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猫池罵詈雑言雑記帳
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 2月25日、学校教育法関連の改定案と教員免許法改定にからむ骨子案が、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会教育制度・初等中等教育分科会によって大筋了承された。さきに成立した教育基本法改定を受けての法整備の一環だが、“核”ともいわれる地方教育行政法については国家による関与があからさまに案に盛り込まれていることなどから反発も多く、いまのところは持ち越された状態のまま推移しているといわれる。これは、教育委員会に対する指示権や教育長の任命に国が直接的に関与するという点が問題のひとつとさえているわけだが、教育現場の末端にいたるまで影響を及ぼすことは今後にかけて大いに予想されることであり、動向について監視の目を強める必要があるだろう。
 ところで、この「学校教育法」関連の骨子案をみて仰天したというか、じつは笑ってしまったのだけれど、みなさんはどのように思われただろうか。
 せっかくなので以下に一部を引用してみよう。



『義務教育の目標に(1)自主、自律、協同の精神、規範意識、公正な判断力、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画する態度(2)生命、自然を尊重する精神、環境の保全に寄与する態度(3)わが国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と郷土を愛する態度、国際理解、国際協調の精神──などを養うことを新設。』(「東京新聞」2月26日朝刊)

 これをつくったのは政府直轄の機関わけで、すなわち自民党の意を十分に汲んだものであるハズだが、嗚呼、どうしたことか、これまで自民党政権が続けてきている政策の類に対して、まったくもって反対のことを目標としているではないか。考えた側がある種ブラックユーモアのつもりなのかどうかはわからないけれど、とてもステキではありませんか。とくに(3)と(2)なんかには文句のつけようがないぐらいだ。

 福祉や医療などにからむ社会保障をまっ先にそれもつぎつぎと切り捨ててやまない政権が、「生命を尊重」せよ?
 開発、あるいは事業のためのの公共事業、アブクゼニに浮かれていた時代を含めて乱開発の類を綿々と続け奨励してきた政権が、「自然を尊重」し、「環境の保全に寄与」せよ?
 アメリカ合州国という一外国のみを支持してやまず、近隣諸国はもとより、わが国に対してなんら危害を及ぼさないばかりかエネルギーの供給などで貢献してきた国に“侵略部隊”を送り込んでいる政府が「国際理解、国際協調の精神を養え?
 歴史上、自国にとって都合の悪い事実をもみけし、客観的な事実についてすらなかったことにしようとしてやまない政権が「わが国と郷土の現状と歴史についての正しい理解をせよ」(センズリ的歴史解釈を奨励する一方で)?
 大都市集中形の社会をつくり、地方土着の生活や文化をないがしろにしてやない政権が「伝統と郷土を愛する態度」を養え? ついでにいえば、わが国の経済さえもおもにアメリカ合州国による巨大資本に売り渡そうとしている現政権はどうか?

 これだけでもおそるべきセンスのユーモアだと思うのだが、さらに仰天するのが(1)の「自主、自律、協同の精神、規範意識、公正な判断力、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画する態度」を養うべしというくだりであろう。現政権が財界とタッグを組んで、いままさに企業戦士予備校として学校教育を位置づけんとしている事実は否定できないと思うが、そのシステムのなかで“エリート”とされるごく一部の層を含めてもなお、「自主、自律」あるいは「主体」性に類するものは邪魔なだけではないかと思うのだが、いかがなものか?

 いや、これはひょっとするとこれはこれまでの旧文部省時代からの教育方針について自らが猛省したのかしらんと善意の解釈をしてみてもいいけれど、そんなことは金輪際あり得ないことは若干の常識を持ってさえいればだれでもわかることだ。朝刊を開いて我が目を疑ったという小咄DESITA(*注)。

 しかしいちばんの問題は、(1)にせよ(2)にせよ(3)にせよ、本来はいちいち国家が口を挟むべきものではないという点にこそある。もっとも、ルール化されなければ自からの判断でやっていいことといけないこと、あるいはなすべきことやその方法・・・社会的モラルや自身の価値観すらマトモに持ち得ないというふうに“育成”されてきたわが国の家畜人らにとっては案外有益なのかもしれないが、それこそを望む“層”があることを注視しなければならないだろう。「自主・自律・主体」が聞いて呆れる。


*注:
 なかには、これまでの「サヨク」的教育現場に対するカウンター的な見方をするひともいるかもしれないが、戦後の教育現場で、部分的にそうした面があったことは否定できないにせよ、全体としては旧文部省から現代にいたるまで、そうした「サヨク」がイニシアチブをとった事実はない。これまでの教育における施策に失敗を見い出すとしたら、それはあくまで政府主導の方針へに対することとしかあり得ず、なおかつそんな“反省”を政府がすることはとうてい考えられず、したがって現在進められている施策は、これまで国がとってきた方針をさらに強化したにすぎないということがいえる。明らかなその失敗を含めて。
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