。
次第に明らかになりつつあるが、消費税増税によって軽減されるのは法人税だの富裕層の所得税や相続税だのだけではない。たとえば「消費税還付金」はどうか。これは、輸出にさいして消費税負担を外国にさせないという口実で設けられている税の還付制度である。簡単にいえば、製造などに関わる国内での営利活動にかかった消費税を払い戻しましょうというものだ。この輸出企業のみがその恩恵を受けられる制度の実態について、たとえば「ゲンダイネット」ではつぎのような実績が紹介されている。
「例えば、ある企業の売り上げが国内で500億円、輸出で500億円だったとします。仮にトータルの仕入れ額が800億円だったとしましょう。その場合、国内で販売した500億円の売り上げに対する税額は25億円、仕入れの税額は40億円となり、差し引き15億円が還付されることになるのです」(消費税10%なら大企業は6兆円のボロ儲け)
「政府の予算書を見ると、こうした還付金は約3兆円(10年度)あり、消費税の総額(約12兆5000億円)の約3割に上ります。仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達するのです」
ようは、消費税を利用して利益率を挙げているということであろう。消費税大増税を推進したがるワケである。リンク記事にもあるとおり、まさに「黙っていてもカネが入る」のだから笑いが止まらないだろう。そして、その弊害のひとつとして、挙げられているのが地方自治体の財政への影響である。いわく、
「トヨタ本社がある愛知の豊田税務署は約1150億円の『赤字』です。税務署はトヨタに毎月、200億円近くを振り込まなければならず、遅れると巨額の利息が付くので大変です」
である。しかるに、社会保障などというタテマエやら低所得者層対策がどうしたなどという官僚の作文と大差のない論議に終始する朝日新聞の対談はいったいなんなのかという疑問にゆきつく。そういう前提でもって消費税増税は避けられないと追認する。
まぁ、あまりストレートにコトを運ぶワケにもいかないというお家事情は理解できないのでもないといいたいところかもしれないが、すでに感想を述べたように、件の対談そのものが遠回しな消費税賛成にすぎないと思われるので、そんな「理解」など無用の長物というものであろう。良識ある記者の苦悩も同時に察せられるのではあるけれど……。
これは、反対・賛成の相対する立場から、社内の記者同士が議論するというものだ。この対談について、安原氏は「消費税問題担当のベテラン記者が名乗りを上げて議論し、賛否の主張を明確にする姿勢は評価に値する」とし、それぞれの意見を咀嚼したうえで「私としては批判派に軍配を挙げたい」としている。もとより、それは「親近感を覚える」というレベルでの賛意であり、安原氏ご自身は必ずしも対談そのものを評価しているわけではないようにも読み取れる。
件の対談記事は、一見すると反対と賛成との立場から意見をぶつけあっているようにもみえる。両者の意見が根拠とするは、安原氏がまとめるように、
※賛成的意見……
・規制緩和の徹底
・いつになったら増税できるのか。
・増税を先送りする口実は、もう許されない。
※反対的意見……
・「まず消費増税」でいいのか。国民の暮らしの目線から考えると、問題が多すぎる。多くの家庭が負担増に耐えられるのか。
・来年度の予算編成では生活保護費が削減の標的にされている。結局は削りやすい弱者にしわ寄せがいく。
・収入や財産が多い人が税金も多く払う。それが社会保障に回り、お年寄りや収入の少ない人たちを支える。そうした「再分配」機能が重要だ。
・消費増税の前に、既得権益に切り込んで歳出を減らす。裕福な人にもっと負担してもらう。そうしないと政治不信がますます強まる。(リンク記事より引用)
である。こうしてみると、たしかに片方からは消費税増税に対する反対の立場が窺えるかもしれない。だが、この朝日新聞の対談記事は、まごうことなき消費税増税是認を誘導するまやかしなのではないのか? たとえば、反対的立場を演じる側からつぎのようなセリフが語られている。
『消費増税はいずれ避けられないと思う。しかし国民が納得できる手順を欠いたまま、「決める政治」と言われても信頼は得られない。』
この「消費増税はいずれ避けられない」。これが問題なのだ。いくらか慎重かつ遠回しになっているだけの話で、こんなものは消費税大増税を推進する側のそれとなんら変わらない見方であり方便ではないか。このあとには増税の前にすべきこととして歳出減だの「裕福な人にもっと負担してもらう」だのとただし書きが添えられているけれど、言っていることは賛成を演じている人物と基本的には大差がないのである。一方で、賛成役は「歳出の見直しや税収増につながる経済活性化策に政府がどこまで踏み込んでいるか、しっかり目を光らせていく」としているのだからなおさらであろう。
しかしこの対談が巧妙なのは、消費税増税を推進する側の正体に目隠しをしているところにある。逼迫する社会保障費や富裕層への課税強化。あるいは弱者への救済策などがあやふやながらいちおうは語られるなか、消費税増税によって何者がトクをしているのか、そしてそれはたとえばだれなのかという点にはけっして踏み込もうとしないのである。
次第に明らかになりつつあるが、消費税増税によって軽減されるのは法人税だの富裕層の所得税や相続税だのだけではない。たとえば「消費税還付金」はどうか。これは、輸出にさいして消費税負担を外国にさせないという口実で設けられている税の還付制度である。簡単にいえば、製造などに関わる国内での営利活動にかかった消費税を払い戻しましょうというものだ。この輸出企業のみがその恩恵を受けられる制度の実態について、たとえば「ゲンダイネット」ではつぎのような実績が紹介されている。
「例えば、ある企業の売り上げが国内で500億円、輸出で500億円だったとします。仮にトータルの仕入れ額が800億円だったとしましょう。その場合、国内で販売した500億円の売り上げに対する税額は25億円、仕入れの税額は40億円となり、差し引き15億円が還付されることになるのです」(消費税10%なら大企業は6兆円のボロ儲け)
「政府の予算書を見ると、こうした還付金は約3兆円(10年度)あり、消費税の総額(約12兆5000億円)の約3割に上ります。仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達するのです」
ようは、消費税を利用して利益率を挙げているということであろう。消費税大増税を推進したがるワケである。リンク記事にもあるとおり、まさに「黙っていてもカネが入る」のだから笑いが止まらないだろう。そして、その弊害のひとつとして、挙げられているのが地方自治体の財政への影響である。いわく、
「トヨタ本社がある愛知の豊田税務署は約1150億円の『赤字』です。税務署はトヨタに毎月、200億円近くを振り込まなければならず、遅れると巨額の利息が付くので大変です」
である。しかるに、社会保障などというタテマエやら低所得者層対策がどうしたなどという官僚の作文と大差のない論議に終始する朝日新聞の対談はいったいなんなのかという疑問にゆきつく。そういう前提でもって消費税増税は避けられないと追認する。
まぁ、あまりストレートにコトを運ぶワケにもいかないというお家事情は理解できないのでもないといいたいところかもしれないが、すでに感想を述べたように、件の対談そのものが遠回しな消費税賛成にすぎないと思われるので、そんな「理解」など無用の長物というものであろう。良識ある記者の苦悩も同時に察せられるのではあるけれど……。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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