しかし、もっと大きな騒ぎになっているのかと思いきや、少なくとも表面上では静かなものだ。仁川空港到着が投票前日の午後、そのままソウル市街で宿泊したが、あいにくといおうか街宣車などにも行き会わず、テレビや街頭売りの新聞見出しなどをみなければ、いつもと変わらないのである。もとより、ほんの瞥見での範疇であり、それならば日本のそれとだって大差がないのかもしれないが。
今回の選挙。いくつかの報道によれば与野党が拮抗、とりわけ韓米FTP問題などの争点次第で逆転の可能性すら取り沙汰されていた。結果はご存じのとおり与党のセヌリ党が勝利を収めたワケだが、当日夜の選挙速報番組をテレビでみていて、ちょっと興味を持った現象がある。
ごく大雑把にいえば、与野党勢力が地域集団ごとに顕著。すなわち、慶尚道(南東部)と江原道(北東部)はほぼ全選挙区で与党が勝利をモノにしたのに対し、全羅道(南西部)と済州道(済州島)では逆に野党側が席巻する結果となったのである。ソウル特別市や京義道(首都圏)では半々に近い勢力図を描いていたが、いかに小選挙区制度にあるとはいえ、かなり極端な構図といえるのではないだろうか。
ちなみにいえば、ソウルを含む首都および首都圏では、核心部で野党優勢であり、外縁部になると与党一色。このあたりの現象は日本のそれにも相通ずるものがあるかもしれない。与党が圧倒した慶尚道にしても、釜山広域市では野党が勝利した選挙区もあり、ここだけをみると都市部対農村部という勢力傾向を窺うことが可能であろう。とすると、第一次産業がより盛んな全羅道で与党が入り込む隙がなかった点がにわかに注目されてくる。観光を除けば第一次産業が主体となっている済州道も同様だ。
これはあくまでシロウトの推測だが、政策以前の庶民・地域感情がそこにあるというのは穿った見方だろうか。つまり、これら野党側が勝利した地域というのは、近代以降にも自国政府による弾圧を経験しており、そんなあたりにこの現象を読み解くカギがあるのではないかとふと思ったのである。
それぞれについては詳細を割愛するが、比較的最近の事件として、まず光州事件(1980年)。当時、全羅南道の道庁所在地だった光州市を舞台に起きた軍による住民虐殺事件である。200人を超す死者と数千人に及ぶ負傷者を出した事件で軍隊を指揮したチョンドファン陸軍将校は、のちに大統領に就任した。
さらに済州島四・三事件(1948年)。死者数7万余人と言われる大虐殺事件は、韓米軍および警察と右傾化した市民集団らによって先導されたもの。背景には南北分断や東西冷戦などがあったともいわれるが、ごく最近まで語ることさえタブー視されてきた忌わしい事件だ。
あるいは朝鮮時代末期に起きた東学農民運動(甲午農民戦争。1894年〜)。全羅道で蜂起した住民らによる解放運動は、やがて当時の政府と衝突、政府側が清(中国)に対し援軍を要請する事態に発展した。これがかねてより朝鮮侵略の機会を窺っていた日本にとって恰好の口実を与えることとなり、日清戦争から朝鮮支配へとつながっていったのである(この事件に拘わらず日本による侵略は起こったに違いないが)。
これらはあくまで史実によく知られた歴史の断面ではあるけれど、それぞれの舞台が全羅道であり済州島であったことと、現代の政治勢力図との間に、なにやら象徴的なニオイを感じないではいられない。自国権力構造に対する抵抗。その再リアクションとしての弾圧。そして虐殺。つきつめれば与党が、野党がという問題で済む話ではないにせよ、これらの地域の住民の間に権力者に対する深い不信感が根づいているとみるのははたして筋違いだろうか……。
断っておくが、(わが国が深く関わった幾多のできごとはとにかくとして)選挙だのというのはあくまでその国と国民のものである。しかもどこかの大国のようにわが国に対する侵略(武力の有無を問わず)を謀ろうという話でもない。したがって、その結果についてあれこれ口を挟むつもりはない。ここではあくまで小選挙区制度下で起きた勢力現象とその背景の推測にだけ触れてみただけである。だが、それでもなお気になるのは、わが国にも関連しうるアメリカ合州国との間の問題(FTPあるいはTPP関連)であり、そういう意味で隣国の今後の状況を注目せざるをえない。
選挙後だったと思うが、テレビニュースでは外国産ブドウ酒やアメリカ合州国産オレンジがFTP批准後に値下がりしただのと報じられていた。あえていえば“不急不要”の品目だが、そこであえてそうしたものが取り上げられていた事実にもある種のひっかかりを覚えざるをえない(ほとんど同様の報道は、以前にも遭遇したことがある)。また、件の北朝鮮ミサイル(韓国テレビでは発射後も「ロケット」とされていたが、1〜2日が経って「ミサイル」と改められていた)事件とその報道との関連はあったのかなかったのか(「どちらからの謀略かの巻」参照)。そこにはなんらかの意図的操作はなかったのか? これは他山の石だともいえる。
今回の選挙。いくつかの報道によれば与野党が拮抗、とりわけ韓米FTP問題などの争点次第で逆転の可能性すら取り沙汰されていた。結果はご存じのとおり与党のセヌリ党が勝利を収めたワケだが、当日夜の選挙速報番組をテレビでみていて、ちょっと興味を持った現象がある。
ごく大雑把にいえば、与野党勢力が地域集団ごとに顕著。すなわち、慶尚道(南東部)と江原道(北東部)はほぼ全選挙区で与党が勝利をモノにしたのに対し、全羅道(南西部)と済州道(済州島)では逆に野党側が席巻する結果となったのである。ソウル特別市や京義道(首都圏)では半々に近い勢力図を描いていたが、いかに小選挙区制度にあるとはいえ、かなり極端な構図といえるのではないだろうか。
ちなみにいえば、ソウルを含む首都および首都圏では、核心部で野党優勢であり、外縁部になると与党一色。このあたりの現象は日本のそれにも相通ずるものがあるかもしれない。与党が圧倒した慶尚道にしても、釜山広域市では野党が勝利した選挙区もあり、ここだけをみると都市部対農村部という勢力傾向を窺うことが可能であろう。とすると、第一次産業がより盛んな全羅道で与党が入り込む隙がなかった点がにわかに注目されてくる。観光を除けば第一次産業が主体となっている済州道も同様だ。
これはあくまでシロウトの推測だが、政策以前の庶民・地域感情がそこにあるというのは穿った見方だろうか。つまり、これら野党側が勝利した地域というのは、近代以降にも自国政府による弾圧を経験しており、そんなあたりにこの現象を読み解くカギがあるのではないかとふと思ったのである。
それぞれについては詳細を割愛するが、比較的最近の事件として、まず光州事件(1980年)。当時、全羅南道の道庁所在地だった光州市を舞台に起きた軍による住民虐殺事件である。200人を超す死者と数千人に及ぶ負傷者を出した事件で軍隊を指揮したチョンドファン陸軍将校は、のちに大統領に就任した。
さらに済州島四・三事件(1948年)。死者数7万余人と言われる大虐殺事件は、韓米軍および警察と右傾化した市民集団らによって先導されたもの。背景には南北分断や東西冷戦などがあったともいわれるが、ごく最近まで語ることさえタブー視されてきた忌わしい事件だ。
あるいは朝鮮時代末期に起きた東学農民運動(甲午農民戦争。1894年〜)。全羅道で蜂起した住民らによる解放運動は、やがて当時の政府と衝突、政府側が清(中国)に対し援軍を要請する事態に発展した。これがかねてより朝鮮侵略の機会を窺っていた日本にとって恰好の口実を与えることとなり、日清戦争から朝鮮支配へとつながっていったのである(この事件に拘わらず日本による侵略は起こったに違いないが)。
これらはあくまで史実によく知られた歴史の断面ではあるけれど、それぞれの舞台が全羅道であり済州島であったことと、現代の政治勢力図との間に、なにやら象徴的なニオイを感じないではいられない。自国権力構造に対する抵抗。その再リアクションとしての弾圧。そして虐殺。つきつめれば与党が、野党がという問題で済む話ではないにせよ、これらの地域の住民の間に権力者に対する深い不信感が根づいているとみるのははたして筋違いだろうか……。
断っておくが、(わが国が深く関わった幾多のできごとはとにかくとして)選挙だのというのはあくまでその国と国民のものである。しかもどこかの大国のようにわが国に対する侵略(武力の有無を問わず)を謀ろうという話でもない。したがって、その結果についてあれこれ口を挟むつもりはない。ここではあくまで小選挙区制度下で起きた勢力現象とその背景の推測にだけ触れてみただけである。だが、それでもなお気になるのは、わが国にも関連しうるアメリカ合州国との間の問題(FTPあるいはTPP関連)であり、そういう意味で隣国の今後の状況を注目せざるをえない。
選挙後だったと思うが、テレビニュースでは外国産ブドウ酒やアメリカ合州国産オレンジがFTP批准後に値下がりしただのと報じられていた。あえていえば“不急不要”の品目だが、そこであえてそうしたものが取り上げられていた事実にもある種のひっかかりを覚えざるをえない(ほとんど同様の報道は、以前にも遭遇したことがある)。また、件の北朝鮮ミサイル(韓国テレビでは発射後も「ロケット」とされていたが、1〜2日が経って「ミサイル」と改められていた)事件とその報道との関連はあったのかなかったのか(「どちらからの謀略かの巻」参照)。そこにはなんらかの意図的操作はなかったのか? これは他山の石だともいえる。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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