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猫池罵詈雑言雑記帳
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「う〜〜ん……」
 思わず唸ってしまった。
 10月7日朝のネット配信。「沖縄教科書抗議集会 参加者は「4万人強」 「11万人」独り歩き」は、記事を読み進めても結局なにが言いたいのかがいまひとつよくわからないのである。記事そのものは9月29日に沖縄県宜野湾市で開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加人数について述べたもので、見出しから窺えるように、主催者発表の数字をモトにコトを進めるなというところのようなのだが……。


 集会はご周知のとおり沖縄で起きた民間人を含む集団自決事件にさいして、日本軍が強制したという記述を教科書から削除した検定について撤回を求めたものだ。「朝日新聞」や「東京新聞」などでは翌朝刊の1面トップ、「毎日新聞」も1面で伝えたが、とうの「産経新聞」は雑報と大差のない扱いであったから、その後の国会などの動きをみていると、こうした反応が出てくるのはさもありなんというところであろう。しかし、この「産経」の記事はいったいなにが言いたいのであろうか? リードに「渡海紀三朗文部科学相は参加者数を主な理由に対応策を検討、国会でも誇張された11万人という数字をもとに論争が進んでいる。」とあることから、件の教科書検定が集会によって覆されかねないことに対して不満があることがみてとれなくもない。

 記事の拾い読みをしてみよう。
 まず、主催者発表の数字について「大きく下回っていたことが明らかになった」その根拠のひとつとして、「集会が開かれた海浜公園の多目的広場は約2万5000平方メートル。仮に会場に入りきれなかった人を1万人と見積もれば、1平方メートル当たり4人いた計算になるが、多くの参加者は座っていた」とあり、だから主催者発表の数字は過大だということにつなげている。ご丁寧なことに会場を東京ドームと比較して「約2つ分」としたうえで、ドームでは「グラウンド部分を含めても最大5万5000人しか収容できない」とのただし書きをつけている。しかし、これでは「大きく下回っていたことが明らかになった」とならないのは言うまでもないだろう。会場に入れなかった1万人というのが同紙独自と思われる推定であって、こんなものはまずもって前提に入れられっこない(たとえ実際にこの数字に近い人数がいたとしても、そんなものは偶然にすぎないだろう)。また、こんな揚げ足取りはホントはしたくないけれど、「1平方メートル当たり4人」なんていうのは多人数が集まる場所では別段珍しいものでもなんでもない。むろん満員電車のような状況は別モノだが、お祭りや類似の催し(人気バンドが出演するライブハウスなどもなかなかの雑踏だし、9月にでかけた「あつぎ鮎まつり」会場でのCKBライブでは4人どころか6〜7人はひしめいていたんじゃないか?)では常にあり得ることである。なにも丸1日いろというわけではないのだ。短時間の催しでそんなに不思議がる数字ではないし、これは同紙もそう思ったのかどうか、「多くの参加者は座っていた」(だから4人/1㎡はオカシイ)と書き加える念の入れようであるところが微笑ましい(もっともこれが事実かどうかまではわかりませんがね)。

 で、これだけではさすがに論拠不足と思ったのであろう。どうにかして主催者以外からの人数発表を知りたいと動いたようで、同紙は沖縄県警を頼っている。しかし、「沖縄県警は、参加者の概数を把握しているが、「警察活動の必要な範囲で実態把握を行っているが、発表する必要はない」(警備部)として、公式発表を控えている。」として念願は果たせず。そして「警察が発表を控えた結果、主催者発表の11万人という数字があたかも事実のように独り歩きし始めた。」としてしまうのだからその慌てぶりが気の毒にすら思えてくるというものだ(警察の把握している数字──これだって実数かどうかは判断のしようがない──が主催者のそれと大差なかったりしたらどうするんだろう?)。しかもご丁寧にも警察が数字を公表しない理由を記してあるが、これもまた同紙の推測にすぎないことに注目してもいい(「12年前の県民大会参加者数を主催者発表より2万7000人少ない5万8000人と公表、「主催者から激しくクレームをつけられた」(関係筋)経緯があるからだ。」)。同紙の目には沖縄県警はさぞや弱腰に映ったことでしょうにゃぁ。もとより、ソースをぼかしにぼかした「関係筋」のお話とやらを紹介したにすぎないんでしょうがね。

 記事はここで若干目先を変え、「主催者発表の注釈を抜いて報道した」という「朝日新聞」に攻撃の鉾先を向ける。もっともよくわからないまま尻切れトンボに終わっているが。

 つぎに県民大会に臨む段階での沖縄の状況について独自の解説を展開。会場までのバスを無料としたり、県高野連の動きなどを挙げて「大会参加は県民の義務ともいえる雰囲気が醸成されていった。」とする。国の動きに異論を唱える地元メディアも槍玉に挙げつつ、選挙に影響しかねないと怯える日和見自民党の諸君を弁護する始末である。そして、そのくだりに引用されている小渡亨県議(自民)のコメントがこれまた秀逸なんだにゃぁ。
『「(11万人という主催者発表は)非常に問題だ。こういった問題で『これは違うだろう』というと、沖縄では“非県民”になりかねない雰囲気だ。戦前の大政翼賛会と同じだ」と危機感を募らせている。』  というのだが、こういう前提のもと実際には主催者発表と異なり同紙が主張する4万人ていどだったというのであれば、むしろ「あえて」参加しなかったひとびとをほめておやりなさい。県民137万人のうち、この御仁が宣う“非県民”は産経筋がこだわる主催者発表によっても126万人、ことによったら133万人にものぼってしまうのだから、これはたいへんなことであろう。したがって、これをもって「大政翼賛会と同じ」というのは同紙が否定したがっている主催者発表どころでない誇張というものだ。そもそもが、終戦前にこんなことが許されたわけはなく、たとえの問題としても「戦前の大政翼賛会と同じ」というのがありえるわけはないし、こんなのが“戦前の大政翼賛”の復活を望むとしか思えない自民党の議員の発言ということを兼ね合わせると、そのお粗末さに仰天させられる類の笑い話になるだけだ。

 じつは、この沖縄をめぐる教科書検定問題について口を挟むつもりはまったくなかった。なにが事実か? そしてその事実に対してどのように向き合うか? 極論すればそれだけだからである。そして事実は辛くも生き延びたひとびとの証言によって伝えられている。むろんなかには軍人から直に自決を命令されていないにも関わらず命を絶ったひともあろう。だがそうせざるをえなかった背景とはなんなのか(前段の小渡亨氏のコメント参照。本人はひょっとしてブラックユーモアのつもりなのか?)。そうした一切合切に目をつぶれといわんがごとく教科書の書き換えを事実上強制するからこそ、問題がややこしくみえるだけであって、問題の根幹はいままさにこの日本という国家がどこに向かっているのかというところであろう。事実は事実としてあり、沖縄のひとびとはそれさえも認めない一部の層に対して抗議の声を挙げた。もっといえば、同記事では11万人という数字の重みを一見強調しているが、じつはこれが同紙が主張する4万人強であったとしても問題の本質にはなんら影響がないのだ。それをさも外国(たとえば「産経」が忌み嫌っている中国など)から言い掛かりをつけられたかのごとく「おまえらの言う数字はおかしい」とイチャモンをつけてなにがしたいのであろう。「だからおまえらの主張も誤りなのだ」という詭弁に直結していないことを同じ日本人として祈りたいものだが。

 ところで、ここで取り上げた「産経」の記事は、どうも「朝日新聞」を罵倒するという意味もあったようである。
「J-CASTニュース」は「沖縄集会「11万人」報道 朝日・産経「紙上罵倒」合戦」との見出しで両社の言い争いについて触れている。記事によれば、「産経」の主張は「主催者発表の数字にはその旨を明記せよ」ということのようだ。そんなものは「朝日」のほうとしても「はいはいそうですね」とでもあしらっておけばよかったものを、部分的にせよ相手の歩調に合わせてしまったのだからひとがいい。しかし、「朝日」が指摘するように、「産経」の批判は「意味不明の批判」であり、実際に読んでみても「だからどうしたのだ?」としか思えないのである。
 しかし気をつけるべき部分はある。この「産経」の論法(?)たるや南京大虐殺を否定する側のそれと大差なくはないだろうか? 現れた数字を否定し、ことさら少ない数字を挙げてみて、「だから大虐殺はウソだ」というアレだ(「拝復 朝日新聞論説委員さま」なんていう書き出しは、南京大虐殺否定の先鋒だったイザヤ=ベンダサンこと故・山本七平氏のごとしですにゃぁ)。原爆の被害者数についても似たような詭弁がまかりとおっていますね。いや、そんな“高級な”レベルでもないかもしれない。主催者発表の11万人を否定する「産経」が「実際の参加者」として挙げている「最大で4万3000人」という数字はいったいなにを根拠にしてるのか(いちおう「県警幹部」などの証言があったとしているが、それともって「実際の」とすることはできるハズもない。これは「(内密の)県警幹部見解」ほかである)。「実際」としながら「最大」でなんぼとしているあたりにも揚げ足取りはできるけれど、「産経」が「朝日」(というか実際に鉾先が向けられているのは主催者側であろう)を揶揄して言う「どう数えれば11万人にもなるのでしょう」というのはそのままお返ししてやればいい。「事実の確認だけはくれぐれもお忘れなく」(産経)なんていうのが都合のいい事実しか認めない輩から飛び出してくると、批判する以前に腹の皮がよじれて戦意すら消失してしまうというものだ。  



*おまけ:
 ついでに言うと、個人的には「産経新聞」はある意味で評価しているのだ。メディアというのはなんらかの立場に則っているものだが、大半がそれをオブラートで包んでいるか薄めてみせている。したがってその正体を知らずに新聞や雑誌を読まされるようなことも少なくないのではないかと思うのだが、その点「産経」はあからさまに自社の見解と立場とを表明していて清々しい(俎上に挙げられた沖縄の大会を当初は雑報的扱いにしたあたりもあっぱれ!)。この点はオレは素晴らしいのではないかと皮肉ではなく思っているのだけれど、今回のモノを含めて、もっと逆の意味で「う〜〜〜ん……」と唸らざるをえないような記事を期待したいものである。
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 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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