ヘイケボタルの放逐をめぐって議論が起こっているという報道があった。
「東京新聞」6月19日朝刊で報じられたのは、北海道網走市内での放流計画についてである。なんでも、市内の農家を中心とするグループがヘイケボタルの幼虫1000匹を市内の卯原内川に放流する計画を立ててきたところ、地元の研究者らがその計画に“待った”をかけているという。“待った”の根拠は単純明解である。報道の言を引用すれば、
「ヘイケボタルは生息地ごとに遺伝子が異なっている可能性が高く、生態系を壊す可能性がある」
というものだ。
「東京新聞」6月19日朝刊で報じられたのは、北海道網走市内での放流計画についてである。なんでも、市内の農家を中心とするグループがヘイケボタルの幼虫1000匹を市内の卯原内川に放流する計画を立ててきたところ、地元の研究者らがその計画に“待った”をかけているという。“待った”の根拠は単純明解である。報道の言を引用すれば、
「ヘイケボタルは生息地ごとに遺伝子が異なっている可能性が高く、生態系を壊す可能性がある」
というものだ。
一方、放流をすすめる側の論理は、かつて当地でみられたヘイケボタルが現在はほとんどみかけることがないため、「ホタルが育つ環境を取り戻し、安心・安全な農業を子どもたちに引継ぎたい」(同記事)ということである。
件の記事には、放流予定の幼虫の産地が明らかにされていないが、研究者がストップを要請したということは、現地のヘイケボタルとは異なる系統の幼虫なのであろう。思い浮かぶのは「善意の攪乱」という言葉である。
シロウトの部外者がこんなことを書くのは申し訳ない感じもするが、放流を進めるグループはあまりに幼稚かつ短絡的だと思う。本当に自然のことを慮るのであれば、ヘイケボタルならなんでもいいということにはならないハズではないか。たしかに、ヘイケボタルについてはわかっていない部分もあるらしく、別の系統を放流、交雑することによる影響がどうなるかは明らかでないようだ。しかし、だからといって無闇に放流していいということにはなりますまい。ホタルではないけれども、イワナやヤマメなどの川魚には同じ種であっても生息域ごとに異なる系統がみられる。比較的狭い地域で引継がれてゆくことにより、違いが生じてくるのである。ホタルはどうなのだろうか。わかっていないからこそ、いまいちど慎重になってもいいのではないか?
気になるのは、このグループがホタルにさきがけて幼虫のエサになるというカワニナを放流していると記事に記されている点だ。カワニナがイコールでホタルのエサだと考えているとしたらなんともおめでたいものだが、当然のことながら、カワニナの放流によってすでにできあがっていた生態系のなんらかの部分が攪乱された可能性はある。また、調べてみたところ、ヘイケボタルの主食はカワニナではなくモノアラガイやヒラマキガイであるという。はたしてなんのために放流したつもりなのだろう?
環境だか“エコ”だか知らないが、こうした矢鱈な放流の類は、じつはここだけの問題ではない。ホタルに限っていえば、たとえばつぎのリンク記事を御覧いただきたい。
※「ホタルの養殖と放流についての諸問題」
リンク記事には、北海道に生息しないハズのゲンジボタルを自然に放ち「町おこし」とやらに役立てているという恐るべき指摘がなされている。ここでは「エコ」だのは謳われていないようだが、おそらくは生態系の攪乱のことなどなんら顧みることもなく、善意によって事業が展開しているのであろう。だが、やがてどんな負債に膨れ上がるかはわからないし、そうなってからでは責任ひとつとることができないのである。
ホタルだけでなく、魚もあちらこちらで利用されてきた。コイは比較的汚れた水に強い魚だが、都会の汚れ川や池にコイがいるといっては「水がキレイになった」とうれしがってみたり、「生き物を大切にしましょう」と子どもたちにヒメダカを放流させる“教育活動”などもいままでみてきた。いずれも善意に基づいているところが恐ろしい。あるいは釣りというごく限られたひとのための娯楽目的で養殖魚を放す。たとえば、東京都の多摩川上流域のヤマメは本来は赤みがかかった特徴を持つが、娯楽のために放される養殖魚はもちろん異なる。
あるいはまた、樹木を山に植えたり、野に花を咲かせる。そうした善意の事業に取組むさいに、はたしてどれだけ生態系のことが考えられているのであろうか。ホタルがいれば自然であり、魚が泳げば水がキレイになり、樹木が繁茂すれば豊かな自然が返ってきたということではないハズだ。どうしてもホタル遊びをしたいのであれば、巨大なドームでもつくって、そのなかの箱庭に放せばいい。どうせ「ホタルがキレイだ」「ああよかった」でおしまいなのだろうから。
さきのリンク記事はこう指摘する。
『このようなパフォーマンスに対して、「ホタルの養殖放流=環境保全=良い試み」のようなステレオタイプなマスコミ報道が目立つ。本当に自然環境に配慮した試みなのか?それとも見せかけなのかを吟味せず報道することは、間違った価値観を多くの人に植え付ける。』
本当の環境保護とはなんなのか? いまいちど考え直してみてもいいのではないか?
件の記事には、放流予定の幼虫の産地が明らかにされていないが、研究者がストップを要請したということは、現地のヘイケボタルとは異なる系統の幼虫なのであろう。思い浮かぶのは「善意の攪乱」という言葉である。
シロウトの部外者がこんなことを書くのは申し訳ない感じもするが、放流を進めるグループはあまりに幼稚かつ短絡的だと思う。本当に自然のことを慮るのであれば、ヘイケボタルならなんでもいいということにはならないハズではないか。たしかに、ヘイケボタルについてはわかっていない部分もあるらしく、別の系統を放流、交雑することによる影響がどうなるかは明らかでないようだ。しかし、だからといって無闇に放流していいということにはなりますまい。ホタルではないけれども、イワナやヤマメなどの川魚には同じ種であっても生息域ごとに異なる系統がみられる。比較的狭い地域で引継がれてゆくことにより、違いが生じてくるのである。ホタルはどうなのだろうか。わかっていないからこそ、いまいちど慎重になってもいいのではないか?
気になるのは、このグループがホタルにさきがけて幼虫のエサになるというカワニナを放流していると記事に記されている点だ。カワニナがイコールでホタルのエサだと考えているとしたらなんともおめでたいものだが、当然のことながら、カワニナの放流によってすでにできあがっていた生態系のなんらかの部分が攪乱された可能性はある。また、調べてみたところ、ヘイケボタルの主食はカワニナではなくモノアラガイやヒラマキガイであるという。はたしてなんのために放流したつもりなのだろう?
環境だか“エコ”だか知らないが、こうした矢鱈な放流の類は、じつはここだけの問題ではない。ホタルに限っていえば、たとえばつぎのリンク記事を御覧いただきたい。
※「ホタルの養殖と放流についての諸問題」
リンク記事には、北海道に生息しないハズのゲンジボタルを自然に放ち「町おこし」とやらに役立てているという恐るべき指摘がなされている。ここでは「エコ」だのは謳われていないようだが、おそらくは生態系の攪乱のことなどなんら顧みることもなく、善意によって事業が展開しているのであろう。だが、やがてどんな負債に膨れ上がるかはわからないし、そうなってからでは責任ひとつとることができないのである。
ホタルだけでなく、魚もあちらこちらで利用されてきた。コイは比較的汚れた水に強い魚だが、都会の汚れ川や池にコイがいるといっては「水がキレイになった」とうれしがってみたり、「生き物を大切にしましょう」と子どもたちにヒメダカを放流させる“教育活動”などもいままでみてきた。いずれも善意に基づいているところが恐ろしい。あるいは釣りというごく限られたひとのための娯楽目的で養殖魚を放す。たとえば、東京都の多摩川上流域のヤマメは本来は赤みがかかった特徴を持つが、娯楽のために放される養殖魚はもちろん異なる。
あるいはまた、樹木を山に植えたり、野に花を咲かせる。そうした善意の事業に取組むさいに、はたしてどれだけ生態系のことが考えられているのであろうか。ホタルがいれば自然であり、魚が泳げば水がキレイになり、樹木が繁茂すれば豊かな自然が返ってきたということではないハズだ。どうしてもホタル遊びをしたいのであれば、巨大なドームでもつくって、そのなかの箱庭に放せばいい。どうせ「ホタルがキレイだ」「ああよかった」でおしまいなのだろうから。
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『このようなパフォーマンスに対して、「ホタルの養殖放流=環境保全=良い試み」のようなステレオタイプなマスコミ報道が目立つ。本当に自然環境に配慮した試みなのか?それとも見せかけなのかを吟味せず報道することは、間違った価値観を多くの人に植え付ける。』
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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