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猫池罵詈雑言雑記帳
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 前回アップの後半について触れる。

「西洋人から見た日本人の13の特徴 (searchina)」(リンク切れご容赦)

 日本は島国で、集落文化を中心に発展してきたため、彼らの価値観は本能的であり、さらに言えば、感情的で現実的であると主張する。
 一方、中国は大陸文化で、長い間、周りとの衝突や接触を繰り返してきているため、価値観はより理性的だ。

 これまた前回の「3」で触れたように、むしろわれわれ日本人自身が錯覚を起こしがちな“日本人論”のひとつであろう。島国で暮らす民族が「本能的」で「感情的」で「現実的」になるというのもさっぱりわからないし、並べられた「的」そのものの定義が曖昧でなんら具体性がない。陸続きということもあって、中国が他国や多民族との「衝突や接触」が日本よりも起こりやすかったことはあろうが、一方の日本にしても中国や朝鮮との交易が古くからあり、近代の戦争以前にも朝鮮への侵略があり、元冦をはじめとする他民族からの侵略も経験してきた。日本列島内だけでみても、戦国時代はもとより、近代の西南戦争など衝突を繰り返してきた歴史がある。
 それにしても。「衝突や接触を繰り返して」くると「価値観」が「理性的」になるというのがまったくもってわからない(前回記したとおり、リンク記事そのものが本論をゆがめている可能性もあるが、クラーク氏が挙げた例や論をみるかぎり、氏のセンスの程度はこれと大同小異であろうことは推論できる)。

7.イデオロギーが軽薄で頼りない。これは日本の政治の世界で際立って見受けられる。真っ向から対立しているように見える自民党と民主党ではあるが、政治理念はほぼ同じだ。だからこそ、2006年に小泉純一郎元首相が郵政民営化を掲げて、選挙で劇的な勝利を手に入れることができたのである。

 残念ながら、自民党と民主党に対する見方そのものは間違っていないし、イデオロギーという面で「頼りな」く思えることはある。しかし、これまた「日本人」だからということで括れる問題でもないのだ。アメリカ合州国における民主党と共和党との違いはどうか? コイミズスネオがあのときの選挙で圧倒的勝利をおさめたことは事実だが、では前回「1」で指摘したブッシュ下のアメリカ合州国はどうだったのか。ナチスの台頭を許したドイツはどうだったのか。逆に、アメリカ合州国やその傀儡である自民党や官僚らの“努力”にも拘わらずギリギリのところで抵抗を続けている現代日本人はどうかのか。ちょっと古くは安保闘争があり、いままた基地問題で多数の行動が起こっている。昨年8月に圧倒的勝利をモノにした民主党政権は、わずか1年も経たないうちに弱体化しつつある。民意によって。

8.感情的で好戦的である。中国への侵略、どこまでも自制心が効かず、戦争を拡大させ、南京大虐殺という悲劇をも生んだことがいい証拠である。

 リンク記事が中国系であることもあり、これを主張したい気持ちは理解できる(しかし、とくにこの部分がクラーク氏がどのように論評しているのか興味がある)。わが国における中国への侵略は歴史的事実であり、いかに矮小化を謀ろうとも南京大虐殺はもとより、多数の罪なきひとびとに対する虐殺を重ねてきたことは否定できないからだ。これはなによりもわれわれ日本人と日本という国の将来のためにもきちんと向き合わなければならない問題であることはいうまでもない。
 が、これが本当にクラーク氏という「蚊屋の外」の人間からの指摘だとすれば、これもまた錯覚に基づく印象批評のひとつだといわざるをえないのだ。「感情的で好戦的」、外国や多民族に対する「侵略」、「自制心が効かず、戦争を拡大」がはたして「日本人」ならではの特徴といえるのだろうか。オレはむしろアメリカ合州国(しかも現在進行中だ!)や大英帝国をはじめとする欧米人にこそあてはまる特徴のような気がするし、日本は「南京大虐殺」を起こした一方で広島・長崎が原爆で焼き尽くされ、東京大空爆をはじめとする外国の軍隊による「大虐殺」を経験している(先住民を滅ぼし、あるいは極限までに虐殺して建国されたアメリカ合州国やオーストラリアはどうか? また、チベットに対する弾圧や天安門事件などをみれば、「好戦的」なのはむしろ現代中国の特徴のようにすら思えるが)。「南京」と同様に、それらは加害者側がいかに自己を正当化しようとも、事実そのものは否定できないのである。
 もちろん、それをもって日本の行為を免罪するつもりなどはないが、リンク記事の論の浅はかさに仰天するばかりである。

9.外交・経済政策において、戦略性に欠ける。クラーク氏は日本の外交ははっきりと定まった理念がなく、典型的な日和見主義であると主張。また、経済政策においても短絡的で、日本経済の10年にも及ぶ停滞を招いた主な原因もそこにある。

 これは「7」同様に、指摘どおりの面はあろう。オレ自身の見方では、戦略性云々よりもむしろ傀儡性を筆頭に挙げたいようにも思うが、しかしこれもまた「日本」および「日本人」だけに特化できるのかどうかについては検討を要する。

10.合理性に欠ける。例えば、日本には整った義務教育のシステムがあるにもかかわらず、大学教育となるとありきたりである。日本に合理主義というものは存在しない。周りの影響を受けずに、真に独立した考えができる知識人がいない。

「日本に合理主義というものは存在しない」は完全に意味不明(日本人は優れた数学者や物理学者を排出しているけれども)。続く「周りの影響を受けずに、真に独立した考えができる知識人がいない」も同様。後者については、「日本人」自身が錯覚を起こしがちな論であることだけを指摘しておきたい。

11.政府の力が弱く、派閥争いが目立つ。日本は中央政府がなくても、地方自治だけで十分賄えるとクラーク氏は言っている。

 リンク記事ではクラーク氏の論が省略されているのかもしれないが、「地方自治だけで十分賄える」の根拠が不明。「政府の力が弱」いのははたして事実だろうか? 「派閥争いが目立つ」のははたして「日本」独自の特徴か?

12.道徳観念は根本的に恥を重視し、罪悪感は重視されない。日本人は礼儀正しく、よく笑い、規律を守り、人に対して誠実であるにもかかわらず、過去の罪に対しては、目をそむけ真剣に向き合わない。その理由はこの道徳観にある。

「過去の罪に対しては、目をそむけ真剣に向き合わない」がはたして「日本人」に対しどこまであてまるのか、ちょっとでも考えればわかることである。これが自民党や民主党の主流や政府ということであり、かつこの記事を配信した中国(および周辺諸国)に対してということであれば、まったくのマト外れとまではいわない。しかし、この論でゆくと、オレを含め「日本人」でない日本人がそれ相応に存在することになってしまう(戦時中の対中国に限定しても)。一方で、原爆投下や東京大空爆をあくまで正当化している当時のパイロットや指導者らにみられるアメリカ人はきわめて「日本人」的であるということか……。
 また、「根本的に恥を重視」のくだりがあてはまらない「日本人」は例に事欠かないだろう。「規律を守り」は、たとえば交通マナーなどをみれば中国人などよりも平均的日本人のほうがはるかにきちんとしているが、ではさて欧米人はどうか。中国人は「規律を守」らないのか? ついでいえばこんなものは「道徳観」云々とはなんら関係がない。

13.日本人は法律が嫌いである。これに関しては、不思議がる人もいるだろう。なぜなら日本はアジアの中だけで考えても、法治国家に属する。グレゴリー・クラーク氏は、日本人は西洋人と比べて内々に事を解決することを好み、止む終えない場合だけ裁判を起こすのだと主張した。

 なにかにつけて訴訟を好むアメリカ合州国と比べれば、一面ではあてはまるかもしれないが、「止む終えない(ママ)場合だけ裁判を起こ」しているかどうかについては大いに疑問がある。たとえば某大手新聞社などが言論での対論を放棄したうえで起こした恫喝的訴訟にみられるようないくつかの類例はどうか。庶民同士の小さないざこざはいらしらず、裁判に訴え出る例はいくらでもある。
 一方で、法治国家でありながら、政治を動かす連中があれこれ言を並べては平気で破っている例はたしかにある(そもそも憲法自体を反故にしている面があるのだからなにをかいわんやだが、その裏に「日本人」ではない連中が蠢いているのも忘れてはなるまい)。しかし、これもまた「日本人」だけに特化できる例ではないのだ。一例を挙げれば、韓国ではクルマの人身事故にさいしてさえも警察を介入させないというセンスがある(人づてに知る以外にもオレ自身が経験した)。では、中国はどうか。ベトナムはどうか。パラグアイはどうか。コンゴではどうか。一方では、法廷モノなどのドラマや小説が日本には少なくないが、それらは「法律が嫌い」だから受け入れられるとてもいいたいのだろうか?

 とどのつまり、この記事は乱暴な観察のみによる印象批評にすぎないのだ。同種のペテン書にイザヤ ベンダサンの迷著『日本人とユダヤ人』があるが、まさか実在の現代欧米人がこんな子どもじみた論評を発しているとは思わなかった(じつはクラーク氏そのものが架空の人物なのではないかと疑ったくらいだ)。件の『日本人とユダヤ人』は日本で大ヒットしたのと裏腹に、英訳が出版されたアメリカ合州国では一顧だにされなかったという。あんなペテン本に騙されるのは「日本人」ぐらいですよというわけだ。したがって、ごく大雑把な印象批評では、クラーク氏ら欧米人のほうがより「論理的」でペテン体質などとは無縁なように感じていないでもないが、なにごとにも例外があるということか(笑)。もとより間違いであろうとウソであろうと「主張」するのが自由ではあるが。

 リンク記事にはこうもある。

 これらの特徴に対して、中国人は日本人の間逆であると言うことだ。

『日本人とユダヤ人』では、日本人と諸外国人とを(ウソで塗り固めた論で)比較しつつ、日本人の優位性などを説いて多くの日本人読者をイイ気持ちにさせたのだろうが、これもまた同列の記事のようである。この点だけをみれば、あるいはこんなシロモノが多数の中国人に受け入れられているとすれば、日本人と中国人もまた似た者同士ということか(中国人といっても多数の民族に及ぶし、十数億の人間をそんなお粗末な観察で括れるハズがないのだが)。
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