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猫池罵詈雑言雑記帳
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 ギョっとさせられることもあるものである。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」に元自民党幹事長の野中広務氏がインタビュー記事で登場しているのだ(6月27日づけ)。これにはちょっと驚いたが、同時に考えさせられるところがあったので遅ればせながら紹介してみたい。

「特別インタビュー 憲法・戦争・平和」と題した記事はつぎのようにはじめられる。

 25歳で郷里の町会議員になり、衆院議員引退までの52年の政治生活を通じて「宿敵」だったあなた方(「赤旗」)に私の思いを語るのも、いまの時代が、そうさせるのだと思います。

   野中氏が「宿敵」を通じて語った「いまの時代」とはどういう時代なのだろう。
 談話形式の記事には「議員引退の訳」「大政翼賛会に」「憲法」「戦争の傷跡」「歴史の学ぶ」の小見出しがつくが、いずれも氏が冒頭で語った「いまの時代が、そうさせる」に通ずる鋭い見識によっている。

 日本の政治を見ると、おかしくなっていく日本を感じます。とくに小泉内閣の5年は(中略)日本社会の屋台骨を粉々にしてしまいました。私はこんな内閣と同じ時代に国会議員でいたら後世恥ずかしいと思い、議員を退いたのです。

 という、自らが所属した政治集団に対する疑念がまずあり、「この国の進路を誤らないように」働きかけてゆきたいという情熱に突き動かされているのである。自民党内の重役を歴任しながらも議員を辞したその姿は、当ブログでもたびたび紹介している白川勝彦氏のそれと重なる部分があるのではないかと思うが、保守政治の論壇にこうした骨のある人物がいるという事実は、まだ日本も棄てたものではないと心強い思いがする。そして、そうした政治家から見捨てられてゆく自民党とはなにか。記事によれば、たとえば01年10月の「テロ特措法案」および03年6月の「イラク特措法案」にからみ、氏は自衛隊の派遣について慎重に扱うべきだという立場を貫いたという。ところが、ほかに同調したのは野呂田芳成氏(元防衛庁長官・衆院秋田2区)と谷洋一氏(元農水相・衆院兵庫5区:引退)のふたりだけ。ほかすべての自民党議員が自衛隊の海外派兵を当然のこととして捉えてるという情況に、自民党は戦争が好きな政党になってしまった」とむなしさすら覚えたというエピソードが紹介されている。野呂田、谷両氏の“腹の内”になにがあったかはともかく、バリバリの保守政治家である野中氏ですらある種の“異端”となってしまうほど、自民党内の暴走がエスカレートしていたということなのであろう。

 もちろん、野中氏は自衛隊(軍備)否定論者ではない。談話のなかでも「憲法について、9条2項を変えて自衛隊を認め」と発言しているのだ。ただし、「しかし海外へ出さないという規定にすべき」という見識を示すとともに、わが国が現憲法の理念をひとつのよりどころとして「戦争に加担しない道を歩んできた」事実を重視している点が、自民党あるいは民主党の主流と異なる。「日本はあくまでも憲法の掲げる理念に則って国際平和に貢献すべきだと思」うという氏の言は正論にして極めて重い意味を持つのだ。現段階での武力の放棄は現実的ではないだろうとオレも思う。しかし、だからといって武力でものごとを解決できないことはすでに幾多の事実が積み重なるなかで明らかではないか。ところが、こんな正論でさえ、まったく相容れない政治集団と化したのが自民党なのである。武力行使とは、殺人と破壊である。

 氏は民主党の小沢一郎氏が国連の下でなら自衛隊の海外派兵を認める発言をしている点にも言及、「こんどの総選挙で民主党が政権をとってもわれわれにとっても何の展望も開けないでしょう」という絶望的な見方すらしている(同感だ)。これはもう八方ふさがりといっても差し支えないような状態ではあるが、かくのごとしの情況を生み出した背景のひとつとして、わが国における歴史教育の失敗があったことを指摘しているのは、野中氏の見識の正しさを顕わしているといえよう。

 私は、子どもたちにしっかりと近代史を教えてこなかったツケが、田母神俊雄・元航幕僚長のような暴言を吐く人間が出てくるような、悲しい、いまの日本の狂ったような状況に拍車をかけていると思います。(中略)国の根幹を決めなくてはいけない政治家たちが、しっかりした歴史認識にたって、再び誤った道へ走っていく流れにブレーキをかけなくてはならないと思います。

 日本はいま、非常に危険な岐路に立たされていると思う。このままいけばどうやら自民党が下野する可能性が高いようではあるが、新政権を期待される民主党だって本質的には自民党と大差があるわけではないのだ。ただ、モリだのコイズミだのアベだの一連の極右かつ傀儡勢力があまりにも力を持ちすぎている自民党に対し、そこまで至っていない民主党がいくらかリベラル色を持っているようにみえるだけなのである(だが前原誠司氏のようなスーパー右翼が力を持っている)。
 たとえば、今後、民主主導で政権が運営されたとして、国会議席の大幅縮小が実施される可能性があり、そうなるといよいよ自・民以外の勢力にトドメをさしかねない状態になる。そうなったとき、たとえ(このインタビュー記事を発表した)共産や社民などが議席をとれないというだけでなく、国民新党のような保守政党や、たとえば野中氏のような“異端的”保守政治家もまた、議会の場を封殺される道筋をつくられてしまうのであろう。平成翼賛政治体制への序曲である。

 断っておくが、こうした談話が機関紙に掲載されたからといって、共産がどうのと褒め上げるつもりはない。ただ、生っ粋の保守政治家である野中広務氏がかくのごとく語らずにいられなかったという事実、そこに注目したいのである。
 野中氏の談話は、日本の近い将来に対する警告にほかならないと思う。



*補足:
 野中氏のつぎの指摘。
「日米間には現在、安保条約があるだけで、平和友好条約はないんです。やはり日米平和友好条約を結べる環境をつくらねば、日本はいつまでたっても米国と対等になれないと思います。」
 まさに然り。
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