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猫池罵詈雑言雑記帳
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 ネットで調べものをしていたらヘンな記事をみかけたので、その抱腹絶倒ぶりについて簡単に触れてみた。

「西洋人から見た日本人の13の特徴 (searchina)」(リンク切れご容赦)

 リンク記事はグレゴリー クラーク氏というオーストラリア人が日本人を観察した評に基づき、日本人のアイデンティティについてざっと紹介したものである。なにがどのように論評されているか。ひとつひとつの項目を挙げならその内容をみてみよう(カコミ内はいずれもリンク記事から引用)。ただし、念のため書き添えておくと、記事そのものがクラーク氏の論をきちんと咀嚼しておらず、要約するさいに本論とは異なる部分がことさらに強調されている可能性もある。その点を汲み取ったうえでお読みいただきたい。

1.過度な「群れ意識」を持ち、命令に従う習慣がある。日本人の行動は組織立っていて秩序的であり、その良いところは、皆が従順で統制が取りやすいところであるが、一旦、性質の悪い勢力が権力を握ると、全国民がそれに従ってしまう。その典型的な例が第二次世界大戦のときの外国への侵略である。

 大雑把な印象として、日本人に「群れ意識」があるということは氏に指摘されるまでもなく言われてきたことであろう。しかし、これは日本人ならではの特徴といえるだろうか? 「組織立っていて秩序的」なのは、むしろ欧米人とその社会のこそあてはまるとはいえまいか。リンク記事では、「群れ意識」と「従順」とを強引に結びつけたうえで外国への侵略の要因があると断じている。では、同じく「第二次世界大戦のときの」ドイツはどうだったか? ブッシュ政権下で翼賛化したアメリカ合州国はどうだったか? たとえば、7月29日づけ「東京新聞」朝刊にはアメリカ合州国議会における「420対1」の事例が紹介されているが(「筆洗」)。

2.個人間の関係は驚くほど誠実なものである。これについては、私自身、印象深い体験したことがある。大阪付近の小さな村の駅に無人の野菜売り場があった。袋に入った新鮮な野菜が置かれており、横に置いてある板切れには、1袋100円と書かれていた。誰も店番をしている人はいないため、箱にお金を入れるかどうかは、すべて買う人の良心に委ねられる。そして、日本では物を落としてしまっても慌てる必要はない。なぜなら、ものを拾ったら、一番近くの交番に届けるというのが日本の一般常識であるからだ。

 たったひとつの体験例を挙げて日本人全体を論じるセンスにも驚かれてるが、この挙げられた例が「個人間の関係は驚くほど誠実」ということの証明にどうしてなるというのだろう。たしかに、こうした無人売店できちんと支払うひとも少なくないだろうし、国や地域によっては成り立たないかもしれない。しかし、それは記事が言うような国民性だけに帰することができるのだろうか(経済的貧困の問題もからんでくるだろう)。「日本人」ならばこうしたときにドロボーやインチキをしないかどうか、ちょっとでも考えてみればわかるハズである。この場合、「買う人の良心に委ねられ」ているのは事実かもしれないが、ではそのほか圧倒的な数にのぼる商店は日本ではないのか。監視カメラだらけのコンビニはどうか。たとえば鉄道会社はキセルに悩まされ続けているが、あれは外国人だけの仕業なのか? 「日本では物を落としてしまっても慌てる必要はない」……せひそうあってもらいたいものである(笑)。

3.日本人は完ぺき主義者であり、極端なほど秩序にこだわる。日本人が秩序を守ることは、全世界が知るころである。世界の観光名所で、旗を持ったガイドの後ろで列を作って黙々と付いていく一塊の人がいたら、それは絶対日本人である。彼らの完ぺき主義を表わす典型的な例は、彼らのトイレの清潔さをどこまでも追い求めるところにあるのではないだろうか。日本のホテルの部屋はどれも大きくはないけれど、トイレのきれいさは有無を言わさず完璧である。良いホテルになると、高級な自動水洗トイレが付いている。この点に関しては詳しい説明は要らないだろう、使ったことのある人だったら、直ぐに分かるはずだ。

 日本人が完璧主義者であるとは寡聞にして知らなかった(笑)。わが郷土の生活語に「まっ、いいっぺ」ってのがあるが、どうやらここで暮らすのは日本人ではなかったようだ。まぁ、トイレの清掃を「典型的な例」とする完璧主義の論評など検分するにあたいしないが……。「世界の観光名所」とやらでヒツジよろしくついてゆくのが「絶対日本人である」というのは、記事の冒頭にあるような「蚊帳の外にいる人間」よりもむしろ日本人自身が錯覚していることではないだろうか。ガイドともに団体旅行を楽しむ中国人や台湾人の一行はあちらこちらでみかけるし、欧米人のそうした一群に遭遇したこともある。が、クラーク氏が「絶対」と断じているのだから、ありゃぁ日本人だったということのようだ。石原のおとっつぁんあたりが卒倒しそうな多民族国家に日本もなったようである。
「日本人が秩序を守ることは、全世界が知る」。全世界?


 そのほか、グレゴリー・クラーク氏は、「4.手作りが好きである」「5.チームワーク意識が強く、身内だけでやるような家族企業の管理に長けている」「6.外国のものには、開放的で、広く受け入れるのに対し、外国人に対しては排他的である」と指摘。3〜6の特徴は、日本の工業化が急激に進んだ要因であると考えている。

4:トヨタ自動車をはじめとする世界に名だたる巨大企業の生産現場をみよ。日本中で日々消費されている食品をみよ。
5:この傾向は、たとえばお隣・韓国でも濃厚にあるようだ。しかし、ほかの国や民族はこれと異なるのだろうか? アメリカ合州国や(クラーク氏が国籍を持つ?)オーストラリアなど侵略をきっかけとする一部“新興国”はいざしらず。
6:「外国のものには、開放的」。こと対欧米、もっといえばアメリカ合州国に対してのそれはありそうだ。敗戦後半世紀をとうにすぎてなお、主権の一部を差し出しているようなおめでたい国家はそうはないだろう。一方で、「外国人に対しては排他的」というのは、ひょっとしてクラーク氏ご自身が体験されたことなのだろうか。残念ながら、近隣国の中国や韓国に対して、あるいは在日韓国人・朝鮮人などに対する「排他的」な人間や組織はある。それはわれわれ日本人自身の問題として解決を目指さなければならないことではあるが、クラーク氏のいう「排他的」とは異なる可能性が高い。外国からの移民などに対する差別は、いうまでもなくドイツやフランス、イギリスなどヨーロッパ諸国にも顕在している。多数の民族が集まるアメリカ合州国での民族的差別はもとより、移民に対する差別の実態もある。クラーク氏の故郷・大英帝国などは民族のみならず宗教差別までいまなお顕在してはいまいか? したがって、氏の指摘は「日本人」だけの特徴でもなんでもないのだ。

 以下、続く。
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