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猫池罵詈雑言雑記帳
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 遅くなってしまったが、都議選結果について少々……。
 結果から先にいえば、自民敗退・民主大躍進であった。自民の10減に対して民主が20増。この数字だけみれば、これは大いなる変化があったといえる。都民有権者が抱えるある種の怒りが永年的第1党だった自民党を下野させたという点でだ。しかし、肝心の都政がこれによってどれだけの変化、言い換えれば、有権者が怒りとともに抱いていたハズの期待に反映されるかどうかについてはいささかの疑問があると考えている。

 最大の根拠は、都議会の民主党がこれまでも事実上の与党として機能してきたという点である。“ボス”役である石原のおとっつぁんが選挙結果(民意)について不快感を露にしているらしいが、なァに、心配するこたぁありませんよ。なにしろ、これまでだって石原都政に対しほぼ全面的な賛意を示してきたのが民主党なのである。その裏側はともかく、表向きの政治ということではじつはさほどの影響を受けないに違いない。なにしろ、とうのおとっつぁんだってこうおっしゃってるではないか(笑)。
「民主党はこれまで是々非々だった。その姿勢は本質的に変わらないと思う。議会対策で変わることはない」

 然り。たとえば、選挙にあたって「新東京石原銀行」に対して批判を浴びせてきた同党だったが、実際には推進する側にあったことについてはほおかむりを決め込んだままだ。口ではああいっているけれど、実際にどうなるかなんてわかりはしない。
 この銀行は、石原都政に対する批判のなかではもっとも目立つモノのひとつだが、そんな問題に対して民主党がまんまとシラを切り通せたのは、ようは有権者のうちのそれ相応の層が本質的な意味で政治に関心がないからであろう。そんなことを考えていたところ、タマタマ、山口一臣氏(『週刊朝日』編集長)がつぎのような一文をネットに掲載していた。

 知り合いが期日前投票に行ってたまたま見かけた光景だが、どの候補者が民主党の候補者なのかを聞いて投票している人がいたという。実は、その知り合い自身も「民主党の候補者に入れる」ことは決めていたが、民主党の候補者が誰なのか知らないまま投票所に足を運んだという。「誰に」ではなく、とにかく「民主に」という投票行動だ。
「都議選自民惨敗で政権交代へ!」

 かなり以前の話。友人の知人が結婚を申し込んだら、相手の父親が自分のむすめに対し「おまえはあの男の正体をわかっているのかっ!?」と怒鳴りつつ猛反対をしたという。男のほうは地元でちょっとは知られた“遊び人”。友人からして「なんであんな男にあんないいコが引っ掛かっちまうんだ」と憤っていたものだが、それを思い浮かべてしまうほどのなびきの構図である。もっとも、政党だのみに投票するという現象は民主党に限ったことではなく、むしろ自民党はもちろん、公明党、共産党などにこそありうる行動であろう(ただし、これらの場合は支持基盤があるがゆえであり、自民は別として無党派層がそうした行動に出ることはいまのところない)。しかし、各候補者が所属政党の一員として主義主張を展開しているほかの政党とは異なり、民主の場合は個別に候補者や議員を検分していかないことには、それがどういう思想信条の持ち主なのかがわからないところに問題がある。繰り返し記してきたように、信頼のおける議員も少なくはないが、その実態が自民主流となんら変わりがない議員や候補者だって多くを占めているのである。一例として、こんなニュースはどうか?

「日刊ベリタ:「不逞朝鮮人は出て行け」と叫ぶ都議会議員と同議員が所属する民主党への公開質問状」

「日刊ベリタ:インターネット上に流れている東京都議会議員吉田康一郎氏の発言を紹介  「在日特権」「不逞朝鮮人」といった言葉が並ぶ」

 もちろん、それがいかに歪められた歴史教育のたまものによるものだろうと、自らの主義主張をすることそのものは誤りではないし自由というものだ。だが、はたして民主党だからと票を投じた有権者はこうした候補者の正体を知っているのかと問いたい。中野区から立候補したこの現職議員はめでたく当選しているが、6月30日が回答期限とされた「日刊ベリタ」からの公開質問状に対する答が、議員と民主党双方からあったという報告はいまだなされていない(*注)。それが民主党なのである。

 たしかに、自創政権はそれを凌駕するだけの悪辣政権である。しかし、その代わりとして期待されている政党がこのありさまであり、かつ投票する側がそれをどこまで理解しているのかわからないというのは無気味このうえない。“そのまんま東”騒動でも批判を浴びている自民だが、宮崎県知事を担ぎ出そうということの要諦は、ようは知名度に頼って有権者をケムリに巻いてしまえばいいということであろう。では、今回の民主フィーバーともいえる大躍進にあたって、はたして有権者がケムリに巻かれていたということはなかったのだろうかと思う。

 それにしても。公明の“躍進”ぶりときたらどうか? 特定の新興宗教団体に支えられた同党(ホンネでは一心同体と断言したい)が、なぜここまでの議席を確保できたのか。その背景についての言及はとりあえず避けるが、少なくともいえることは、これでますます自民党は創価学会から離れられなくなったということである。はたして、生っ粋の支持者からどう思われているのかという疑問もわくが……。なんにせよ、自民38に対して公明23という数字こそは、自民党破滅への予鈴のような気がしてならない(民主の躍進など、それに比べれば微々たる影響だ)。
 共産の8(5減)については「考え直せ!」としかいいようがない。得票数については07年の参院選より増えたと公言している(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-14/2009071401_05_0.html)が、そんなものは口悪くいえば負け惜しみでしかない(前回の都議選と比較するとどうだったのか?)。候補者擁立の手段やマスコミ対策など、同党は根本から選挙対策を練り直す必要があろう。


*注:
 あるいは、なんらかも事情で編集部がネット上での公開を控えている可能性もあるが、おそらくは質問状そのものが無視されているに違いない。白川勝彦氏が、昨年春に民主党と共産党に電話で質問をしたさい、「弁護士の白川」を名乗ったところ「存じております」と即座にだれかれを理解した共産に対して、民主の対応はさんざんたらいまわし。“あんたタレ?”のごとしであったという。白川氏は衆議時代に自民党の中枢にいた人物である。政党本部がそれを理解していないなど、にわかには信じられないできごとであった。ささいなできごとかもしれないが、民主党の正体あるいは程度を現わすひとつの好例ではないだろうか。

 それにしても。「在日特権」云々を騒ぎだてたいのであれば、米軍こそを問題にすべきであろう。われわれの税金を(合法的に)湯水のように使って(日本政府を窓口に恵んでもらって)、重大犯罪すらきちんと裁かれない(合法的な)特権を持つ彼ら。不法滞在者による刑事事件が起こっていることは事実で、そうした滞在に対する施策をきちんとしなければならないとは思うが、合法的滞在者である米兵による犯罪だってけっして少なくはないではないか。さらにいえば、わが国における犯罪は、いうまでもなく日本国籍を持つふつうの日本人によるもののほうが圧倒的に多いということを忘れてはならない。
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