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猫池罵詈雑言雑記帳
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 やっとか、という感じがした。屋久島における入山制限である。
 20日の報道によれば、2011年度から入山制限を設ける方向で地元・屋久島町が方針を示したといい、実現すれば罰則を兼ね備えたきまりになる模様だという。

 背景には、急激に増加し続ける観光客への対応が困難だということがあり、環境保護の観点から問題が起きていることが挙げられるらしい。昨年の入山者数はおよそ10万9000人といわれ、とりわけし尿処理が限界に達しているというのだからコトは深刻だ。
 屋久島には1999年にいちどだけ訪れたことがあり、そのさいには縄文杉などの見学もしてきた。登山道はそれなりに歩きごたえがあり満足できたものの、ひとの多さにはやや辟易とさせられたものだ(自分たちをさておいてだが・笑)。なにしろひっきりなしの行列で、いったいどこにこれだけの観光客がいたのか不思議でならなかった。ここにきて地元がシビレを切らしたということは、おそらくはその当時を超える観光客が押し寄せてきているのであろう。

 なぜかくのごとく混雑しているのか? おそらくは、屋久島が世界遺産に登録されたことに端を発した誤解、これこそが最大の原因なのに違いない。
 世界遺産のなんたるかを理解するしない以前の連中が、単に観光振興にのみ躍起になり、同じく「世界遺産」というブランドに踊らされただけのひとびとがまんまとカネを落としにやってきた結果が、このありさまなのではないのか。どういう思考なのかさっぱり理解できないのだが、世の中には自分自身の価値観を持たずに、やれ「世界遺産」だ、やれ「ミシュラン」だのと(まぁ、世界遺産とミシュランとはまったく異なる性質のものですがね)、マスメディアがちょっと煽れば右にいったり左にいったりという輩が多すぎる。たしかに、国の内外を問わず、世界遺産に登録された土地や物件には素晴らしいと感じられる部分が少なくないし、「世界遺産」というブランドカタログからその存在を知った「遺産」のなかには、ぜひ訪問してみたいと思わせるところだってある。だが、訪問したいとはいっても、それはそこが「世界遺産だから」ではありはしない。スタンプラリーでもあるまいし、そんなことはあたりまえである。同時に、「世界遺産」などとはまったく関係なく訪問してみたいところのほうがよほど多いし、魅力を感じることになるわけだ。
 念のために言い訳しておけば、99年に屋久島に訪れたのも世界遺産とはまったく関係がない。それどころか、そんなものにさっぱり興味がなかったため、屋久島が世界遺産に登録されていたことすら知っていたかどうかさえあやしい(恥ずかしながら本当だ)。したがって、世界遺産に登録されるやひとびとが殺到するということは、現象としては理解できたとしても、その心理を理解したいという気になれないのである。

 類似の話は、拙ブログですでになんどか述べた。
「白神ライン探訪の巻」
「自分でプロデュース!の巻」

 話を戻すと、今回の屋久島の措置には、心から大歓迎である。具体的な内容がかたまるまでにはまだ若干の時間がかかるようではあるが、ぜひ強硬に実現してもらいたい。そうした地元の厳しい姿勢があるからこそ、世界遺産の精神(というよりも、自然環境や遺産を大切にするということだが)、あるいは価値というものが生きてくるのであり、ひいては「世界遺産」を訪れたひとびとに対する啓蒙にだってなるハズだ。同時に、観光振興にばかり目がいっていそうな「世界遺産」登録競争に対するアンチテーゼにもなりうるのではないかと思う。

 前回の記事と重なってしまうようだが、「エコ」だのなんだのと、お題目ばかりが先行し、そのじつどこまで本当の意味での環境意識が醸成されているかさっぱりわからない日本。「シーオーツー」(二酸化炭素のことなのかな?)削減がどうのと騒いでいる端でクルマを売り捌き、「シーオーツー」排出が少ないから「環境に優しい」と原発宣伝をする電力会社が幅をきかせている日本。むろん、例外は多々あろうけれど、そんなセンスによって「世界遺産」とやらが利用されているのだとしたら……、いやだからこそ屋久島がかくのごとしの事態に陥ったのではないか? 今回の取り組みは、そうした愚かしさをみつめ直す絶好の機会である。


*おまけ:
 ちなみにカッコをつけておくと、仕事として旅行記事などを書くさいには、世界遺産という表札を極力用いないように心掛けている(文化遺産はともかく、自然遺産で顕著)。客観データを含め仕方なしに添える可能性がゼロとはいわないが、たとえば屋久島にしろ白神山地にしろ、できるだけ別の言葉で魅力を紹介したいのである。現地の環境を大切に思うからこそ……。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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