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猫池罵詈雑言雑記帳
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 またぞろバカ騒ぎがたけなわである。相次ぐ芸能人がらみの薬物事件。たとえば、今日(8日)づけ「東京新聞」の「こちら特報部」にはあの“勝新”事件をはじめとする芸能人による薬物事件が一覧化されていて興味を惹いたが、いうまでもなく芸能界だから薬物が氾濫しているということではなく、こんなものはあくまで氷山の一角として社会のなかに幅広く蔓延していると捉えるべきであろう(東京新聞の報道にはこの視点があった)。

 個人的には、かねてからわが国の薬物犯罪に対する法的な甘さが不思議でならなかった。中国など一部の国でみられるような「薬物犯罪=死刑」のような極厳罰はとにかくとしても、執行猶予を含めてみられる寛大な前例は、はたしてどうしたものなのかという気がしてこないだろうか(*注)。わかってはいながらも興味本位でちょっと手を出してしまったていどの類であればまだしも、販売者に対してすら激甘ともいえる実態は、国際的にみてわが国が薬物天国になりうるだけの土壌をつくっているという見方も可能なハズだ。
 幸か不幸か、自分自身はそうした薬物に触れた経験がないが、さまざまな報告を目にしてゆくと、厳罰化したからといって問題そのものが解決するわけではなく、理想を言えば、罰によらなくとも、違法あるいは脱法的薬物の使用がいけないものなのだという常識をきちんと醸成すべきであろう。だが、今般のマスコミの騒ぎをみるにつけ、そんな社会はけっしてつくられないのだろうなとまで思ってしまった。

 たとえば、7日放映の19時のNHKニュース。トップで取り上げられたのは芸能人による薬物犯罪とそれに関連して起きた容疑者の失踪であった。街角インタビューや容疑者のアイドル時代の映像などを挿みながら念入りに報じていたが、そこにあるのはスポーツ紙などのエンタテイメントよろしい芸能ネタの範疇を出ておらず、薬物蔓延という社会的視点がもののみごとに欠落していたのである。しかも(きちんと時間は測らなかったけれど)少なくとも冒頭の5〜8分ほどはこの話題が占拠しており、みていて「いい加減にしたらどうだ!?」との罵声すら浴びせたくなってしまった(民放はもっと派手であるが)。

 もちろん、これがエンタテイメントニュースの類ならば文句を言う性格のものでもないだろうけれど、こう言ってはなんだが、「保守の砦」たる大NHKのそれも午後7時のニュースである。そのなかで、これが容疑者失踪だけではなく社会的影響が小さくない人物らによる薬物犯罪(疑いを含む)という点でそれ相応に報じる必要はある。だが、その報じる姿勢が単なるショウと化しているところにマスコミの愚かしさがあるのだ。こんなことはいまにはじまったことではないし、つい最近の事例をみても裁判員裁判に関するNHKの報道はまったくもってショウとしか思えなかった。あるいは北朝鮮によるミサイルだか人工衛星だかの打ち上げのさいもショウ的な演出を施していると感じたひとも多いに違いない。
 昨夜は(薬物事件ではなく)元人気アイドル失踪ショウのあとに、きたる総選挙に向けての各政党のコメントがほんの少しずつ流されていたが、少なくとも19時のNHKニュースがとるべき編集方針として、はたしてこれでいいのだろうかと呆れ返らざるをえなかったのである。あらためて宣言すると、あんなモノばかり報道番組としてをみていたら、人間バカになります。

 さらにつけくわえると、容疑者のひとりは街角での職務質問から薬物の所持が発覚、逮捕につながったというが、無辜の市民ひとりひとりを犯罪予備軍的に扱ってやまない一部警察署の実態については、弁護士にして元国家公安委員長の白川勝彦氏(リスペクト!)がたびたび報告している(以前にも紹介しているが、あらためてリンクしておきたい)。

「忍び寄る警察国家の影」ほか、トップページ左下の検索画面を使うとサイト内の関連記事がヒットします。

 NHKにしろなににしろ、この視点がまったくもって欠けているところに注意を払うべきであろう。たしかに職務質問の類によって犯罪が未然に防げることもあろうし、そのすべてが無用とまでは言わない。しかし、ある報道(NHKだと記憶しているが民放だったかもしれない)では、「大きなカバンを持っていてラフな格好をしている通行人に対しては積極的に職務質問をしている」といった旨の差別的発言がなされていた。実際のところは警察官の胸先三寸といったところなのであろうが、少なくとも背広にネクタイといったいでたちで小ぶりなビジネスバッグを携えて街を歩くことがないオレにとってはいささかの恐怖である(笑)。もちろんやましいことなどあろうハズもないが、だからこそ権力から一方的に、具体的な根拠も示されずに疑われるのが間尺に合おうハズもない。したがって、仮に職務質問への協力を求められた場合、具体的理由が示されなければ断固拒否することをシミュレーションしている。場合によっては……白川先生、よろしくお願いします……というのは半分冗談だけれど、理由もなく自分が権力に疑われる可能性を市民のひとりひとりが自覚すべきであり、ジャーナリズムとしてはそうした事実をきちんと伝えなければならないだろう。残念ながら、職務質問の“功”をさりげに強調する一方で、大半のマスメディアにはそうした市民の側からの視点がないところに、この国の暗澹たる将来をみるようである。


*注:
 話はやや飛躍するが、たとえば児童ポルノがらみの罰則の広範化は、それそのものについては反対する内容でないにせよ、いついかなるときに拡大解釈をされて表現の自由が侵される可能性がある以上は、より慎重な議論が必要だと考えている。これを急ぐのは、ひとつにはアメリカ合州国をはじめとする諸外国からの圧力が背景のひとつとしてあるが、その点でみてゆくと、薬物犯罪もまた、とりわけアメリカを中心にして強硬な取締りを主張してきたハズであり、どうしてこうも扱いが異なるのかという疑問もわいてくる。両者は性質の異なる事例ではあるにせよ、たとえば宮沢りえさんのヌード写真が一般に流通していることと、違法薬物が表裏社会に蔓延していることとのどちらが、社会にとってより深刻かという思うのである。この比較はやや筋違いかもしれないが、国が薬物犯罪に対して厳罰化を深化させない一方である種の表現に対しての規制強化を進めるのかということを考えてゆくと、そこに表の顔とは異なるなんらかの理由があると訝りたくなってくるのである。

*オマケ:
 夏の全国高校野球大会がはじまった。で、選手宣誓をクルマのラジオで耳にした。いわく「感動を与えたい」云々。バカもの! 10年早いよ坊や! あくまで自分自身らのために全力を尽くして野球に取組んできたのではなかったのか? そんな他人の感動などに頓着して競技をするな! プロスポーツにそうした視点があることは否定しないけれど……、これも「感動をもらった」だのという愚かしい言葉が流布されているうちに身についてしまった恥じるべき日本語なのであろう。やや大袈裟にいえば文化破壊である。
 観戦者が試合なりをみて感動するのは勝手であり、あくまで自発的なものである。選手がわっざわざ「どうぞ」と「与えてくださる」ような性質のものではないのだ。こんな悲しい勘違いを指導者なりがきちんと正してくれればいいのだが……。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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