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猫池罵詈雑言雑記帳
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 ちょっとした気紛れでドイツのひとり旅にでかけてきた。仕事抜きののんびりとした小旅行である。ことのほかリラックスした気分で過ごせ、タマにはでかけてみるものだと思ったものだ。
 もちろん、仕事柄どうしてもなんらかのヒントを得たいという目的はあったし、いろいろな意味で収穫があった。もとより、ほんの数日の物見遊山であれこれ語ろうとも思わないのでカタイ話は避けるが、簡単な“ヨタ噺”は姉妹ブログのほうにアップしているので、ご笑覧いただければ幸いです。

 ところで、物見遊山とはいえ、ささやかながら“取材”を目的としている部分があった。
 今回は航空券の値段や馴れなどを勘案してアシアナ航空を利用した。成田から仁川で乗継ぎながらフランクフルトに向かうルートである。じつは、この仁川国際空港での乗継ぎ(トランジット)を体験しておきたいというのが、目的のひとつであったのだ。
 同空港はアジアのハブとして発展が著しく、日本からの旅客がヨーロッパや中国、北米などに向かうさいに経由地として利用するケースも増えているという。韓国取材を続けていることもあってなんどか利用しているが、非常に明朗な空港で、導線や案内、付帯施設などどれをとっても成田などまったく敵でないという印象すら抱かされてきた(当ブログでも以前に触れたことがある「暗い玄関の巻」)。世界各地を回っている友人も「ここはいい空港だねぇ……」と感心していたほどだったが、ようは、そういう空港が力を入れているという乗継ぎを瞥見してみようと考えたわけである。

 結論から言って失望した。失望が大袈裟ならば、大いなる改善を求めたいといったところか。
 乗継ぎにさいして手荷物検査がある。成田でいちど受けているので二度目だが、これは国際的なきまりなのだろうから別段構わない。ちょっと感心したのは、成田からの飛行機を降りてすぐのところに検査場があり、そこを通過してエスカレーターを昇ったところが乗継ぎ便の待合い場だったことである。これは行き帰りとも同様であった。ほかの空港がどうなっているかわからないが、うまく運用するなぁと思ったものだ(ただし、その案内が十全でなく、若干ウロウロさせられた。せっかくのキメの細かい導線なのだが)。
 だが、検査場は極めて狭く、1本のレーンしかないため状況によってはここで行列を強いられてしまう。今回、往路の乗継ぎ時間はおよそ1時間(搭乗開始まで30分ていど。ただし当日は後の便の遅れが予めわかっており、十分すぎるほどに余裕があった)。航空会社としても遅延に気を使わざるをえないだろうと思うのだが、通路にまで大きく延びる行列には正直ヘキエキとさせられた。そしてその先に待っていたのが、若い男性検査係員の命令口調である。ひとり前の初老の紳士などはあからさまに不快な表情を浮かべていたが、「これはここに置け!」の類(英語だが、きちんとした会話ではなく、単語の羅列によっていた)とキツイ身ぶりに気分をよくするひとがいるとはまず思えない(*注)。
 自分の番。荷物は通常の例にならってふたつのカゴに分けて入れておいたが、コートのぶんが足らなかったので手に持ったままでいたところ、液体物入りのカゴを指して「コート ヒァー!」という。そんなことはふつうはありえないので、韓国語で「ヨギソ!?(ここにか?)」と訊くと、面倒臭そうな顔をして検査台の脇にあった別のカゴをひったくってよこす。やれやれ……。帰路はここまでぶっきらぼうではなかったけれど、じめっとした雰囲気はまったく同じ(まぁ、係員との巡り合わせにすぎないとも思うのだが)。これではこの空港に対する褒め言葉も少し考え直さねば(笑)。

 もっとも、世界津々浦々の空港など、案外こんなものかもしれない。友人に以前聞かされた話では、パリのシャルルドゴール空港などは、トランジットスペースにトイレすらなく、夜明け前に到着して乗継ぎを待ったさい、その場の状態は据えたニオイのこもったゴロ寝広場といった風情だったという。だが、仁川空港が名実ともに東アジアのハブを目指すのであれば、スペースの拡充を含め改善を進めてゆく必要があるだろうとも思う。

 まぁ、ようは「快適な公共交通とはなにか?」ということをあらためて考えさせられたということではある。これは、仁川での乗継ぎを含め数日間のドイツ散歩から得られたテーマでもあり、そういう意味でも充実した小旅行だった。


*注:
 あくまで個人的な観察にすぎないけれど、韓国人のなかには、英会話において「ていねい」な用法があまり得意でないひとが多いような気がしている。ただひとこと「プリーズ」を添えればいいだけのところを「ストップ!」とか「ウェイ アウト!」とか「ウェイト!」とただぶっきらぼうに言い放ってしまうケースに多々遭遇しているからだ(外国人客の多いそれ相応のホテルや大駅の窓口などではそんなことはないが)。もちろん、だからといって悪意があるわけでないことは百も承知なのではあるけれど、国際空港でのそれはやはり問題があるのではないか? こんなつまらないことでミソをつけないためにも、改善を期待したいと思う。

*おまけ:
 ところで、飛行機のなかで読もうと思って、藤原新也の『渋谷』を持参した。映画の単館上映が告知されており、そういや読んだことがないなと思って買ったものだが、これがすこぶるよかった。いや、ヤバイ。飛行機のなかで感情がこぼれるのを我慢するというのも辛いものである。で、帰国後に映画をみに繰り出そうと思っていたのを、できればこういうのは他人のいないところでひそかに鑑賞したいと考え直したけれど、そうするまでもなくすでに上映が終わってしまっていたのがショックだった……。これじゃなんのことかわからないと思うけれど、オススメの1冊でございます。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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