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猫池罵詈雑言雑記帳
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 今朝、ネット上でニュースをチェックしていたら、つぎのような雑報が目に入った。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010031100020

[10日午後10時5分ごろ、JR羽越線で新潟発酒田行き特急「いなほ13号」(6両編成)が停車予定の中条駅を通過、約8.9キロ離れた次の坂町駅で停車した。けが人はなかった。男性運転士(30)は停車後、中条駅通過に気付いたといい、JR東日本新潟支社は、失念していたとみて(以下略)](リンク記事より引用)  

 時事通信社が配信したこの記事は、JR東日本の特急列車が停車予定の駅を通過してしまったという運転ミスを伝えるものである。これをみた瞬間、「ぁあ、ホントにしょうがないな」とまず鉄道会社について思ったものだったが、それと並んで気になったのが「けが人はなかった」という記述であった。
 列車が停車予定駅を誤って通過し、それでたとえば衝突したなり脱線したなりという大事故を起こしたとでもいうのならばともかく、これのどこにケガ人が出たか否かという発想が浮かんでくるのだろうとクビをかしげてしまたのである。現地の地理感に乏しいひともいるかもしれないが、停車した坂町は通常の停車駅である。なにも臨時に緊急停車したわえではない。もちろん、一歩間違えば大事故にもつながりかねないミスだ。続報を含め、入念な追跡が必要なのはいうまでもないだろう。だが、ここであえて取り上げたい「けが人はなかった」という紋切り型の記述はなぜ書かれたのか。おそらくは深く考えることなくつけ加えてしまったのだと想像しているけれど、そう思ったところで近ごろ気になる常套句を思いだした。

「当駅はただいま●●の工事中のため、ホームや階段がところどころ狭くなっております。ご利用のお客さまにはご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします」
 さしあたり「駅」としたのは、おそらく駅など鉄道施設で最初に遭遇したからだが、近ごろでは別の場面でも聞かされたような気がする。この類の放送は、ここ数年(?)で頻繁に耳にすることになった。

 まぁ必要な案内ではあろう。工事に伴う事故を未然に防ぐという狙いもあろうし、利用者に対する「おわび」も兼ねているに違いないからだ。槍玉に挙げたいのは「ご理解とご協力のほど」である。ウッカリ馴らされてしまったひとも少なくないとは思うけれど、あらためて読んでみれば、なんとも慇懃無礼な感じがしてこないだろうか。
 利用者に対して「理解せよ」。同時に「協力せよ」。
 命令ではなく“お願い”している? しかし、よくよく考えるまでもなく、そんなことを念押しされる筋合いはないのではないか? そこが工事中なのはみれば明らかであり、当然ながら利用する側もそれにみあった行動をとざらるをえない(なんらかのハンデを持つひとに対しては事業者側で個別対応の必要があるかもしれないが)。つまり、利用者にとっては自ずから工事中なのを「理解」したうえで、工事の邪魔をせずに、かつ自分が事故の類に遭わないように気をつけるものなのだ。それをわっざわざ「理解せよ」というのは、いかにも利用者を小バカにしたように聞こえてこないだろうか。そういうセンスでみれば、その後につづく「ご協力のほど」が、言葉は丁寧かもしれないがまったくの命令であることに気がつくハズである(「邪魔すんな!」と解釈することも可能か?)。それも繰り返し繰り返し。「当駅はただいま●●の工事中のため、ホームや階段がところどころ狭くなっております。ご利用のお客さまにはご迷惑をおかけします」だけで十二分ではないか。それを「協力」してくれだって? ネジのひとつでも締めて差し上げればよろしいのか(笑)?

 なにが言いたいか? ようはそうした紋切り型の常套句を使う前に、一歩立ち止まってみませんかということである。
 このことは当ブログでもなんどか記してきたけれど、たとえば冒頭に挙げてみたようなニュースでいえば「リーマンブラザースの〜」という不景気の枕詞や「同時多発テロ」などという意味不明の語句なども同じだ。料理や食材を紹介するのに「ジューシーな」(個人的には禁句のひとつ)とか温泉宿などを紹介するのに「旅の疲れを癒す」(同)の類も一緒。そういえば、かつて某週刊誌(たしか「プレイボーイ」だったと思うが)に載った「カシオペア号」乗車ルポがケッサクだった。「(途中駅発車が数分遅れたところで)お急ぎのお客さまにはご迷惑をおかけします」と放送されたのに対して、「急ぐヤツはこんなのに乗ってないよ」といった類のツッコミが入ったというのも、いつだったか紹介したことがあるかもしれない。同じような場面には自分自身も幾度となく遭遇しているが、この場合「お急ぎの」は不要かあるいは言い換えが必要だろうなァ(場面は大いに異なるが、「感動をもらった」など近年流行の気色悪い表現についても、なんどか触れてきた)。

 まだまだあるけど、そうした常套句の数々は、おそらくはなんの考えもなしに使っているだけなのであろう。「けが人はなかった」も然り、「ご理解とご協力」(「と」は省略されていたかもしれない)も然り。鉄道会社のそれにしても、悪意の類はまったくないに違いない。しかしだからこそタチが悪いともいえる。
 ……そんなこんなで、ちょっとばかり自戒の念も込めつつ罵詈雑言してみた次第。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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