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猫池罵詈雑言雑記帳
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 文化庁が主催する2007年度の芸術祭賞が21日に発表された。NHKスペシャル「鬼太郎が見た玉砕〜水木しげるの戦争〜」がドラマの部で受賞したほか、大衆芸能部門で歌手の石川さゆりさんらの受賞が決まったという。
 この賞のいわくや受賞の価値などについてはまるっきり無知だし、受賞イコールで作品やひとを評価する趣味はないので、ふだんならさっと目を通しておしまいにしてしまうところであった。まぁ、「鬼太郎が見た玉砕」はたしかに力の入った作品に思えたし、テーマ的にも興味を惹くものであった(残念ながら全編を通してゆっくりとはみられなかったが)。おそらく賞に価する評価があればこその受賞なのであろう。

 で、なぜ目に止まったかというと、テレビ部門で「松本清張 点と線」第2部(テレビ朝日制作のドラマスペシャル)が選ばれていたことによる。


 松本清張氏の「点と線」はいわずと知れた推理小説の傑作である。ストーリーの詳細は省くが、鉄道など乗り物を駆使したトリックは個人的に好むところだし、なにより綿密な描写に読みごたえがある。ドラマ化にあたって、製作・放映をてがけたテレビ朝日は、何周年だかの記念事業としても位置づけていたらしく、主演陣をみるだけでもその意気込みが窺えるというものであった。
 が、肝心の内容についてはとても及第点をつけられるものではなかった。
 ひとことでいうならば、俳優の熱演(と現場の努力)があってこそ鑑賞にたえたドラマであり、それがなかったらお粗末につきる。
 ビートたけしをはじめとする俳優陣はよかった。さほどのボリュームがある原作ではないが、そこに漂っている時間の流れがじっくりと描けており、俳優たちがどっぷりと演じているようにみえた。だが、映像的には大いに失望させられた。

 しらけさせられたひとつに、時代考証のなさがある。当時、走っていたワケのない列車の登場はひとつやふたつに限ったことではなかった。しかもトリックにからめて重要な意味合いを持つ東京駅のシーンにおいて、原作とはまったく相容れない場面をつくりだしてしまっていた。横須賀線電車の形式は当時と照らし合わせてどうか? 14系らしい車両が東京駅ホームで客待ちをしていたが、これは当時にありえたのか? 東京駅の全番線が見渡せる“4分間”の情景とは、あんなにミミっちいものだったのか?
 これはけっしてマニアの繰り言の類ではない。
 たとえば、SF映画で宇宙服もつけない地球人が宇宙空間で会話なりをしていたら、そのとたんにSFとしては失格である。時代劇の野外ロケなりで、道ばたにコーラの缶でも転がってたら、時代劇失格であると同時に失笑のネタにはなろう(「大河ドラマ」などでこれをやったら大事になろう)。まぁ、個人的所感としては、時代劇(古代でも同様に)などで、たとえば「OK!」だのと登場人物がしゃべったとしても、これは現代語訳として認めてもいいのではないかぐらいに思うていどの許容は持っているつもりだが(とはいえ、これはもちろん作品による。ていどの差こそあれ、時代劇などで言葉が“翻訳”されていることは否定できないという意味でのたとえだ)、少なくとも「点と線」という作品が時代考証をおざなりにしていい類のドラマだとは思えない。

 いまひとつは、映像的な動きがきわめて乏しかったところに不満があった。背景はほとんど映らないし、室内劇ばかりに重点が置かれているからなおさらである。その静止場面を役者が演技で動きのある作品につくりかえているのだ。
 名づけて「アカギ」手法である。
「アカギ」とは「近代麻雀」に連載中の福本伸行氏の作品で、ややクセのある絵柄とともにまったりとしたストーリー展開が特徴のマンガだ。どれほどまったりしているかといえば麻雀の半荘1回が1年(月1掲載)以上続いていることからもそのテンポが想像できるとは思うが、これは氏の作品独自ともいえる持ち味といっていい。しかし絵的な部分を含めて作品の動きは乏しく、背景もほとんど描かれていない。コンテの相当の割合をアップが占める。また、セリフやウンチク的舞台回しが「これでもか!」というほど念押しが繰り返され、そんなあたりにも読者から賛否があるとも聞く。
 ドラマ「点と線」をみていて、どうもこの福本作品に近い画面づくりが感じられてならなかった。もちろん、それはそれでひとつの世界である。だが、マンガでならともかく、テレビドラマという映像表現にあって、はたしてあれでよかったのかどうかとも思う。ちなみに、「アカギ」は日本テレビ系でアニメ化もされたが、「動画が極端に少ないぶん予算的部分で企画しやすかったのではないか?」ぐらいにみていて感じたものだ。その動かないアニメをみられるレベルに押し上げていたのが声の出演者たちなのであった。実写ドラマとアニメとではつくりかたは大いに異なるとは思うが、動きのない映像を役者がドラマとして成立させていた点で似たような印象を持ったのである。

 まぁ、東京や小倉という都市を舞台として、野外ロケであの当時を描くことが相当以上に困難であることはシロウトにもわかる。だが、それでもなお、あの作品の仕上がりにはファンとして残念な気持ちを抱かざるを得なかったのである。

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