沖縄知事選と那覇市長選の結果は、きわめて興味深いものであった。最大の争点は米軍基地の移設問題だったといわれるなか、前知事・仲井真弘多氏流の「いい正月」よりも、野古沖埋め立て承認の取り消し、撤回を表明している新知事・翁長雄志氏の訴えが有権者の支持を集めたということなのであろう。
選挙戦のさなか、マスメディアの配信記事に翁長氏が元は自民党だったことや陣営にも元自民党員らが参加していることなどに触れるさい「自民党を除名された」という言い回しを使ったものもみられた。これなどは「除名」という言葉が持つマイナスイメージを用いたプロパガンダにほかならないと思うのだが、日本共産党が支持していることを挙げ「アカ」だのといった宣伝や有名な反動ジャーナリストの発言をみるにつけ、「こいつらには正論、政策といったものがないのか?」と気の毒にすらなったものだ。
一夜を明けて、ネット上の記事をチェックしてみたのだが、沖縄の話題が意外なほど少ないことに気がついた。国の方針に真っ向から対立する結果を生んだ画期的な事件である。にも拘わらず、すくなくとも巨大ポータル上には芸能ゴシップほどの点数もみられないのはどうしたことだろうか。
そんななか、こんな見出しの記事が目にとまった。
>沖縄知事に翁長氏 「普天間固定化するのでは」地元住民から懸念の声- 産経ニュース(2014年11月17日07時59分)
内容は簡単。両論併記をしながら、選挙結果について批判ないし疑問を呈しているだけである。
記事中に用いられた市民の声を引用してみよう。
>「翁長さんは基地はいらないと言うが、中国が尖閣諸島(同県石垣市)に近づいている今、沖縄は誰に守られているのか」と嘆いた。
>「米軍に関係する仕事をしている人も多い。沖縄と米軍は切っても切れない関係」と話した。
>普天間飛行場のある宜野湾市では、移設に道筋をつけた仲井真氏の落選に落胆の声も。(中略)「政府との間に亀裂が入れば、普天間は再び固定化してしまうのでは」。
>16年に大型輸送ヘリが墜落した同市の沖縄国際大の近くに住む女性会社員(25)も「基地が残り、あんな事故がまた起きたらと思うと怖い」と吐露した。(以上4点、見出し記事から引用)
これらは、いずれも事実であろう。10万弱の票差をつけて新知事が誕生したとはいえ、前知事を支持した層も相当数にのぼる(ただ、この記事では前知事の寝返りやそれに対する市民らの声には触れられていない)。
ちょっとだけイチャモンをつけてみよう。
・1(上から):中華人民共和国を仮想敵とし、さらに沖縄と駐留米軍との問題への矮小化(中国側からの挑発とも思える行為には大いに問題はあるといちおうつけくわえておくが、アメリカ合州国が中国と軍事的衝突をしたがっているかどうかについても検証しなければ?)。とはいえ、新知事はただちに米軍に撤収を迫っているのかな?
・2:じつはこのなかでもっとも納得できたコメント。これには仕事以外に「軍用地」関連収入なども含まれるのであろう。どことなく「原発関連収入に頼っているひとも多いのだから」という論を思い浮かべるが、では、仲井真氏の政策どおりに移設したらしたで現基地周辺のそういうひとびとはどうなってしまうのだろう? これも同上。
・3:普天間が固定化というけれど、新知事はそんなことを政策にしているのですか? 仮にこれが「日本政府やアメリカ合州国によって固定化される(ないし新知事がつぶされる)」という懸念なのであれば、問題とする相手が違うのではありませんか?
・4: 同上。しかし、産経新聞社は、どういう狙いでこの4つめのコメントを引用したのだろう? これでは沖縄(大局的にはわが国全体)に米軍基地があるのが危険だという話になってしまい、同社の基本的な主張とは隔たってしまうというか、まるで「しんぶん赤旗」の記事を読んでいるようなのだけど(笑)。が、それならそれで結構な話ではありますね。
断っておくが、これらは取材に応じた市民とその声をあげつらうものではありません。新聞社によるコメントの用い方の稚拙さを指摘しているだけである。
なんにつけても「批判」ないし「批判精神」を持つことは大切である。したがって、今回の選挙結果を受けてその批判的な検証をすることそのものはきわめて正しいと考える。だが引用記事のレベルではお粗末。いくら結果が悔しいからって、なんともいじましいとしかいいようがない。同社をしのぐ「御用新聞社」であるヨミウリのほうも検分してみたいところだけど、あいにくそこまでのヒマはない。
ちょっと余談。
近ごろ、中国のバカどもによるサンゴの密漁がクローズアップされている(沖縄選以上に?)。しかし、米軍基地移設先として取りざたされている辺野古のサンゴ(辺野古だけではなくサンゴだけでもないが)はどうなってもいいのかな? まったくの違法による中国人のインディーズ(?)密漁団と、ゴリ押しで合法化された米軍と日本政府によるオフィシャルな自然破壊。なんだか暴力団と巨大企業との横暴合戦のようだけれど、ともに悪質であることには違いないのではないかと思うのだが。
余談その2。
今日、17日になって円安が進んでいるという報道があった。そのうちのひとつがつぎの見出しである。
>GDPが予想外のマイナス、株安・債券高・円安が進行=東京市場- ロイター(2014年11月17日09時48分)
これには、「日本の7─9月期国内総生産(GDP)が年率1.6%減(市場予想は2.1%増)と予想外のマイナス成長」(見出し記事)を示したことの影響が分析されているようだが、ユニークなのは引用記事にある「予想外」である。ホントなんですかね、これ? しかし、日本政府や財界、それらの提灯持ちにとっては円安進行は歓迎されるできごとのハズなのに、「マイナス成長」を材料として取りざたしている。ということは、わが国がマイナス成長する(=円安)ことは歓迎されるということなのかなぁ……。
さらにケッサクなのは、引用記事の締めくくりだ。いわく、
>消費再増税延期・衆院解散は決定的だろうと述べている。
である。「述べている」のは某証券会社所属の専門家らしいのだが、なぜかすぐ前段コメントを「」閉じにしつつここにはそれがない。それともこの部分だけは「述べている」のが違う人物なのかな? 述べられている内容を含め、オレの足らないアタマでは理解しがたいので、これ以上の言及は避けるが。
そういえば、消費税再増税に関するケッサクな御用報道を目にしたのを思い出したので、その話はあらためて。
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