テレビや新聞などではすっかり影を潜めたかにみえる高利貸しは、インターネット上での露出も一時は減少傾向にあったようにみているが、それがこのところ目にさせられない日がないほどに“復権”しているのである。
いわく「銀行系だから安心」だのというまったくもって意味不明の広告や、「ひと月いくら借りていくらの利息」など、あたかも「低金利」であるかのように装った広告も、全盛期(?)同様に跋扈している。なかには、いきなり「融資条件」を記した細かい文字の羅列をみせている下世話なバナー広告もあって苦笑させられるが、あんなものは利用するつもりがこれっぽちもない相手にみせてみてなんの意味があるのかと思うし(それにも増して不愉快だ)、GIF動画であっとい間に別画面になってしまうようなシロモノで細々とした「条件」をみせられても、いったいなにがいいたいのかクビをかしげさせられるばかりだ。そうしたなかで“なんとなくリスペクト”しているタレントが広告塔になっていたりして、なんとも残念な気分になってしまうけれど、仕事を選べない若手ならともかく、大ベテランがああいうのに出ているということは、それほどのタレントでも仕事を選ぶことがままならないのか、あるいは高利貸しそのものを是認しているということなのであろう。もし後者だとすればファンのひとりとしては失望するばかりだが。
高利貸し──いわゆる「消費者金融」だが、言い換えれば「合法高利貸」──についての個人的な考えはすでになんどか記してきたが、いまいちど述べるならば、やはりもっとも卑下すべき商売のひとつであろうということである。
広義の「サラ金」という意味では、じつはオレ自身も利用したことがないわけではない。といっても社会人になりたてのころだが、タマタマ週末の現金が乏しくなったときに某社のクレジットカードを使って1〜2万円ほどのカネを用立てたのだ。そのときは仕事が立て込んでいて日中にATMに行く時間がなかったのと、べらぼうな時間外手数料と比べて、そのていどの額を1回で返済するのであれば、むしろ金利のほうが安いと判断したからなのである。もちろん銀行口座にそれ相応のカネはあるわけだし、サラリーマン時代だからその日になれば月給の振り込みがあった。したがってそういうレベルであれば、その存在価値をアタマから否定するつもりはない。
だがやはり問題なのである。そのときのオレが小額のカネを用立てるために使ったカードは、もちろん金貸専用ではない。クレジットカードそのものはいまなお利用しているが、そのすべてが買い物(商品購入のほか旅費にも。月遅れで清算される受け仕事の経費などは、クライアントに提出する領収書のほかにクレジットのスリップが手元に残るなど管理がしやすく、むしろ便利だからだ)のためであり、サラリーマン時代の2〜3回以外には現金用立てのために使ったことは一切ないし今後も使うつもりはない(海外旅行における異常時などには「備え」の範疇で利用する可能性があるがこれは別問題)。
しかし、使う使わないは別として、現金用立てにしろ買い物にしろ、きちんと清算することのできる社会人であれば、なにもわざわざ金貸専用のカードを持たなくても通常のクレジットカードの1枚ぐらい持っているのが常識に近いのではないか? いうまでもなくとくに欧米などではクレジットカードの所持が社会的信用の名刺がわりにされている面もあるし、主義として持たないひとは別として、持てないあるいは持っていても使えないということがあるとすれば、すでに経済的な信用という点で「問題あり」と金融業界から判定されているとみることができるかもしれない。つまり、「サラ金」を利用するというのは、そうした「問題あり」と判定されながらもその隙間に滑り込むか、あるいは通常のクレジットカードに計上させられないなんらかの事情があるということなのではないのだろうかと思うのだ。
「なんらかの事情」というのは、たとえば送られてくるクレジット利用明細を「女房にみられると都合が悪い」だのといったこともありそうだが、問題は前者のほうで、もし通常のクレジットカードを利用すらできないがゆえに「サラ金」に頼らざるをえないというのであれば、すでにその段階できたるべき破綻の緒にあるともいえよう。言い換えれば、そうした「不利」なひとびとの利用を当て込んだのが合法・非合法を問わず高利貸という商売であり、もっといえばこれほど「ひとの弱味につけ込んだ商売」もないともいえそうだ。それを「銀行系だから安心」だ? ならば国際的に通用するクレジットカードのほうがよほど「安心」ではないか。それに、いざ債務不履行が発生したら、はたして取り立て業務にあたるのは「銀行系」のどのような連中なのか。それとも「銀行系」だから1回ぐらいの遅延は笑って済ませてくれるとでもいうのかな?
そうしたカネ貸しは「あんたたちにはわからないほどカネに切羽詰まった人たちが、世間にはいっぱいいるということ」(日名子暁「正しい金融広告の読み方」。別冊宝島216『ヘンな広告』に所収)とウソぶくのだろうが、それは同時に「サラ金」(出典上では「街金」だが)に頼らざるをえないという顧客の状態を理解したうえで商売をしていることを問わず語りにしている。「銀行系」だのと謳っている業者は、日名子氏のルポに登場しているような闇金とは異なり利用にあたっての審査もそれ相応に実行しているのであろう(*注1)。だが、繰り返すように、すでにクレジットカードのふるいから漏れた顧客をも見込んでいる可能性があり、それはすなわち借金をしない、あるいはさせないほうが無難なひとびとに対しカネ貸しという商売をしているということにもなってしまう。そういう意味では破綻の第一歩を彼らが後押ししているのだという解釈もできるのではないか。
念のためつけ加えておけば、高利貸しだろうとクレジットカードだろうと当座の小ガネを借りるという点では本質的には一緒で、宣伝文句ではないが限度を自分で管理できているのであれば、使うも使わないも本人の自由というものだ(*注2)。しかし、貸す側の広告をみていると、そのターゲットという点を含め、危険性(イヤラシさと言ってもいいかもしれない)を感じざるをえないのである。
*注1:
いまひとつ指摘しておきたいのは、名実ともに“サラ金”としてある種ドロをかぶることを承知で商売をしてきた業者らにとっての重要な金主が銀行であったことを忘れてはならない。結果、その看板を含め、手を汚してきた業者からまんまとオイシイところをせしめたばかりでなく、自分たちの「社会的信用」を悪用して「サラ金」業にいそしむ銀行とはいったいなにものなのか? 虫酸が走るとかそういう連中を指すのではあるまいか。あえていえば、“街金”に代表される“悪徳金融”の類にはある種「人生のコク」のようなモノを感じないでもないが、「銀行系」だのとウソぶく連中からはスッカスカで卑しい悪臭しか感じられないというものだ。
*注:
とはいえ、たとえばクレジットカードに買い物とは別枠で200万円ていどの「利用限度額」が設定されていたとして、満額かそれに近い額をおよそ18%もの金利(まぁ、近ごろは12%前後かそれ以下の「低金利」を謳い文句にしている商品もあるが)で分割返済にしたら、いったいどれだけの金利を払うことになるのかをきちんと検分すべきである。たとえば年収500万前後の勤労者が、それだけだとしても問題なく返済できるものなのだろうか? 実際問題として、たとえ大きめの限度額が設定されていたとしても、そこまで借りる例がそうそうあるとは思えない(いや、あるからこそ問題にもなるのかな?)が、貸す側としてもなんら事故もなく返済できると本気で考えているのだろうか。年収の半分がどうのと法制化される動きもあるが、年収の半分と合わせて18%もの金利を、たとえば1年以上もかけて払うことの不利な実態について、社会的にもっと知らしめる必要があろう。
いわく「銀行系だから安心」だのというまったくもって意味不明の広告や、「ひと月いくら借りていくらの利息」など、あたかも「低金利」であるかのように装った広告も、全盛期(?)同様に跋扈している。なかには、いきなり「融資条件」を記した細かい文字の羅列をみせている下世話なバナー広告もあって苦笑させられるが、あんなものは利用するつもりがこれっぽちもない相手にみせてみてなんの意味があるのかと思うし(それにも増して不愉快だ)、GIF動画であっとい間に別画面になってしまうようなシロモノで細々とした「条件」をみせられても、いったいなにがいいたいのかクビをかしげさせられるばかりだ。そうしたなかで“なんとなくリスペクト”しているタレントが広告塔になっていたりして、なんとも残念な気分になってしまうけれど、仕事を選べない若手ならともかく、大ベテランがああいうのに出ているということは、それほどのタレントでも仕事を選ぶことがままならないのか、あるいは高利貸しそのものを是認しているということなのであろう。もし後者だとすればファンのひとりとしては失望するばかりだが。
高利貸し──いわゆる「消費者金融」だが、言い換えれば「合法高利貸」──についての個人的な考えはすでになんどか記してきたが、いまいちど述べるならば、やはりもっとも卑下すべき商売のひとつであろうということである。
広義の「サラ金」という意味では、じつはオレ自身も利用したことがないわけではない。といっても社会人になりたてのころだが、タマタマ週末の現金が乏しくなったときに某社のクレジットカードを使って1〜2万円ほどのカネを用立てたのだ。そのときは仕事が立て込んでいて日中にATMに行く時間がなかったのと、べらぼうな時間外手数料と比べて、そのていどの額を1回で返済するのであれば、むしろ金利のほうが安いと判断したからなのである。もちろん銀行口座にそれ相応のカネはあるわけだし、サラリーマン時代だからその日になれば月給の振り込みがあった。したがってそういうレベルであれば、その存在価値をアタマから否定するつもりはない。
だがやはり問題なのである。そのときのオレが小額のカネを用立てるために使ったカードは、もちろん金貸専用ではない。クレジットカードそのものはいまなお利用しているが、そのすべてが買い物(商品購入のほか旅費にも。月遅れで清算される受け仕事の経費などは、クライアントに提出する領収書のほかにクレジットのスリップが手元に残るなど管理がしやすく、むしろ便利だからだ)のためであり、サラリーマン時代の2〜3回以外には現金用立てのために使ったことは一切ないし今後も使うつもりはない(海外旅行における異常時などには「備え」の範疇で利用する可能性があるがこれは別問題)。
しかし、使う使わないは別として、現金用立てにしろ買い物にしろ、きちんと清算することのできる社会人であれば、なにもわざわざ金貸専用のカードを持たなくても通常のクレジットカードの1枚ぐらい持っているのが常識に近いのではないか? いうまでもなくとくに欧米などではクレジットカードの所持が社会的信用の名刺がわりにされている面もあるし、主義として持たないひとは別として、持てないあるいは持っていても使えないということがあるとすれば、すでに経済的な信用という点で「問題あり」と金融業界から判定されているとみることができるかもしれない。つまり、「サラ金」を利用するというのは、そうした「問題あり」と判定されながらもその隙間に滑り込むか、あるいは通常のクレジットカードに計上させられないなんらかの事情があるということなのではないのだろうかと思うのだ。
「なんらかの事情」というのは、たとえば送られてくるクレジット利用明細を「女房にみられると都合が悪い」だのといったこともありそうだが、問題は前者のほうで、もし通常のクレジットカードを利用すらできないがゆえに「サラ金」に頼らざるをえないというのであれば、すでにその段階できたるべき破綻の緒にあるともいえよう。言い換えれば、そうした「不利」なひとびとの利用を当て込んだのが合法・非合法を問わず高利貸という商売であり、もっといえばこれほど「ひとの弱味につけ込んだ商売」もないともいえそうだ。それを「銀行系だから安心」だ? ならば国際的に通用するクレジットカードのほうがよほど「安心」ではないか。それに、いざ債務不履行が発生したら、はたして取り立て業務にあたるのは「銀行系」のどのような連中なのか。それとも「銀行系」だから1回ぐらいの遅延は笑って済ませてくれるとでもいうのかな?
そうしたカネ貸しは「あんたたちにはわからないほどカネに切羽詰まった人たちが、世間にはいっぱいいるということ」(日名子暁「正しい金融広告の読み方」。別冊宝島216『ヘンな広告』に所収)とウソぶくのだろうが、それは同時に「サラ金」(出典上では「街金」だが)に頼らざるをえないという顧客の状態を理解したうえで商売をしていることを問わず語りにしている。「銀行系」だのと謳っている業者は、日名子氏のルポに登場しているような闇金とは異なり利用にあたっての審査もそれ相応に実行しているのであろう(*注1)。だが、繰り返すように、すでにクレジットカードのふるいから漏れた顧客をも見込んでいる可能性があり、それはすなわち借金をしない、あるいはさせないほうが無難なひとびとに対しカネ貸しという商売をしているということにもなってしまう。そういう意味では破綻の第一歩を彼らが後押ししているのだという解釈もできるのではないか。
念のためつけ加えておけば、高利貸しだろうとクレジットカードだろうと当座の小ガネを借りるという点では本質的には一緒で、宣伝文句ではないが限度を自分で管理できているのであれば、使うも使わないも本人の自由というものだ(*注2)。しかし、貸す側の広告をみていると、そのターゲットという点を含め、危険性(イヤラシさと言ってもいいかもしれない)を感じざるをえないのである。
*注1:
いまひとつ指摘しておきたいのは、名実ともに“サラ金”としてある種ドロをかぶることを承知で商売をしてきた業者らにとっての重要な金主が銀行であったことを忘れてはならない。結果、その看板を含め、手を汚してきた業者からまんまとオイシイところをせしめたばかりでなく、自分たちの「社会的信用」を悪用して「サラ金」業にいそしむ銀行とはいったいなにものなのか? 虫酸が走るとかそういう連中を指すのではあるまいか。あえていえば、“街金”に代表される“悪徳金融”の類にはある種「人生のコク」のようなモノを感じないでもないが、「銀行系」だのとウソぶく連中からはスッカスカで卑しい悪臭しか感じられないというものだ。
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とはいえ、たとえばクレジットカードに買い物とは別枠で200万円ていどの「利用限度額」が設定されていたとして、満額かそれに近い額をおよそ18%もの金利(まぁ、近ごろは12%前後かそれ以下の「低金利」を謳い文句にしている商品もあるが)で分割返済にしたら、いったいどれだけの金利を払うことになるのかをきちんと検分すべきである。たとえば年収500万前後の勤労者が、それだけだとしても問題なく返済できるものなのだろうか? 実際問題として、たとえ大きめの限度額が設定されていたとしても、そこまで借りる例がそうそうあるとは思えない(いや、あるからこそ問題にもなるのかな?)が、貸す側としてもなんら事故もなく返済できると本気で考えているのだろうか。年収の半分がどうのと法制化される動きもあるが、年収の半分と合わせて18%もの金利を、たとえば1年以上もかけて払うことの不利な実態について、社会的にもっと知らしめる必要があろう。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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