小笠原諸島が世界遺産に登録される見込みだという。さらに当然のなりゆき(?)として、地元やら石原慎太郎やらがウレシがっているというニュースもネットでみかけた。簡単にいえば「うぎゃぁ!」と叫びたくなり、「ぁあ、またか……」と一部人間のセンスに悲しくなった。
どういうことか?
人類共通の遺産として国際的規模で保存を優先されるとか、さまざまに(資金を含む)保護に向けて力が注がれるというのなら、それがユネスコの標榜する「世界遺産」というのであれば諸手を挙げて大歓迎である。あるいは、そういう前提のもとに歓迎したり指定に向けて立候補したいという意見についてはもちろん同意できる。だが現実はどうか? 当ブログでもなんどか取り上げてきたが、世界遺産というブランドが、すなわち観光資源とだけに捉えられてはいまいか? 「日刊ゲンダイ」のネット配信(5月13日)によれば、石原やら一部の連中は「東京初の快挙」だの「世界にアピールできる」だのと騒ぎ立てているらしい。「世界にアピール」とはなにをアピールしたいのかと思うが、ようは世界遺産のブランドにブラさがってカネモウケできるという皮算用ではないのか。
同紙によれば、地元島民からは「大ブーイング」が発せられているという。すなわち「世界遺産となればチャーター船も出航し、客は一気に増えるでしょう。自然も荒らされるし、リゾート開発も進む(中略)20年前、クジラが見学できるというので一時“バブル状態”になりましたが、その騒ぎがまた来るかと思うとホント頭が痛い」である。コメントしたひとによれば、指定を喜んでいるのは「一部の飲食店と土産屋だけ」だというが、ようは観光を生活の糧にしているひとびとということであろう。大いに考えられることである。
当ブログでは以前に白神山地を訪問したさいの感想をアップしたことがあるが、ほかに屋久島や五箇山などでもほぼ同様の所感を抱いたものだ。同記事にも触れられているが、白川郷の荒れ具合には呆然とされられたし、五箇山にいたっては(まだブランド化以前時代の)学生のころからたびたび訪れていたこともあり、その堕落ぶりにショックを受けて、以後脚を運ばなくなってしまったほどだ。やや乱暴な単純化かもしれないが、いずれも世界遺産というブランドに右往左往をする主体性に乏しい観光客とそれをカモしている観光業界という図式がそこにはある(念のため断っておくが、ここに挙げた土地はなにも世界遺産だから訪問したワケではなく、それどころか指定以前の時代にかかっている)。
とはいえ、世界遺産に指定された土地や物件はいずれも価値の高いものであり、ぜひ訪問してみたいと思わせるところも少なくない。あるいはブランド化によってはじめてその存在を知り、でかけてみたいと思うひとも多いに違いない。そういう自然な興味までをオカシなものと切り捨てるつもりはない。あくまで問題としたいのはブランドありきというセンスであり、本来は保護されるべき対象を観光資源としかみることのできない連中についてなのである。これが「文化遺産」ならまだしも(人間がつくりあげた物件ゆえ)、「自然遺産」を相手にして皮算用している連中の卑しいセンスこそ唾棄すべきものであろう。だが、むしろ本来の精神(があればだが)に則るのであれば、観光業者や建設業者らは悲鳴を挙げて然るべきではないのか。世界遺産なんぞに登録されてしまったら観光開発だろうがカネのなる公共工事やらもできなくなってしまう。そんなの勘弁してくれ! そうならなきゃオカシイんじゃないかと思うんだがなぁ……?
はたせるかな、ほかの世界遺産でみられるように、ごく限定された当該地域については形だけ保護する一方で、境界線の外については資本のほしいままに蹂躙されてゆくのであろう。巨大ホテル、遊覧施設、大深度掘削温泉、高規格道路、大型港湾、飛行場……。これで連想したのは、たとえば本多勝一氏の『アメリカ合州国』(朝日文庫ほか)などで報告されているアメリカ合州国における先住民の“保留地”である。ワシントン政権にとって利用価値のない土地を先住民に強制し、一方的に境界線を定めてしまう。ところが地下資源の類の発見などで利用価値が出てくるや、それすら反故にされるわけだが、問題はこの境界線の中と外だ。世界遺産問題にあてはめれば、境界線内のわずかな空間だけは保護するけれど、ちょっとでも外れていさいすれば好きに破壊できるという筋書きになる。
新たな環境破壊の引き金。残念ながら「世界遺産」登録とは、そのように捉えざるをえないようである。諸外国ではいざ知らず。
人類共通の遺産として国際的規模で保存を優先されるとか、さまざまに(資金を含む)保護に向けて力が注がれるというのなら、それがユネスコの標榜する「世界遺産」というのであれば諸手を挙げて大歓迎である。あるいは、そういう前提のもとに歓迎したり指定に向けて立候補したいという意見についてはもちろん同意できる。だが現実はどうか? 当ブログでもなんどか取り上げてきたが、世界遺産というブランドが、すなわち観光資源とだけに捉えられてはいまいか? 「日刊ゲンダイ」のネット配信(5月13日)によれば、石原やら一部の連中は「東京初の快挙」だの「世界にアピールできる」だのと騒ぎ立てているらしい。「世界にアピール」とはなにをアピールしたいのかと思うが、ようは世界遺産のブランドにブラさがってカネモウケできるという皮算用ではないのか。
同紙によれば、地元島民からは「大ブーイング」が発せられているという。すなわち「世界遺産となればチャーター船も出航し、客は一気に増えるでしょう。自然も荒らされるし、リゾート開発も進む(中略)20年前、クジラが見学できるというので一時“バブル状態”になりましたが、その騒ぎがまた来るかと思うとホント頭が痛い」である。コメントしたひとによれば、指定を喜んでいるのは「一部の飲食店と土産屋だけ」だというが、ようは観光を生活の糧にしているひとびとということであろう。大いに考えられることである。
当ブログでは以前に白神山地を訪問したさいの感想をアップしたことがあるが、ほかに屋久島や五箇山などでもほぼ同様の所感を抱いたものだ。同記事にも触れられているが、白川郷の荒れ具合には呆然とされられたし、五箇山にいたっては(まだブランド化以前時代の)学生のころからたびたび訪れていたこともあり、その堕落ぶりにショックを受けて、以後脚を運ばなくなってしまったほどだ。やや乱暴な単純化かもしれないが、いずれも世界遺産というブランドに右往左往をする主体性に乏しい観光客とそれをカモしている観光業界という図式がそこにはある(念のため断っておくが、ここに挙げた土地はなにも世界遺産だから訪問したワケではなく、それどころか指定以前の時代にかかっている)。
とはいえ、世界遺産に指定された土地や物件はいずれも価値の高いものであり、ぜひ訪問してみたいと思わせるところも少なくない。あるいはブランド化によってはじめてその存在を知り、でかけてみたいと思うひとも多いに違いない。そういう自然な興味までをオカシなものと切り捨てるつもりはない。あくまで問題としたいのはブランドありきというセンスであり、本来は保護されるべき対象を観光資源としかみることのできない連中についてなのである。これが「文化遺産」ならまだしも(人間がつくりあげた物件ゆえ)、「自然遺産」を相手にして皮算用している連中の卑しいセンスこそ唾棄すべきものであろう。だが、むしろ本来の精神(があればだが)に則るのであれば、観光業者や建設業者らは悲鳴を挙げて然るべきではないのか。世界遺産なんぞに登録されてしまったら観光開発だろうがカネのなる公共工事やらもできなくなってしまう。そんなの勘弁してくれ! そうならなきゃオカシイんじゃないかと思うんだがなぁ……?
はたせるかな、ほかの世界遺産でみられるように、ごく限定された当該地域については形だけ保護する一方で、境界線の外については資本のほしいままに蹂躙されてゆくのであろう。巨大ホテル、遊覧施設、大深度掘削温泉、高規格道路、大型港湾、飛行場……。これで連想したのは、たとえば本多勝一氏の『アメリカ合州国』(朝日文庫ほか)などで報告されているアメリカ合州国における先住民の“保留地”である。ワシントン政権にとって利用価値のない土地を先住民に強制し、一方的に境界線を定めてしまう。ところが地下資源の類の発見などで利用価値が出てくるや、それすら反故にされるわけだが、問題はこの境界線の中と外だ。世界遺産問題にあてはめれば、境界線内のわずかな空間だけは保護するけれど、ちょっとでも外れていさいすれば好きに破壊できるという筋書きになる。
新たな環境破壊の引き金。残念ながら「世界遺産」登録とは、そのように捉えざるをえないようである。諸外国ではいざ知らず。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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