民主党中心の連立政権が動きだしている。以前から述べているように、個人的には民主党への期待や信頼感がさほどあるわけではないが、いままでのところそのすべてではないにせよ、評価できる動きが顕われていると思う。
順を追いながらひとつひとつ検討してみたいと考えているなか、ひとつ八ッ場ダム問題について少しだけ触れてみたい。
順を追いながらひとつひとつ検討してみたいと考えているなか、ひとつ八ッ場ダム問題について少しだけ触れてみたい。
政権は、公約どおりに八ッ場ダムの建設中止を表明、公約実現に向けて早くも動きだした。23日には前原誠司国土交通大臣が現地入りし、改めて現場の視察や住民の声を聞いていることが報じられており、コトが半世紀以上くすぶり続けてきた懸案なだけに、その動きには注目をしている。
ご存じのとおり、八ッ場ダムの計画は1952(吾妻川流域計画としては1949)年にスタートしたものの、地元をはじめとする反対や技術的な問題点が浮上するなど建設が滞り、いまなおダム本体の建設にすらとりかかれない状態が続いている。長年にわたる宙ぶらりんの状態におかれたといってもいい地元では、継続して反対の立場を貫くひとびとがいる一方で、移転代替地などの補償を得たうえで生活を立て直す方向にあるひとびともあり、賛否がうずまいている状況にある。
拙ブログは基本的にオピニオンを主体としていることもあり、ここでも結論ありきになってしまうことをお詫びしなければならないが、建設中止を表明した民主党政権には、断固として初志を貫いてもらうほかはない。八ッ場ダムなど、もはやなんら正当性の見出せない遺物として、その根底から計画と建設とを破棄すべきである。
テレビなどの報道をみていると、建設推進を訴える地元の声が伝えられない日はない。なかには面識のある方もあるうえ、取材でお邪魔したことのある地域なだけに、その声を無視するつもりはない。だが、テレビでの断片的な内容から判断すると、彼らの訴えがなんとも悲しくやるせなくてならないのである。なかには当初から賛成していたひともいるかもしれないし、ある時点から、たとえ消極的にせよ賛成に回ったひとだっているだろう。早々に決着をつけて、新たな土地で心機一転したいという気持ちもよくわかるつもりだ。だが、こうした事態になぜ陥ったのかを考えると、彼らの推進せよという訴えがなんとも物悲しい諦めとしか聞こえてこないのである。
そもそもが、自民党とともに官僚や大手資本らが一方的に決めた事業ではなかったのか? 美しい山河や温泉という天然資源にめぐまれた土地のひとびとが、自らの生活を守るために反対の声をまず挙げた。だが、そうした声に耳を貸すフリをしながら、決して既得権益としての事業を放棄せず、あの手この手で懐柔され続けた結果が、いまの悲しき状況を生んでいるとはいえないのか? こんなものはあくまで他所ものの視点にしかすぎないかもしれないけれど、かつて北海道のアイヌ民族が味わされた侵略や南北アメリカ大陸で一方的に生活や文化を破壊され尽くした先住民らと極めて近しい意味での権力による蹂躙の構図をみる。はたして、自分たちが選んできた代議士や政権が、本質的な意味で土地や生活や生きる権利を守ってくれたのだろうか。自民党中心の政権が中断し、やっとこさ元来の願いを形にしようという民主党政権がやってきたのである。にも拘わらず中止の撤回をと政権に対して求めるのは、もちろん権利ではあるにせよ、いささかの筋違いとはいえないのだろうか?
生活を不安定にさせ、将来がみえない状態にし、地域内での対立すら生み出したその元凶はほかならぬ歴代の自民党政権であり、共謀し続けた官僚であり、裏で暗躍する巨大資本であった。そういう意味でいえば、本当の敵が何者なのかは明らかではないか。遅きに失したには違いないが、いままさに本当の敵を倒すチャンスがきたのである。補償の責任は国はもちろん、前政権とその共謀者にこそ求めるべきで、現政権にはその手助けをさせようではないか。
さて、テレビなどの報道の裏になにがあるのかはわからないが、推進対中止という構図ばかりにスポットをあてるばかりで、八ッ場ダム計画の問題について、その根幹のあらすじすらほとんど触れていないのが気になる。
手元の資料などによれば、八ッ場ダムの総事業費は4600億円とされているが、実際には水源地域対策費に別途1300億円が計上され、金利負担を含めると合計で9000億円がかかるという(予算には国や群馬県以外の都県も関係し、わが郷土・千葉県の負担は760億円とされている)。こうした数字に対し、報道では「いまさら中止したところで、却ってムダ遣いとなる」という論調が目立ち、その根拠のひとつとして、すでに「7割がたが進んでいる」という詭弁が弄されている。7割だって? バカいっちゃいけない。この数字は、件の4600億円のうちの7割をすでに使ってしまったということなのだ。それでいて、工事そのものはほとんど進んでいないという事実を、はたして推進側はどのように説明できるというのだろう。
2008年度末の進捗。国道6%、県道2%、鉄道75%、代替地関連10%……。さきにダム本体がまったく手をつけられていないと記したが、これはそれ以前に道路や代替地などの造成を片づけなければならないためである。それがこの状態で、はたして予定されている2015年の完成が可能なのかどうか、そんなものはシロウトにも想像がつくというものだ(つまり、この進捗状況ですでに予算の7割を使ってしまったということでもある!)。実際には、これに新たに発覚した周辺の地滑り対策が加わり、吾妻川から取水している東京電力への減電補償(発電量減少への補償)が数百億円かかるといわれている。現状での残事業費を加えると、およそ2390億円なり。
対して、中止の場合の予算は地元生活関連の事業費が770億円であり、他県などの利水者への返還金が890億円程度だという。もちろん、中止をした場合、これまでかかった費用がまるまるムダにりかねず、さらに移転への準備を進めてきた地元のひとびとの経済的、精神的な負担の重さは想像するにあまりある。だが、さきに示唆したように、たとえ計画が進められ、いくばくかの補償を手にしながら代替地に移ったところで、蹂躙され翻弄され搾取され尽くしたというその構図が、そこで完成するということにほかならないとはいえないのだろうかと思うのだ。むしろ、ここでキッパリと中止を決定させ、いったんは手放しかけた自らの土地でその生活を立て直すという選択はできないのだろうか(*注)
ちなみにダメを押せば、建設にあたって名目のひとつとされてきた給水問題は、生活用水のみならず工業用水なども水余りの傾向にある(一時的な黄色信号が灯る可能性はあるにせよ)。また、洪水対策については、とうの国交省からして「役に立たない(治水能力なし)」と認めている(08年6月)。
将来に禍根を残さぬよう、現政権に柔軟かつ断固たる姿勢を貫くことを要望するとともに、勇気ある選択を期待したいと思う。
*注:
ただし、肝心の住民が少なからずすでに土地を手放してしまっており、仮にここに留まる選択ができたとしても、地域社会の再建という課題がのしかかる。だが、そのようにして社会や暮らしを破壊した元凶は何者なのかを、いまいちど考え直してもいいのではないだろうか。これはいままさに翻弄されている地元のみならず、日本国民全体の問題であり課題でもあるという意味で。
なお、いくぶん乱雑な論調になっている点をお詫び申し上げます(いつものことではありますが)。
ご存じのとおり、八ッ場ダムの計画は1952(吾妻川流域計画としては1949)年にスタートしたものの、地元をはじめとする反対や技術的な問題点が浮上するなど建設が滞り、いまなおダム本体の建設にすらとりかかれない状態が続いている。長年にわたる宙ぶらりんの状態におかれたといってもいい地元では、継続して反対の立場を貫くひとびとがいる一方で、移転代替地などの補償を得たうえで生活を立て直す方向にあるひとびともあり、賛否がうずまいている状況にある。
拙ブログは基本的にオピニオンを主体としていることもあり、ここでも結論ありきになってしまうことをお詫びしなければならないが、建設中止を表明した民主党政権には、断固として初志を貫いてもらうほかはない。八ッ場ダムなど、もはやなんら正当性の見出せない遺物として、その根底から計画と建設とを破棄すべきである。
テレビなどの報道をみていると、建設推進を訴える地元の声が伝えられない日はない。なかには面識のある方もあるうえ、取材でお邪魔したことのある地域なだけに、その声を無視するつもりはない。だが、テレビでの断片的な内容から判断すると、彼らの訴えがなんとも悲しくやるせなくてならないのである。なかには当初から賛成していたひともいるかもしれないし、ある時点から、たとえ消極的にせよ賛成に回ったひとだっているだろう。早々に決着をつけて、新たな土地で心機一転したいという気持ちもよくわかるつもりだ。だが、こうした事態になぜ陥ったのかを考えると、彼らの推進せよという訴えがなんとも物悲しい諦めとしか聞こえてこないのである。
そもそもが、自民党とともに官僚や大手資本らが一方的に決めた事業ではなかったのか? 美しい山河や温泉という天然資源にめぐまれた土地のひとびとが、自らの生活を守るために反対の声をまず挙げた。だが、そうした声に耳を貸すフリをしながら、決して既得権益としての事業を放棄せず、あの手この手で懐柔され続けた結果が、いまの悲しき状況を生んでいるとはいえないのか? こんなものはあくまで他所ものの視点にしかすぎないかもしれないけれど、かつて北海道のアイヌ民族が味わされた侵略や南北アメリカ大陸で一方的に生活や文化を破壊され尽くした先住民らと極めて近しい意味での権力による蹂躙の構図をみる。はたして、自分たちが選んできた代議士や政権が、本質的な意味で土地や生活や生きる権利を守ってくれたのだろうか。自民党中心の政権が中断し、やっとこさ元来の願いを形にしようという民主党政権がやってきたのである。にも拘わらず中止の撤回をと政権に対して求めるのは、もちろん権利ではあるにせよ、いささかの筋違いとはいえないのだろうか?
生活を不安定にさせ、将来がみえない状態にし、地域内での対立すら生み出したその元凶はほかならぬ歴代の自民党政権であり、共謀し続けた官僚であり、裏で暗躍する巨大資本であった。そういう意味でいえば、本当の敵が何者なのかは明らかではないか。遅きに失したには違いないが、いままさに本当の敵を倒すチャンスがきたのである。補償の責任は国はもちろん、前政権とその共謀者にこそ求めるべきで、現政権にはその手助けをさせようではないか。
さて、テレビなどの報道の裏になにがあるのかはわからないが、推進対中止という構図ばかりにスポットをあてるばかりで、八ッ場ダム計画の問題について、その根幹のあらすじすらほとんど触れていないのが気になる。
手元の資料などによれば、八ッ場ダムの総事業費は4600億円とされているが、実際には水源地域対策費に別途1300億円が計上され、金利負担を含めると合計で9000億円がかかるという(予算には国や群馬県以外の都県も関係し、わが郷土・千葉県の負担は760億円とされている)。こうした数字に対し、報道では「いまさら中止したところで、却ってムダ遣いとなる」という論調が目立ち、その根拠のひとつとして、すでに「7割がたが進んでいる」という詭弁が弄されている。7割だって? バカいっちゃいけない。この数字は、件の4600億円のうちの7割をすでに使ってしまったということなのだ。それでいて、工事そのものはほとんど進んでいないという事実を、はたして推進側はどのように説明できるというのだろう。
2008年度末の進捗。国道6%、県道2%、鉄道75%、代替地関連10%……。さきにダム本体がまったく手をつけられていないと記したが、これはそれ以前に道路や代替地などの造成を片づけなければならないためである。それがこの状態で、はたして予定されている2015年の完成が可能なのかどうか、そんなものはシロウトにも想像がつくというものだ(つまり、この進捗状況ですでに予算の7割を使ってしまったということでもある!)。実際には、これに新たに発覚した周辺の地滑り対策が加わり、吾妻川から取水している東京電力への減電補償(発電量減少への補償)が数百億円かかるといわれている。現状での残事業費を加えると、およそ2390億円なり。
対して、中止の場合の予算は地元生活関連の事業費が770億円であり、他県などの利水者への返還金が890億円程度だという。もちろん、中止をした場合、これまでかかった費用がまるまるムダにりかねず、さらに移転への準備を進めてきた地元のひとびとの経済的、精神的な負担の重さは想像するにあまりある。だが、さきに示唆したように、たとえ計画が進められ、いくばくかの補償を手にしながら代替地に移ったところで、蹂躙され翻弄され搾取され尽くしたというその構図が、そこで完成するということにほかならないとはいえないのだろうかと思うのだ。むしろ、ここでキッパリと中止を決定させ、いったんは手放しかけた自らの土地でその生活を立て直すという選択はできないのだろうか(*注)
ちなみにダメを押せば、建設にあたって名目のひとつとされてきた給水問題は、生活用水のみならず工業用水なども水余りの傾向にある(一時的な黄色信号が灯る可能性はあるにせよ)。また、洪水対策については、とうの国交省からして「役に立たない(治水能力なし)」と認めている(08年6月)。
将来に禍根を残さぬよう、現政権に柔軟かつ断固たる姿勢を貫くことを要望するとともに、勇気ある選択を期待したいと思う。
*注:
ただし、肝心の住民が少なからずすでに土地を手放してしまっており、仮にここに留まる選択ができたとしても、地域社会の再建という課題がのしかかる。だが、そのようにして社会や暮らしを破壊した元凶は何者なのかを、いまいちど考え直してもいいのではないだろうか。これはいままさに翻弄されている地元のみならず、日本国民全体の問題であり課題でもあるという意味で。
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レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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