北朝鮮による一連のキチガイ行為などを受け、朝鮮半島における“有事”の可能性が指摘され、流布もされている。個人的に、韓国をあれこれ取材していることもあれば、韓国人の友人や知人だっていることなどから無関心ではいられない事態だ。
現在、米軍艦が接近しつつあると伝えられ、米軍による軍事行動(侵略と紙一重ではないかと思うのだが)があるのではないかと見るムキもあり、たしかに予断を許さない状況に置かれているようにも思える。また、中国やとうの北朝鮮とアメリカ合州国との間で秘密裡に駆け引きが続けられているとの報道も一部では見られる。
実際にどうなるのか。残念ながら、そんなことは相当の消息通でもわかりようがないというのが現実というものであろう。おそらくは、TV番組などでは北朝鮮専門家やらウォッチャーやらがこれ幸いとばかりに“自説”を述べているに違いないが、それらすべてがそうだとまではいわないにせよ、彼らにしたところでそうだと言い切れるほどの材料を揃えているとはとうてい思えない。
当然ながら、コレを書いているオレ自身もまた、一般大衆以上の情報を持ち合わせているワケではないが、それでもなおひとつの見方を崩せないでいる。
それは、仮に「第二次朝鮮戦争」やそれに順ずる軍事衝突が起きるとすれば、そこで引かれる引き金にはアメリカ合州国こそが関わるだろうということである。
韓国と北朝鮮との間では、中小の軍事衝突がこれまでもたびたびおきてきた。たとえば、2010年11月23日に起きた延坪島砲撃事件は記憶に新しいところだ。そのさいも「あわや」という見方もあったが、現実には関係国を含め冷静な態度をみせていちおうの収束がはかられている。
そこには中国とオバマ政権下の米国の判断も関与していたようだが、いまひとつは主体者である韓国側が事態の悪化に対するブレーキをかけるだけの判断力が残されていたことがありはしないだろうか? 北朝鮮のふっとっちょあんちゃんはいざ知らず、韓国の指導部や大衆には朝鮮戦争が自国になにをもたらしたか、その記憶が残されているだろうからだ。北朝鮮側は「ソウルを火の海にする」などと威勢のいいことをたびたびぶっているが、彼らが本当のそんなことをできるかどうかはともかく、仮に「第二次朝鮮戦争」という事態になったとしたら、自国民や国土、経済それらもろもろが甚大にすぎる被害を受けることは否定できない。くわえて、朝鮮戦争自体がいまだ休戦状態で停滞していることを考えれば、その戦争の収束への道すら覚束ないのだということが、当事者である韓国はよくわかっているのだ。
とまぁ、これは個人的な想像を含む推測にすぎないが、戦後のわが国の政治をみたとき、コイズミ・アベ化する以前の自民党内ですらある一定のブレーキが作用していたことを忘れてはならないだろう(自民党は大本からして「憲法改正」などを党是としてきたが、戦後わが国の多くの期間で政権の座にありながら、いまだにそれを果たせないでいるのはなぜか? “長老”を含むひと世代前以上の自民党ないし保守政治家らの発言からもそのブレーキの存在を窺わせるものが少なくないが、ここでは割愛する)。
ところが、アメリカ合州国にとっては、そんなことはどこ吹く風だ。古くは南北戦争。先の大戦でハワイ真珠湾の軍事施設が日本軍によって空爆されたなどといった体験はあるにせよ、国家の成立以前からこのかた、世界各地で起きている戦争や一方的軍事行動において、そのじつに多くの場面で関わっているこの戦争国家。ベトナムやイラクに対する虐殺破壊行為などは、自国における被害を一切合財受けずに、文字通りに一方的な軍事行動にいそしんできた(自国将兵の戦死や負傷、PDSTなどの戦争後遺症が起きているという一面はあるが)。言い換えれば、彼らはなんら痛みを知ることのないママに、世界中で戦争を繰り広げているワケだ。
そんなセンスだからこそ、ブレーキというものがあろうハズもない。いなれば「好戦的平和ボケ」。アベだのイシバだのもこの類と推察するが、米軍による先のシリア空襲もそのひとつであろう(戦争被害どころか、外交面での「平和ボケ」ぶりも示した。わが国の首脳を含めて)。
それゆえ、米軍艦の北上はブキミこのうえないし、仮に韓国と北朝鮮、あるいは中華人民共和国においてブレーキが作用したとしても、それを反故にしてしまう可能性が棄てきれないのである。言い換えれば、今般の軍事的緊張の主役はアメリカ合州国である。もちろん、北朝鮮当局を擁護するつもりなど一切ないが、それと「戦争」とが直接的に結びついてはならない。
おそらくは・・・仮に最悪の事態に発展したとしても、「わが国への直接的な被害なない」とわが国のだれそれは見ているに違いない。同時に、「軍事関連株の時価が上がる」からと、官民を挙げてすでに買い込みに取り掛かっているのではないかとの疑念すら浮かぶ。いったんはじまったが最後、いつどうやって終わらせられるとも知れない戦争が、それだけの被害をもたらすのかということになんら理解を持ちえないままに……。
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