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猫池罵詈雑言雑記帳
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 大阪のダブル選挙結果についてはスルーするつもりであった。選挙結果は選挙結果。どうであろうとそれが“民意”であることは否定できないであろうからだ。これには、イヌやネコに文句を言ったところで仕方がないというのとほぼ同じセンスをも含まれるが、しかし、その結果が生み出す結果についてを慮ると、黙っているのもどうかという気がしないでもない。

 橋下派の主張のなかには、見方によっては斬新なものがないわけではないし、条件つきにせよいくばくかの賛意を示せる部分がないわけでもない。しかも若いうえに“実行力”があることも認めないわけにはいかないだろう。だが、橋下流の実行とは暴走と紙一重であり、大いなる危険性をはらむとみる。加えて、今般の選挙で集められた“民意”の正体こそがじつはまやかしにすぎないことを指摘しておくべきであろう。

 橋下流の実行術。これはある意味、石原のおとっつぁんすらしのぐ独裁であり、およそ寛容性とかけ離れているあたりは北朝鮮当局のそれと極めて近い。自らの意に反する者を容赦なく粛正するあたりはさしづめミニジョンイルといったところだが、厄介なのは、たくみに弁を弄して大衆を見方につけているところにある。つまり、大衆の不平不満とそこに漂うある種の錯覚を利用し、その矛先を橋下自らの敵対者に向けさせているのである。言い換えれば“敵”のでっちあげだ。すべてがそうとまではいえないにせよ、その手法は北朝鮮金王朝のやりくちに極めて近い。
 これについては当ブログの「東がコレなら西はアレの巻」でも触れたが、いまいちどその比較のためにも同書『ソウルと平壌』から別の個所を引用してみよう。

 すでに地主や資本家が廃絶されて当時でも三十年近くたっていた。にもかかわらず、彼らの破壊活動はますます悪らつになるというなら、一体それは誰なのか。結局は敵を人民の中に求め、生み出し、人民を恐怖で支配することにほかならない。
──『ソウルと平壌』萩原遼・文春文庫128ページ

 あるいは以下のような報告はどうか。

「党は創建された初日から原則的な〜(中略)党の唯一思想体系を徹底的に打ち立てなければ党の統一団結と戦闘力を強化できなかった」(中略)
 社会主義をめざしながらもさまざまの方法と考え方があるのは当然だが、金日成はそれらをすべて「反党反革命分子」と断じ敵対者として処理した。
──前掲書185〜187ページ

 はたせるかな、われらが橋下サンは当選後の記者会見でこうぶちあげた。
「民意を無視する職員は市役所から去ってもらう」
「東京新聞」はこれを「宣戦布告」と表現したが、問題はここでいう“民意”というのがそのままイコールで橋下思想でしかないところにある。強制収容所送りや死罪にしないだけの話で、その思想は金王朝そのまんまではないか。

 加えて、前項で「厄介なのは」と記したのは、金王朝がはなから軍を背景とした強圧政治で民衆をおさえつけたのに対し、橋下流のそれがその話術を含む演出によって大衆を誘導したからである。つまり、思想の本流は金王朝に親和性を持つが、実行に至る手腕は同じ独裁者でもヒトラーおよびナチスのそれに準じているといえるだろう。本当は“敵”かどうかもわからない者をまんまと敵として仕立て上げ、大衆の関心を誘う。しかも出口のみえない不況下にあって、そうした手腕が当時のドイツと同様に極めて有効に働いたのだ。大阪府民やその他の橋下支持者がいつ“我に返る”かはわからないが、やがてその失敗を顧みる事態にならないことを祈るばかりである。

 それにしても残念というか仰天したのが、かつてコイズミスネオ政権と真っ向から対峙した天木直人氏が橋下派に「期待を寄せて」いることである。氏のブログを読むと、橋下流のマスコミ誘導術にまんまと騙されたのかとも感じられるが、あんなものに感心できるのであればコイズミスネオにだって感心できたハズである。期待を寄せることができたハズである。両者の手法は極めて近いうえに、その寛容なき独裁ぶりや右翼思想もまたしかりだからだ。天木氏は憲法第9条の遵守などを橋下派に求めているが、これはいかに橋下派の本質から目を背けているかの証明である(「橋下は公務員や労働組合とどんなに激しく闘っても構わない」などとも記しているが、これこそが橋下流誘導術に騙された好例となろう。ついでにいえば、橋下派が圧倒的権力をもったいま、激しかろうかそうでなかろうか、もはや民主的・公平な「闘い」などはありえない)。天木氏に対してはリスペクトする部分も多々あるだけに残念だというほかはない(とはいえ、それが危ういものであることはとうのむかしに見抜いていたからこそ、当ブログでもほんとんど引用や紹介をしなくなっていた)。

 一方、コイズミスネオとの比較という点で、森田実氏がつぎのような論評を発している点が目を惹いた。

 歴史は繰り返すというべきか。2005年当時の小泉純一郎首相は「官業郵政」を解体し民営化すれば日本は再生する、と訴えて総選挙に大勝利した。しかし、あれから6年経って日本は再生したと言えるのか? 逆ではないか。日本の状況は2005年当時より悪化している。2009年の総選挙で鳩山・小沢・菅の民主党は「霞が関解体」を訴えて大勝した。だが、これで日本はよくなったと言えるのか?! 明らかに悪くなった。官を萎縮させただけだった。
 紛争は何事も解決しない。橋下氏は「ノーサイド」と言ったが、本当にそう思うなら、新たな紛争を仕掛けるのはやめて、調和の道を探るべきである。源氏による平家の落人狩りを気取るようなら、橋下大阪市政に未来はない。

 引用した森田氏の論評には、偶然にして「東京新聞」の記事が引用されている。それはそれとして、注目すべき見方だとはいえないだろうか。また、別日には「政党が自己改革できなければ、極端な「向こうみず」にリードされる無党派層が国政を変える大潮流になるおそれがある。「極端」から「極端」へと時代は動く。
 私は、政治において独裁主義的傾向をもったヒトラー型のカリスマ的指導者とマスコミとの結託ほど危険なものはないと考えている。ヒトラー型カリスマ的リーダーとマスコミが結託すれば、無党派層は極端に向かって動く。」
 とも警告を発している。そういう意味においても、今般の合法的大阪クーデターは、わが国全体が内包する崩壊への危険性を垣間見せているようにも思うのである。楽観は危険だ。
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 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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