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猫池罵詈雑言雑記帳
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「ぼくはあんまりよく知らないんですよ。原発のこと」
 前回「このへんにしておく」と記したにも拘わらず首尾一貫のないことではあるけれど、せっかくとうのご本人がこんな笑いぐさの一席をぶってくれたのである。やはりひとことぐらいは罵声を浴びせてさしあげるのがスジというものであろう。

 件の発言は1日の記者会見で起きたらしい。それに先立った25日には「私は原発の推進論者」とあらためて宣言していた石原慎太郎だが、1日の会見で中部電力浜岡原発の危険性に対する認識を問われたのに対しそんな逃げ口上をぶったというのである。
 語るに落ちたとはこのことか。この事実は、あの男が本質的には政治家などではありはせず、いわんやモノ書きとしても駆け出し未満の失格者だということを明らかにしている。「よく知らない」状態で繰り返されてきた堂々たる発言や執筆の数々。断っておくが、あの男は発言やら行動やらが(タレントよろしく)世間から注目されている人物のひとりであり、しかも首都の知事という重責を背負ったハズの権力者である。ごく個人的な雑談や飲み屋でのグチではないのだ。それがいかにくだらなくとも、あの男の発言は権力を持つベテラン政治家のものと解され、「評論」として“立派に”通用しているのである。それがこのていたらく。ほんのわずかであろうと責任や立場というものを慮る能力を持っているならば、とうていできえないお粗末というほかはない。

 モノ書きのはしくれとしてあえて(エラそうに)述べておけば、文章や作品のスタイルはどうあれ、取材や体験、見聞などに裏づけされた土壌があってしかるべきで、いわんや報道やノンフィクションといった分野(広義には、オレがおもにやっている旅行紀行文や旅行案内なども含まれる)であれば、相応の取材と筆者なりの理解が必須である。もちろん100の理解などムリな話だし、誤解や曲解、ウッカリした知識不足はいつだって起こりうるとはいえ、なんにだって限度というものがあるのだ。事実に基づく記事を書くさい、たった1行のためにときとして莫大な取材だって必要になるが、それとて納得できる裏づけが得られなければ(いったんは)ペンディングすることだってある。100はムリなら50なり80を理解し、その範疇で可能な文筆をする。間違っても手に余った20のしったかぶりをしてはならない。少なくとも事実を伝えたいのであれば。それがモノ書きとしての最低のたしなみであり常識というものではないのか?
 ところが、あの男ときたら、いけしゃーしゃーと「よく知らない」と逃げを打ったのだ。「知らない」のはいい。問題は、そんな逃げ口上を用意したかあるいはつい飛び出したかはしならないが、そういう低レベルの理解でもって「原発の推進論者」として発言を繰り返したり雑文を寄稿し世論を騙してきたところにある。無知に基づく恣意的な「推進論」。そんなのに騙されてきたほうもほうだが、こういうのを世間では詐欺師とは呼ばないか? 当ブログでは、ある種の“敬意”と揶揄とを込めてあの男を「三文文士」だの「小説家崩れ」と評してきたが、これでは「三文」だって贅沢というものであろう。

 そういえば、同種の“詐欺師”にイザヤベンダサンというペンネーム(途中から本名を用いたが)で駄文を書き散らした日本人がいたが、この男も大家づらをして『日本人と原子力』などという一席をぶっていたなぁ。それによれば「日本人は核アレルギー」であり困ったものだということらしい。個人的な知人にもいる。アメリカ合州国の、たとえばハワイ州でごく日常として原子力空母が常駐あるいは寄港するけれど、住民はやれ核がどうのとか騒ぎはしないといった類の話をマクラに、しかるにわが日本人たるやたかが原潜の寄港ていどで大騒ぎとするのはケシカランというワケだ。あの石原慎太郎というのもようはそのレベルであろう。そんな話を面と向かってぶたれたときにもそう思ったものだったが、大丈夫ですか? そんな稚拙な観察で乱暴なことをぶって。
 たとえば今回のわが国での原発事故にさいし、「日本人」でないひとびとはどうしましたか? こぞって国外に脱出をはかり、あるいはわが国への渡航に注意を喚起したのは「日本人」ではないが(日本人にも脱出組や希望者はいるかもしれないが)、ならば彼らだって「日本人」同様に「核アレルギー」ということになってしまうではないか。
 たしかに、原発など核施設が居住地域に接しているなど、わが国での一般常識からすれば「大胆」ともいえそうな国があり、アメリカ合州国やフランス共和国のように自身のテリトリーから遠く離れた土地などで核実験をしてきた国もある。だが、たとえばドイツでは原発政策への見直しが再度はかられ、大規模な住民デモが起きたが、これをどう説明できるというのか。チェルノブイリやスリーマイル島事故のとき、ロシア人や欧米人らはどのような反応を示しましたか? 一方、わが国はさきの戦争で2発、さらに核実験と称される地域破壊および地球汚染の直接的な被害すら受けているが、あるいは今日までも「重大インシデント」とも呼べるかもしれない原子力関連事故が起きているが、それにしては寛大に原子力を受けれている。その片棒を石原のような男が「よく知らない」ままに担ぐ(いち早く国外脱出および自国民の救済にあたったフランスのような国もあるが、この国から震災後にMOX燃料運搬船が日本に向けて出航したという報道もある)。

 ごく個人的な考えを示しておけば、「原子力そのものが全面的に否定されるのは、日本にとっては好ましくない」という石原の考えを真っ向から否定しようとは思っていない(ただし「日本にとっては」という部分には疑問を感ずるが)。貴重なエネルギー源として原子力利用の可能性を研究し、開発に力を注ぐことそのものが無意味だと考えていないからだ。だが、今回の事故でも明らかになったように、人類は残念ながらいまのところ原子力を実用していい段階にまで達していない(異論はあるだろうが)。使うことそのものはできても、本質的なコントロールがいまはまだムリなのである。たとえ史上稀な自然災害が事故のきっかけだったとしてもだ(危険な使用済み燃料の処理さえ先送りにされている)。

 感染症のいわゆる「バイオハザード」を段階的に設定した取り扱い基準というものがある。国や組織によって違いはあるが、考え方のひとつとして基準化されたのが「個体」と「地域社会」それぞれに対する影響度だ。たとえば、伝播の効率が高く致死率がときに90%にものぼるというエボラ出血熱はそのうち最高(危険)度の基準。「個体および地域社会に対する高い危険度」と規定されるレベル4である(『病原体等安全管理規定』日本感染症研究所。ちなみにHIVは「個体に対する高い危険度。地域社会に対する低危険度」のレベル3、いちおうは有効な予防や治療が可能なインフルエンザは「個体に対する中危険度。地域社会に対する軽微な危険度」のレベル2である)。当然のこととして、レベルが上がるほどその管理は厳重であり、厳格さが求められる。

 ひるがえって、これはあくまでもたとえにすぎないが、原発や原子力もまた、「個体および地域社会に対する高い危険度」を持つ施設でありエネルギー源であることは間違いないだろう。わが国ではレベル4の取り扱い可能施設が東京都内と茨城にあるものの地域住民らの反対などから実際には稼動していないというが、はたせるかな原子力のほうはどうか。「個体」や「地域」の考えに沿えば、原子力事故は「個体」「地域」ともに極めて高い危険度を孕むことが少なくとも事実として明らかになったのが今回の事件だ。もちろん、万が一の患者発生や流行などに備える施設とエネルギー開発のための施設とを同列にすることが必ずしも適当だとは思っていないが、それにしたってあまりにも無防備なまま推進されてきたのではないか、原子力開発が。
「個体」や「地域」の考えに沿えば、原子力事故は「個体」「地域」ともに極めて高い危険度を孕むことが少なくとも事実として明らかになったのが今回の事件だ。それもワクチンの類も有効な治療法もなく激症のまま大多数が死に至るエボラ出血熱レベルの疾患が、ややもすればインフルエンザなみに大流行するという事態にすら近い。
 原子力そのものを放棄せよとまではいわないが、そうした自覚があってこそ研究が利用ができるシロモノだということを骨の随まで認識すべきではないのだろうか。
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