流行り言葉というものがある。ジャンルや方向性はさまざまだが、なんらかのヒットフレーズが生まれると、それがあたかも正しい言葉であるかごとく商品なりに盲従する現象は、大衆への訴えやすさという点ではすべてを否定しないものの、度が過ぎればヘキエキとしてきてしまう。
たとえば「●●のチカラ」。じつは後輩のひとりが本を上梓したところこのフレーズがタイトルに使われていたことがある。きちんとした面白い内容なだけに、そこだけが残念に思ったこともあるのだが、そのほかにも自分が関わった仕事にも、編集担当の手によって見出しなどでコレが使われたことが何度かある。お菓子や“健康食品”の類にもいくつかみられるが、最初に考え出したひとなり企業なりはともかく、ひとさまのアイデアにどうしてこう追従できるのかがどうにも不思議でならないのである(騒ぎ立てるほどのことでもないが)。
ほかにもある。たとえば、全国津々浦々のお役所が「まちづくり」などという意匠を乱発しはじめたのはいつごろからだったろうか。個人的には漢字の使用を少なめにする傾向があるし(コレもある種の流行りといえるかもしれないが)、「まち」と「つくる」をとってみても町・街・造・作・創……とさまざまに字や意味が含まれることから、より広く意味が捉えられるという点で「まちづくり」というのは悪くない表現だとは思うけれど、あまりに氾濫してくると、使っているひとはきちんとモノを考えたうえでのことなのだろうかとときおりクビをかしげたくなってくるというものだ。
……もっとも「チカラ」にせよ「まち」にせよ「つくり」にせよ、安易に新たな意匠としての外国語をでっちあげないぶんだけ使われ心地は悪くない。また、10年も使われ続ければ定着した言葉になることもあるだろう。そういう意味では政権公約を意味して使われるようになった「マニフェスト」などは、登場の仕方にせよ、意味のわかりづらさにせよ、定着へのプロセスにせよ、一連の流行り言葉のなかでも下衆の部類に入るのではないか? たとえばテレビニュースや新聞などに現われはじめた初期に、このカタカナ語だけをみてその意味がわかったひとはどれだけいるのだろう。なぜみただけで意味がわかる「政権公約」ではいけないのかと思うが、これが「マニフェスト(政権公約)」などと新聞などに記されているのをみると、字数が限られたなかでなんともったいないというものではある。だが、あらためて言うまでもなく、いまではそれなりに「マニフェスト」で通用することになったのをみるにつけ、「ウソも100回繰り返せば」というヒトラーの言葉を苦笑混じりに思い浮かべてしまいそうだ。
さて、その「マニフェスト」。陥落を目前とした自民党が「日本を守る、責任力」などという流行り言葉を総見出しに使っている。「チカラ」ならぬこの漢字による「力」もこのところの流行り言葉だが、国民の審判から逃げ続けた挙げ句に政権放り出し首相を連発した自民党がなにを「責任力」かと笑ってしまった。これでは現役の泥棒に「窃盗はいけません」などと諭させているがごとしではないか。愚かを通り越してなんとも虚しい見出しである。
しかし、「日本を守る、」という部分には自民党らしさが出ているかもしれない。有権者は、これが「国民を守る」あるいは「生活を守る」といった国民ひとりひとりを慮ったお題目でないところに注目すべきである。自民党が問題としているのは、あくまで国体としての「日本」である。「国」が残れば山河や国民が破壊されようが、極論すればどうだっていいと考えているのではないかとすら想像してしまう。
それを「守る、」ために自民党が「守」ろうとしている(きた)のは財界(おもに大企業)や自衛隊や米軍を含む軍事分野である。圧倒的多数を占める一般大衆に対しては、たとえばタケナカ平蔵大先生が宣うように、ごく一部の富裕層(コレも比較的最近になって目立つようになった言葉だ)が潤えば、そのおこぼれが(あたかもコップの水がこぼれるがごとく)大衆に落ちてゆき、「それなり」の生活ができるだろ、というわけだ。コイズミ“改革”とやらは、まさにそうした視点によって繰り広げられたが、その結果(まだ終わってはいないが)がどうなっているかはたいていのひとはわかっている。つまりは、まったく懲りていないのであろう。
各項目を開けば、たしかに「安心な国民生活」が謳われてはいるにせよ、その前提となっているのがそれでは、自民党のいう「国民」に含まれない日本国民がどれほどの層をなしているのだろうかと訝ざるをえない。わずかな期間にかくのごとく「国民生活」を破壊した政権とは、いったいどこのだれだったのか? バカも休み休み言えといったところではあるけれど、自分の腹が痛まないようなひとびとやある種マゾヒスト的でさえある無心的な支持者は別として、こんなシロモノに騙されるなど、よほどのおひとよしというものであろう。さしあたり脅迫を受けてのことでないぶん、「オレオレ詐欺」(なんどか記したとおり、詐欺ではなく脅迫事件が多々あると考えているが)に引っ掛かるよりも問題である。だが、おひとよしだろうとなんだろうと、そのワリを食わされるほうはたまったものではない。
そして消費税増税宣言。抜本的な部分での財源見直しをせずに(たとえば強硬に守られた道路財源問題はどうか)、かつここまで国民生活の足を引っ張ってきてなおそのクビを絞めたいというのである。
さらに改憲宣言。狙いはもちろん軍備増強である。なかにはあたかもゲームのごとく戦争をやってみたくて仕方のないようなバカもみられるが、本当の狙いはカネですからね。しかし、本音の部分では第1条も改定して、主権在民を破棄したがっているかもしれん。この部分では民主党主流も似たり寄ったりではあるが、あらためて宣言されたことにより、自民党の危険性がさらに浮き彫りになったわけである。
ところで、看板が態と懸け離れている例は少なくない。態云々をさておいても、たとえば共産党に対し「共産党という名前を変えたらどうか?」という話もあるけれど、それよりもなにも、そろそろ「自由民主党」という党名を変えてみたらどうか? だって、共産党はともかくとして、どこも「自由」で「民主」じゃないではないか(笑)。少なくとも一般大衆にとっては。財界の一部や宗主国たるアメリカ合州国にとっての「自由」は拡大傾向にあるが、そのクセ、党内での「自由」がアヤシければさらに「民主」的な運営がなされていないらしいことがかなり明かされてきた。北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国のどこをとると「民主主義」で「人民」の「共和国」なのかと思ってしまうが、われらが「自由民主党」もその点ではまったく同じ穴のムジナというわけだ(嘲)。この点では、たしかに民主党のほうがよほど看板と実態とが近しいわけで(少なくともいまのところは)、有権者はそうしたところを感じとっているのかもしれない。
*補足:
もっとも、「自由民主党」という看板は、別段「自由」と「民主」を意味するものではなく、単に「自由党」と「日本民主党」とが合体したがゆえの名残りにすぎない(55年体制時に財界からの指導によって合併した)。ようは、企業の合併などでそれぞれの元の企業名が併記されるようなものである。つまらん(どなたか、代わりのイイ看板をつくってあげてください)。
ほかにもある。たとえば、全国津々浦々のお役所が「まちづくり」などという意匠を乱発しはじめたのはいつごろからだったろうか。個人的には漢字の使用を少なめにする傾向があるし(コレもある種の流行りといえるかもしれないが)、「まち」と「つくる」をとってみても町・街・造・作・創……とさまざまに字や意味が含まれることから、より広く意味が捉えられるという点で「まちづくり」というのは悪くない表現だとは思うけれど、あまりに氾濫してくると、使っているひとはきちんとモノを考えたうえでのことなのだろうかとときおりクビをかしげたくなってくるというものだ。
……もっとも「チカラ」にせよ「まち」にせよ「つくり」にせよ、安易に新たな意匠としての外国語をでっちあげないぶんだけ使われ心地は悪くない。また、10年も使われ続ければ定着した言葉になることもあるだろう。そういう意味では政権公約を意味して使われるようになった「マニフェスト」などは、登場の仕方にせよ、意味のわかりづらさにせよ、定着へのプロセスにせよ、一連の流行り言葉のなかでも下衆の部類に入るのではないか? たとえばテレビニュースや新聞などに現われはじめた初期に、このカタカナ語だけをみてその意味がわかったひとはどれだけいるのだろう。なぜみただけで意味がわかる「政権公約」ではいけないのかと思うが、これが「マニフェスト(政権公約)」などと新聞などに記されているのをみると、字数が限られたなかでなんともったいないというものではある。だが、あらためて言うまでもなく、いまではそれなりに「マニフェスト」で通用することになったのをみるにつけ、「ウソも100回繰り返せば」というヒトラーの言葉を苦笑混じりに思い浮かべてしまいそうだ。
さて、その「マニフェスト」。陥落を目前とした自民党が「日本を守る、責任力」などという流行り言葉を総見出しに使っている。「チカラ」ならぬこの漢字による「力」もこのところの流行り言葉だが、国民の審判から逃げ続けた挙げ句に政権放り出し首相を連発した自民党がなにを「責任力」かと笑ってしまった。これでは現役の泥棒に「窃盗はいけません」などと諭させているがごとしではないか。愚かを通り越してなんとも虚しい見出しである。
しかし、「日本を守る、」という部分には自民党らしさが出ているかもしれない。有権者は、これが「国民を守る」あるいは「生活を守る」といった国民ひとりひとりを慮ったお題目でないところに注目すべきである。自民党が問題としているのは、あくまで国体としての「日本」である。「国」が残れば山河や国民が破壊されようが、極論すればどうだっていいと考えているのではないかとすら想像してしまう。
それを「守る、」ために自民党が「守」ろうとしている(きた)のは財界(おもに大企業)や自衛隊や米軍を含む軍事分野である。圧倒的多数を占める一般大衆に対しては、たとえばタケナカ平蔵大先生が宣うように、ごく一部の富裕層(コレも比較的最近になって目立つようになった言葉だ)が潤えば、そのおこぼれが(あたかもコップの水がこぼれるがごとく)大衆に落ちてゆき、「それなり」の生活ができるだろ、というわけだ。コイズミ“改革”とやらは、まさにそうした視点によって繰り広げられたが、その結果(まだ終わってはいないが)がどうなっているかはたいていのひとはわかっている。つまりは、まったく懲りていないのであろう。
各項目を開けば、たしかに「安心な国民生活」が謳われてはいるにせよ、その前提となっているのがそれでは、自民党のいう「国民」に含まれない日本国民がどれほどの層をなしているのだろうかと訝ざるをえない。わずかな期間にかくのごとく「国民生活」を破壊した政権とは、いったいどこのだれだったのか? バカも休み休み言えといったところではあるけれど、自分の腹が痛まないようなひとびとやある種マゾヒスト的でさえある無心的な支持者は別として、こんなシロモノに騙されるなど、よほどのおひとよしというものであろう。さしあたり脅迫を受けてのことでないぶん、「オレオレ詐欺」(なんどか記したとおり、詐欺ではなく脅迫事件が多々あると考えているが)に引っ掛かるよりも問題である。だが、おひとよしだろうとなんだろうと、そのワリを食わされるほうはたまったものではない。
そして消費税増税宣言。抜本的な部分での財源見直しをせずに(たとえば強硬に守られた道路財源問題はどうか)、かつここまで国民生活の足を引っ張ってきてなおそのクビを絞めたいというのである。
さらに改憲宣言。狙いはもちろん軍備増強である。なかにはあたかもゲームのごとく戦争をやってみたくて仕方のないようなバカもみられるが、本当の狙いはカネですからね。しかし、本音の部分では第1条も改定して、主権在民を破棄したがっているかもしれん。この部分では民主党主流も似たり寄ったりではあるが、あらためて宣言されたことにより、自民党の危険性がさらに浮き彫りになったわけである。
ところで、看板が態と懸け離れている例は少なくない。態云々をさておいても、たとえば共産党に対し「共産党という名前を変えたらどうか?」という話もあるけれど、それよりもなにも、そろそろ「自由民主党」という党名を変えてみたらどうか? だって、共産党はともかくとして、どこも「自由」で「民主」じゃないではないか(笑)。少なくとも一般大衆にとっては。財界の一部や宗主国たるアメリカ合州国にとっての「自由」は拡大傾向にあるが、そのクセ、党内での「自由」がアヤシければさらに「民主」的な運営がなされていないらしいことがかなり明かされてきた。北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国のどこをとると「民主主義」で「人民」の「共和国」なのかと思ってしまうが、われらが「自由民主党」もその点ではまったく同じ穴のムジナというわけだ(嘲)。この点では、たしかに民主党のほうがよほど看板と実態とが近しいわけで(少なくともいまのところは)、有権者はそうしたところを感じとっているのかもしれない。
*補足:
もっとも、「自由民主党」という看板は、別段「自由」と「民主」を意味するものではなく、単に「自由党」と「日本民主党」とが合体したがゆえの名残りにすぎない(55年体制時に財界からの指導によって合併した)。ようは、企業の合併などでそれぞれの元の企業名が併記されるようなものである。つまらん(どなたか、代わりのイイ看板をつくってあげてください)。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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