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猫池罵詈雑言雑記帳
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 部外者にとっては怪し気としか感じられない宗教団体というのは少なくない。ましてや、「病気が治る」だのなんだのと喧伝されていると、ついつい信じたくなるひとの気持ちはわからないではないにせよ、冷静にみればよほど悪質な商売だとも思いたくなる。
 宗教法人・紀元会で起きた信者殺人事件は、事件と宗教とのつながりについてはわからないが、少なくとも世間を無気味がらせるには十分なできごとであった。オレはよく思うのだが、オヤや先祖から代々引き継がれてきた信仰の類はとにかくとして、世間的にはアヤシイと思われがちの宗教が、なぜかくも信者を集められるのだろうかが不思議でならないのである。おそらく、そこで生じる人間関係に魅力を感じることもあるだろうし、なんらかのきっかけで教祖にハマってしまうひともいるのであろうが、いまひとつの理由としては「なにかにすがりたい」という気持ちもあるのではないかと思う(ここでいう“なにか”にはさまざまな意味がある)。なんでも、同会の目玉アイテムが「紀元水」と呼んでいる水らしく、これがまさに「病気が治る」をという触れ込みだというのだから、まずはそのあたりにすがり、次第にのめり込んでいった信者が少なくないのではないかという気がする。 


 じつは、こうした水や水に限らず過度とも思える内容で健康を謳った商品や商売にはかねてから疑問を持ってきている。自分の仕事上にも関連する分野では温泉があるが、入浴にせよ飲用にせよ、温泉がある種の症状に効果を表わすことは間違いがないようで、現にアトピー性皮膚炎の改善などのエピソードをいくつも聞いており、それはそれで試してみる価値のあるのもだと考える(ヨーロッパでは飲泉は医療的に用いられている。さまざまな成分を含む天然のミネラル水と考えてもいい)。しかし、なかにはそうした事実をやたらに増幅し喧伝したがるひともいて、具体的な言及は避けるけれど、某温泉宿で「こんなことを堂々と書いて、大丈夫なんかいな?」と絶句させられたこともある。オレ自身もある飲用温泉水を飲んで「なんとなくよさそうだな」ぐらいに感じたことはあるし、実際に愛用しているひとが「●●がよくなった!」と実感しているのであればそれはそれであろう。だが、メディアの扱いを含めて、やはり節度のある説明というものを怠ると、いずれ疑惑の目が向けられかねないような気もするのだ。

 こうした“水商売”は形はさまざまにせよ広範にあり、おそらく件の宗教団体にもそれに近い実態があったのではないかと思う。しかし、健康に効果があるだとか、からだにいいといったことの証明は難しく、消費者側としてはとりわけ大袈裟と思われる効能を謳うものなどについて冷静な視線を向けることが必要であろう。もちろん、こんな事件をきっかけとして、逆に過度のフィルターがかけられないことも望みたいものだが。

 ところで、この宗教団体の事件では複数の逮捕者が出ているわけだが、ついつい比較してみたくなるのが相撲部屋殺人事件であろう。宗教団体のほうはとにかくとして、首謀者の時津風親方(前)がなぜ逮捕・拘留されないのかがさっぱり理解できないと思っているひとは多いらしく、検索サイトで調べてみたら山ほどそんなブログの類があった。密室で集団暴行。被害者の死。隠蔽工作・・・。場所が単に名門の相撲部屋と“アヤシげな”宗教団体との違いというだけで、両者の経過は極めて似ている。むしろ社会的な衝撃度、影響でいえば相撲部屋のほうがより多大である。かただかビラ配りぐらいで長期間に及ぶ拘留すらする警察の、これは説明のしづらい矛盾といっていい。このふたつの事件がこんごどのような経過をたどるか、要注目といったところであろう。



■世界ユーモア遺産
 今回はもうひとつ。
 かねがね疑問を抱いているモノのひとつに世界遺産というのがある。いや、“胴元”のユネスコは高邁な理想を持って臨んでいる大事業なのかもしれないが、少なくともわが国での現状をみると「世界遺産っていったいなんなの?」とクビをかしげざるをえないこともままある。
 ひとつには、というか疑問に思う最大の理由が、世界遺産イコール観光資源にされているところである。むろん観光を含めた開発の類にはさまざまな制限が加わっているのだろうけれど、単に世界遺産との冠がつくだけでこぞって商品を売り出す旅行代理店と飛びつく客。さらに本当の価値さえ触れずに便乗したがるマスメディア。もちろん、オレ自身だって国内外で指定された場所には興味を惹いているところも少なくないし、それはそれで保存することには大いに価値があると思う。が、現状ではたとえ核心部は保存されたとしても規制の網から外れた周辺地域が荒らされることもあるし、そうでなくともそんなところに大型観光バスの類が大挙して押し掛けるなんて図をみせられると心底ゾっとさせられるというものだ。
 小さな一例を挙げれば、そんな世界遺産などとは関係を持っていなかったころの五箇山にはよく通ったものであった。当時はまだ秘境の趣も残され、ひとの往来もそれほどではなかった。たしかに観光バスの姿などもみられたけれど、それらは白川郷を主役としたツアーが大半であり、五箇山そのものはたいていは静かな散策が楽しめたものである。ところどころに“みどころ”として点在する場所もそれほど観光地然としておらず、そんなところが大いに好もしく感じられたのである(五箇山への愛着をおたわむれゲームにしたこともある)。ところが、東海北陸道の延伸と世界遺産への登録などを背景とし、さらに幾多の観光施設が建設されるにあたって、秘境・五箇山は単なるテーマパーク的観光地へと堕落させられてしまったのである。もちろん看板目当てにやってくる層に荒らされていない部分も多々あるのだが、それでもかつての雰囲気からはだいぶ乖離がある。

 だいたい、五箇山に限らず世界遺産とやらの大方の訪問者にとって、そこが世界遺産のタイトルホルダーであること以外にどれだけの価値があるというのだろうか? たしかにそこも素晴らしく感じていいけれど、そんな他人からの価値観の押しつけの類に頼ることなく、もっと自分の感性でものごとを判断できないものかと思う(これは「百名山」の類に踊らされることにも通ずる)。まぁ、そんなタイトルに惹かれつつ“感動”をやらを味わうのもいいかもしれないが、スタンプラリーよろしく世界遺産の旅なんてのは、どうにも感心できないのである。

 で、まだ雑報でしか知らないが、富士山が世界文化遺産の暫定リスト入りをしており、それに関連して富士五湖を含めるかどうかというなかで対立があるという。
 なんでも河口湖町の観光業者らが登録に伴う規制について懸念を示しているというのだが、しかしこれはきわめて正常な感覚というものであろう。ブラックユーモアではあるが、「そうそうそうそう」と思わずヒザを叩いたものである。現状のわが国でのセンスをみれば、観光業者と世界遺産指定とは対立すべきものなのだ。
 が、そんな観光業者の心配もさることながら、富士五湖が世界遺産入りをするなんていうのこともまた、とんだブラックユーモアといえるのではないか? たとえ「文化」のほうであったとしても、だ。
 その理由のひとつに、生態系の問題がある。いうまでもなくブラックバスをはじめとして放流されてきた魚だ。むろんバスだけでなくブラウントラウトやヘラブナ、ワカサギなどについても同様のことがいえるが、とりわけブラックバスに関してはすでに法規制がかけられ、河口湖などが例外的にレジャーとしての利用を認められているにすぎない問題種である。そんな状態の湖が世界遺産? バカ言っちゃいけない(同様のことは他の地域にも可能性がある)。本来は素晴らしい湖群のハズなのに、ごく一部のひとびとによって釣り堀同然に扱われている哀れな湖。本体の富士山と関連する歴史的な意味合いはさておいて、はたしてどれだけの文化的価値があるというのか。外来文化のマネごとをネタにしたカネ儲けはあっても……。
 いまのままでは世界中の幾多の世界遺産たちから抗議の声すら挙がりそうなものだ。もっとも、世界遺産入りを目指して、本格的な生態系復旧をはかる・・・なんていう事態は期待しないでもありませんがね。

 案外、富士五湖で起きている問題は、世界遺産についてもっと深く考えるためのいいきっかけになるかもしれない。



*おまけ:
 河口湖町の一部で反発が起こっている背景のひとつには、観光客がそんな世界遺産などとは関係のない層が多いということがあるのではないだろうか。たとえば釣り客などはそれにあてはまりそうだ(笑)。自然や文化ではなく、よりたくさんの魚を釣ることにのみ興味を持つひとびとが。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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