2012May/15 原発事故の値段．．．の巻。東京電力は赤字数千億に感謝しなければならない

　東京電力の赤字が何千億円とかなんとか……。ついては電気料金値上げで数千億円規模で赤字が軽減できるとかなんとか……。ついでに電力不足予測と原発再稼働へのアクション……。
　ひとつ言わせてもらえば、たかが原発１カ所の事故でその大企業は経営の屋台骨を揺るがしかねない事態に陥っていることを自覚すべきであろう。

　事故が起きたのは、何十とある原発のうち福島第１という１カ所である。しかし、わが国の歴史において未曾有ともいえる事態を引き起こしてはいるものの、あえていえば事故のクラスは“中程度”とはいえまいか。電力会社や政府にとっては、あれがチェルノブイリクラスに遠く及んでいないことを感謝してもいいほどだ。もちろん、今後さらに危険な状態に陥る可能性があるかもしれないという薄氷の上ではある。しかし、それとともに自覚してほしいのは、その“中程度”をもって経営危機が招かれているという事実に対してでなのである。言い換えると、あのていどだからこそとりあえず数千億円で済んでいるのであり（今後の補償などはその数倍規模では済まないのではないのか？）、もっといえば事故があのレベルを超えていたら、ほかならぬ自分たちの経営そのものがどうなっていたのかということをもっと真剣に考えてみろということになる。東京電力のみならず、ほかすべての電力会社然り、政府然り、石原のおとっつぁんほか政治家然り、あるいは市井の原発大好き人間然り……。

　決めつけては悪いけれど、電力会社経営陣にしろ巨大株主にしろ、あるいは政府にしろ、現実の原発事故の犠牲者（避難者や現場の作業従事者ら）に対しリアルな目線で臨むことはまずほとんどないだろう。ややもすれば故郷を失いかねず、それどころかいまを生きるのさえ（放射能汚染だけでなく短期・長期の収入問題などもある）ままならない可能性があることについて慮る能力もなく、あるのはいかにその金額を減らそうか（誤摩化そうか）という補償金の問題ぐらいなのに違いない。それどころか、その補償問題を他者に転嫁し、「そのためにも値上げさせろ」という恥知らずな論理。こういうのをなんと表現したらいいのだろう。

　繰り返すが、たかが１カ所数機の原発事故でもってあの経営危機なのである。たった１カ所の“中事故”でかくのごとき事態に陥るのである。わが国有数の巨大企業が、だ。政府や電力会社（裏には原発メーカーらも蠢いているのだろう）はそれでもなお再稼働させたがっているが、「他山の石」というありふれた発想をここではしなければならない。今回はいまのところ数千億。しかしつぎは国家予算規模になるかもしれない。いや、全国すべての廃炉（仮に再稼働があったとしても結果は同じ）にどれだけのカネが必要なのか。そのていどのお勉強ならあんたらにもできるんじゃないかと思うのだが。