新興航空会社のひとつ、スカイマーク社をめぐり、このところ話題が続出している。前もって断言しておくが、個人的な考えとして、同社は絶対乗りたくない航空会社のひとつである。最大にして唯一の理由は、利用者目線でみたときに、安全面での不安が多大に感じられるからであり、ようは信用していないからだ。いわゆる“危ない航空会社”として取り沙汰されることの多い高麗航空(北朝鮮)あたりは、ちょっとした好奇心で体験してみたいような気がしないでもないけれど、スカイ社の場合はあえて利用するための興味もみつけられず、つまりオレにとってはまったくの無用の長物だということでもある。
安全面をめぐっての根拠はある。しかも国土交通省お墨つきの具体的根拠だ。同省は今年5月22日になってスカイ社に対し「厳重注意」、今日(6月5日)を期限に改善策の報告を要求している。しかも、すでに2010年にも安全面の不備を疑われ業務改善勧告を受けたうえでの話であり、先進国の航空会社としてはまさに異例の事態といえるだろう。
報道によれば、今回の「厳重注意」にあたっておもに問題視されたのは、今年2月から5月にかけての“事故未遂”だという。すなわち……、
・イ:宮古空港着陸時におきた「最低降下高度」を下回った飛行。地表への異常接近を知らせる警報が作動し、重大事故を回避。──2月25日(BC547便・那覇ー宮古)
・ロ:成田空港離陸直後の経路ミス。飛行管理装置への経路入力を怠り飛行経路を逸脱したが、管制官の指示により重大事故を回避。──2月26日(BC803便・成田ー福岡)
・ハ:新千歳空港離陸直後の経路ミス。上記と類似の経過。──3月27日(BC874便・新千歳ー成田)
・ニ:茨城空港における着陸滑走路の選択ミス。管制官からの指示を「勘違い」し、2本ある滑走路のうち誤った側に着陸。──4月22日(BC794便・新千歳ー茨城)
・ホ:国からの通達および社内内規を無視した超過勤務の暴露。副操縦士が乗務36分、勤務2時間34分を規定より超過。本人の申告により発覚したというが、会社側は把握できていなかったらしい。──(4月30日〜5月1日)
……である。
いずれも一歩間違えれば重篤な事故を呼び込みかねない事態だったのではないかと思うが、じつはあまり驚かなかった。なぜか? これはひとえに同社経営者の姿勢こそがすでに明らかにしてくれていたからである。
・ヘ:運航前のチェックにおいて、コンディションに不安のあった客室乗務員を交代させようとした機長に対し、同社社長・西久保愼一氏が強制介入、機長を該当乗務から外して運航させた。──(2010年2月5日・BC017便。国土交通省からの厳重注意書 /PDF)
「ヘ」に関していえば、安全な運航に責任を持つ機長からの指摘を無視したばかりか、こともあろうか当然の職務を果たそうとした側を乗務から外したのというのだから常軌を逸している。まったくもって道理もクソもない悪ふざけだが、こんな経営者が牛耳る航空会社を、どうして使う気になろうか。幸いにして仕事上で利用させられる事態にはいまのところなっていないが、仮に版元などから(制作予算の都合などで)利用を促されたとたら、やんわりと再考を促すか、差額に自腹を切って別の真っ当な航空会社便を選ぶ。リスク回避は当然の権利だからだ。
さて、めでたくもオレにとって“危ない航空会社”のトップクラスにのぼりつめたスカイ社が、こんどは“仰天接客コンセプト”とやらで巷の話題づくりに貢献している。なんでも、座席に「スカイマーク・サービスコンセプト」と題したレジメを備えけるようになったとかで、その内容が物議を醸しているようなのだ(最初にみたのは「東京新聞」の朝刊で、正直「さもありなん」と思ったものだが、その後にネット配信などを通じて騒ぎとなっている)。
内容はといえば、大方の部分は「どうぞご自由に」というレベルかもしれない。たとえば、「お客様に対しては従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けておりません」といった部分だ。機内持ち込み荷物に関する扱いについても、手伝う義務はないしそのつもりもないという宣言もしているが、ある種の航空会社ではごくあたりまえのセンスだともいえるだろう。たとえば、アメリカ合州国の航空会社のお粗末な接客への嘆きをときおり耳にする。「客室乗務員がみんなおばあさんで、だから荷物の上げ下げなんかできるわけないし、本人たちもするつもりがないのよ(某機内で隣あったサンフランシスコ在住のご婦人)」だの「(飲み物などを)頼んでもいつまでも持ってこない。チェックインカウンターの職員も基本的になにもしない。おまけにシートは狭いし。(本多勝一氏による古い揶揄を取り上げ)英語を喋れるのが唯一の特技だって? ホントにそのとおりだよ(たびたびニューヨークを訪れている友人)」といった具合。いわゆる格安航空会社の運営法として、これまで標準だと思われてきた補助的サービスを簡略化ないし廃止するというのは理解できるし、言葉遣い云々はさておき、新幹線にでも乗るのだと思えば、荷物だのなんだのといった部分で不便があるのは我慢の範疇であろう。ようは、乗客が納得して、かつ安全確実に運航されればいいだけの話なのだ。
しかしである。
「客室乗務員の私語等について苦情を頂くことがありますが、客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なものと位置付けております」
という記述はどうか。あえていえば、ここでは“私語等”は問題としない(ひょっとすると同社の利用者には、ことさらにこうしたことに対しある種神経質というか横柄な態度をとりがちな層が集まっているのかしらんと思わないでもない。このところ飛行機を利用する機会は増えたが、少なくとも機内でそうしたクレーム現場に遭遇したことがないからだ。それとも本当に同社の乗務態度は酷いのだろうか?)。驚いたのは「客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており」という部分である。これはもちろん原則であり事実であろう。だが、同社経営者は本当のそのとおりだと認識しているのだろうか。先に取り上げた2010年の事件は、こうした常識を持っていたら決して起き得ないと思うのだが。件の降ろされた機長は、ここを理解しているからこそ体調の思わしくない客室乗務員の交代を促したのに違いないが、それを経営者自らが反故にした。したがって、上の“断り書き”を“翻訳”すれば、「本当は客室乗務員など乗せたくないのだが、保安要員として乗務させることが法令で定められているので、仕方なく規定の人数を揃えております」(客室乗務員はおろか、操縦士や整備士の数も減らしたいと思ってたりして?)。案外、そんなところがホンネであり、スカイマークという俗悪航空会社の正体なのではないのか? まさに「安かろう悪かろう」である。
ここからはついでだが。A380だのといった新鋭機を多数導入するだの、あれこれ新路線への就航を発表するなど勢いのいいスカイ社だが、いまひとつはこうした“計画”の真の狙いはなんなのかという疑いすら抱きたくなってくる。ひょっとするとアドバルーンばかりを派手に打ち上げておいて、単に投資を呼び込むことそのものだけが狙いなのではないのか(今回のレジメもそのひとつかもしれない)。そうして集めたカネをどうするのかまではわかりようがないが、シロウト目にはどうにも胡散臭い。
もとより、幸いにして同社に代わる交通機関はいくらでもある。同社をめぐるもろもろが気にならないのであれば同社を選べばよし、でなければのっけからソッポを向いてやればいいだけの話であろう。さしあたりは、“危ない航空会社”だというのがオレの偏見にすぎないことを祈るばかりである。
報道によれば、今回の「厳重注意」にあたっておもに問題視されたのは、今年2月から5月にかけての“事故未遂”だという。すなわち……、
・イ:宮古空港着陸時におきた「最低降下高度」を下回った飛行。地表への異常接近を知らせる警報が作動し、重大事故を回避。──2月25日(BC547便・那覇ー宮古)
・ロ:成田空港離陸直後の経路ミス。飛行管理装置への経路入力を怠り飛行経路を逸脱したが、管制官の指示により重大事故を回避。──2月26日(BC803便・成田ー福岡)
・ハ:新千歳空港離陸直後の経路ミス。上記と類似の経過。──3月27日(BC874便・新千歳ー成田)
・ニ:茨城空港における着陸滑走路の選択ミス。管制官からの指示を「勘違い」し、2本ある滑走路のうち誤った側に着陸。──4月22日(BC794便・新千歳ー茨城)
・ホ:国からの通達および社内内規を無視した超過勤務の暴露。副操縦士が乗務36分、勤務2時間34分を規定より超過。本人の申告により発覚したというが、会社側は把握できていなかったらしい。──(4月30日〜5月1日)
……である。
いずれも一歩間違えれば重篤な事故を呼び込みかねない事態だったのではないかと思うが、じつはあまり驚かなかった。なぜか? これはひとえに同社経営者の姿勢こそがすでに明らかにしてくれていたからである。
・ヘ:運航前のチェックにおいて、コンディションに不安のあった客室乗務員を交代させようとした機長に対し、同社社長・西久保愼一氏が強制介入、機長を該当乗務から外して運航させた。──(2010年2月5日・BC017便。国土交通省からの厳重注意書 /PDF)
「ヘ」に関していえば、安全な運航に責任を持つ機長からの指摘を無視したばかりか、こともあろうか当然の職務を果たそうとした側を乗務から外したのというのだから常軌を逸している。まったくもって道理もクソもない悪ふざけだが、こんな経営者が牛耳る航空会社を、どうして使う気になろうか。幸いにして仕事上で利用させられる事態にはいまのところなっていないが、仮に版元などから(制作予算の都合などで)利用を促されたとたら、やんわりと再考を促すか、差額に自腹を切って別の真っ当な航空会社便を選ぶ。リスク回避は当然の権利だからだ。
さて、めでたくもオレにとって“危ない航空会社”のトップクラスにのぼりつめたスカイ社が、こんどは“仰天接客コンセプト”とやらで巷の話題づくりに貢献している。なんでも、座席に「スカイマーク・サービスコンセプト」と題したレジメを備えけるようになったとかで、その内容が物議を醸しているようなのだ(最初にみたのは「東京新聞」の朝刊で、正直「さもありなん」と思ったものだが、その後にネット配信などを通じて騒ぎとなっている)。
内容はといえば、大方の部分は「どうぞご自由に」というレベルかもしれない。たとえば、「お客様に対しては従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けておりません」といった部分だ。機内持ち込み荷物に関する扱いについても、手伝う義務はないしそのつもりもないという宣言もしているが、ある種の航空会社ではごくあたりまえのセンスだともいえるだろう。たとえば、アメリカ合州国の航空会社のお粗末な接客への嘆きをときおり耳にする。「客室乗務員がみんなおばあさんで、だから荷物の上げ下げなんかできるわけないし、本人たちもするつもりがないのよ(某機内で隣あったサンフランシスコ在住のご婦人)」だの「(飲み物などを)頼んでもいつまでも持ってこない。チェックインカウンターの職員も基本的になにもしない。おまけにシートは狭いし。(本多勝一氏による古い揶揄を取り上げ)英語を喋れるのが唯一の特技だって? ホントにそのとおりだよ(たびたびニューヨークを訪れている友人)」といった具合。いわゆる格安航空会社の運営法として、これまで標準だと思われてきた補助的サービスを簡略化ないし廃止するというのは理解できるし、言葉遣い云々はさておき、新幹線にでも乗るのだと思えば、荷物だのなんだのといった部分で不便があるのは我慢の範疇であろう。ようは、乗客が納得して、かつ安全確実に運航されればいいだけの話なのだ。
しかしである。
「客室乗務員の私語等について苦情を頂くことがありますが、客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なものと位置付けております」
という記述はどうか。あえていえば、ここでは“私語等”は問題としない(ひょっとすると同社の利用者には、ことさらにこうしたことに対しある種神経質というか横柄な態度をとりがちな層が集まっているのかしらんと思わないでもない。このところ飛行機を利用する機会は増えたが、少なくとも機内でそうしたクレーム現場に遭遇したことがないからだ。それとも本当に同社の乗務態度は酷いのだろうか?)。驚いたのは「客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており」という部分である。これはもちろん原則であり事実であろう。だが、同社経営者は本当のそのとおりだと認識しているのだろうか。先に取り上げた2010年の事件は、こうした常識を持っていたら決して起き得ないと思うのだが。件の降ろされた機長は、ここを理解しているからこそ体調の思わしくない客室乗務員の交代を促したのに違いないが、それを経営者自らが反故にした。したがって、上の“断り書き”を“翻訳”すれば、「本当は客室乗務員など乗せたくないのだが、保安要員として乗務させることが法令で定められているので、仕方なく規定の人数を揃えております」(客室乗務員はおろか、操縦士や整備士の数も減らしたいと思ってたりして?)。案外、そんなところがホンネであり、スカイマークという俗悪航空会社の正体なのではないのか? まさに「安かろう悪かろう」である。
ここからはついでだが。A380だのといった新鋭機を多数導入するだの、あれこれ新路線への就航を発表するなど勢いのいいスカイ社だが、いまひとつはこうした“計画”の真の狙いはなんなのかという疑いすら抱きたくなってくる。ひょっとするとアドバルーンばかりを派手に打ち上げておいて、単に投資を呼び込むことそのものだけが狙いなのではないのか(今回のレジメもそのひとつかもしれない)。そうして集めたカネをどうするのかまではわかりようがないが、シロウト目にはどうにも胡散臭い。
もとより、幸いにして同社に代わる交通機関はいくらでもある。同社をめぐるもろもろが気にならないのであれば同社を選べばよし、でなければのっけからソッポを向いてやればいいだけの話であろう。さしあたりは、“危ない航空会社”だというのがオレの偏見にすぎないことを祈るばかりである。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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