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猫池罵詈雑言雑記帳
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 嗚呼、この国の役人とは、なんでこんなに愚かなんだろう……。珍しく真面目にテレビ番組をみて、しみじみとそう思った。NHKスペシャル 最強ウイルス2「調査報告“新型インフルエンザの恐怖”」である。
 番組は、いつ起ってもおかしくはないといわれている新型インフルエンザのパンデミック(世界的流行)に関する実態と対策を軸にいくつかの問題を探ったドキュメンタリーである。個人的に、さまざまな感染症については興味を持っていることもあり、じっくりと視聴してみたわけだが、紹介されたごく一部を除き、日本の関係者らの脳天気ぶりというか無責任ぶりを瞥見して空恐ろしさすら覚えた。


 新型インフルエンザのパンデミックといっても、それなりの知識と感性とがなければその影響に想像力を及ばせることは難しいかもしれない。だが、ときおり報道される鳥インフルエンザに感染し発病したひとびとの多くが、最終的にどういう運命を辿ったのかを知れば、おおよその恐ろしさには気がつくハズだ。すなわち、大雑把に死亡率60%といわれるなかで、体力のない高齢者や幼児だけでなく働き盛りの健康なおとなが倒れ、あたりまえのように亡くなっているのである。このことはすなわち、ひとたび流行がはじまれば、だれもが死の危険にさらされるということであり、個人の生命はもちろん、国家的規模で相当以上の損害……というかヘタをすれば破滅しかねないということである。それだけの危機感を持って臨まなければならないのは、ちょっとでも正常な認識があればだれにでも理解できるあたりまえのことといえる。

「国民のみなさんの理解を得、自治体の理解を得、有効な対策をとれるように……」
 録画の類をせずに聞いただけなので大雑把な抄録だが、コレ、わが国の厚生労働省の役人、それも部長職にある某が番組で語った国の対策についてのコメントである。

 仰天ものとはまさにこのことで、みていただければおわかりのように、なにひとつ具体的な施策が示されていないばかりか、国として、あるいは同省として、またコメント本人としての責任を見事に回避した内容のない内容だ。
 こんなことは、この某部長に限らず、わが国の役人やら政治家やらの日ごろからの言動に接するだけで「さもありなん」という類のおきまりコメントのひとつではあるが、番組をみていて、よくもまぁこんな中身のない教科書的文句をしゃぁしゃぁと日本中の視聴者に向けておしゃべりできるもんだと呆れ返ると同時に、その無能・無責任ぶりを自ら暴露していることに気づかない男に対して哀れみすら覚えた。まぁ、名簿の管理やらカネの計算ひとつマトモにできない厚生労働省である。トップクラスの役人にこの程度の痴人がいてもいまさら驚くほどではないのかもしれないが……。

 しかし、一方で紹介されたアメリカ合州国の例をみせられると、その差に愕然とさせられる。紹介されたのはニューヨーク大学病院でとられている対策とその訓練の一部であったが、そこでなされていることのひとつひとつがどれだけ具体的であることか。パンデミックが明らかになるとともに設営される病室。内部に800床のベッドが置かれ、室内は陰圧に保たれる(気圧調整はバイオハザートの基本のひとつ)。そこで診察と治療にあたる医師や看護士の確保の手段。専門医はもちろん、皮膚科や産婦人科、はては歯科医にまで動員を要請し、きちんと協力態勢がとられていることに感心させられた。「(自分は歯科医なので専門ではないが)投薬などに関して知識はあり協力したい(正確な引用ではないが、おおむねこういう内容だった)」と即答(?)した歯科医。日本で実施されたアンケート——パンデミックにさいして設営される予定の臨時検査所に協力するか? という問いに関して、「インフルエンザは専門外」、「内科は専門ではない」と答え早々と協力拒否を回答した実態と比べてなんという使命感、いや常識であろうか。
 また、パンデミック態勢に入ったとき、予定されている手術をどれだけの割合でキャンセルし、そのぶんの医師と看護士らをインフルエンザ患者にあてられるかというシミュレーション含みの議論が紹介され、ここで「まずなにをどうしなければならないのか」という原理原則にたった認識が窺えた。そしてワクチン接種。残念ながら全国民に対して一斉に実施することは物理的に不可能。であればそこには接種に関する優先の度合いというひとつのバロメーターが必要になってくる可能性がある。さらに重症化する肺炎に対して必要となる人工呼吸器に限りがあることから、自ずとそこにも「あえて治療を取り止める」患者がいることが想定されている。すなわち、より助かる見込みのあるケースを優先し、そうでない患者に関しては死を選択するということである。こうした点についてはなんらかの差別を生む可能性や、生命に対する優先順位をつけるなどの倫理的な問題が最後まで横たわると思うが、アメリカ合州国ではそこまで話し合われ、かつ国民からの意見を募り、それを反映させている。そして、いざそうなったさいの現場にあたるべきある看護士のコメント。

「そうなったときに人工呼吸器を外す責任を負うのは私です」(抄録)。

 いかがか? ニッポンの役人やら政治家らに、どれだけこのひとことに匹敵する責任を表明できるだろうか。かぎりなくゼロに近いと思わざるをえない。

 アメリカ合州国の例は、そのなかでも最先端でのケースであり、全米的にみてどうかということは番組だけではわからない部分がある。しかし、さまざまな面で学ぶべき点があまりにも多くあることにあらためて衿を正された気分であった。

 救急車が患者を搬送しても受け入れ医療機関がなく、点々とたらい回しにされた末亡くなったという事件が近ごろしょっちゅうみられる日本。人工呼吸器が想定される必要量の5分の1もない大型病院。1台につき数百万円というが、こんなものは自衛隊の軍用機なりを1機節約するだけで(1機200億を超えるシロモノもありますにゃぁ。まぁ、売人がアメリカ合州国だったりするのだが)なんとも簡単に解決できるではないか。アメリカ合州国の役人だかが表明していたように、いったんコトが起れば大戦争並の死者が出るのだ。これだって“防衛”ではないかと思ってみることはできないのだろうか。

 番組では、パンデミック対策のためにどれだけの時間が許されているのかだれにもわからないと正常な認識が示されていた。そう考えるまでもなく、わが国の対策は遅れている以前に零点に近いとすら感じられる。
「いや、しかし」とか「そうはいったってねぇ」などという逃げ口上はいらない。原理原則を持って、「でもやるんだよっ!」という姿勢がなければ、この先進国はいずれとんでもないことになるのではないかと、いろいろな意味を含めて思うのである。



*補足:
 ただし、日本においても番組で紹介された品川区(東京都)で試みられている対策をはじめ、相応の危機感を持って臨んでいる例は少なくないハズだ。問題は、その中心にあるべき国がどうかということである。大衆への啓蒙を含めて。また、医療制度そのものに問題が蓄積しているといわれるアメリカ合州国にあって、番組で紹介された例だけを持って賞賛することは控えたい。ここではたとえその最先端であろうとも、そのフットワークと危機管理、問題についての認識について触れてみたつもりである。
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