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猫池罵詈雑言雑記帳
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busan-kimhae

 11〜16日の日程で本年最後の韓国取材にでかけてきた。鉄道の旅を軸に取材を続けていることもあり、もっぱら各地方を回るスケジュールがほとんどだが、今回は珍しくソウルに腰を落ち着けてみた。古宮などの探訪もし、それはそれで新鮮な発見があった。

 それにつけても実感するのは、あの国の猪突猛進性である。鉄道だけをみてもそれは顕著で、ここ1年ほどの期間に限ってさえ、その地図が塗り変わるほどの変化が起きている。
 昨年9月と今年6月にそれぞれ韓国鉄道旅行の案内書を上梓したが、すでに9月の版と6月の版とで“ダイヤ改正”レベルを超えた変更がいくつかあるだけでなく、6月版以降も変動が続いているのである。もとより、鉄道モノにかぎらず旅行案内書にとってそうした変化との追いかけっこはある種の宿命でもあり、つくり手のほうでどこかで無理矢理にでも区切っていくほかはない。本来は、読者のためにその後の変更点などをインターネットサイト上などでお知らせすべきところかもしれないが、そのあたりについては考えていることもあるので、いずれはフォローしてゆきたいと思う。

 せっかくなので、昨年9月から今日までの大きな変更点を以下に揚げてみよう(近々に予定が明らかな部分についてはそれぞれの版のなかでフォローをしておいた)。

・京釜高速線(KTX)全通(東大邱〜釜山間の専用線開業)
・KTX馬山(慶全線)乗り入れ開始
・京春線電化開業(リニューアル)
・仁川空港鉄道ソウル駅乗り入れ開始
・釜山ー金海軽電鉄線開業(冒頭写真)
・ソウル首都電鉄・新盆唐線開業
・KTX全羅線乗り入れ開始および駅名変更(麗水→麗水エキスポ)ほか(写真下)
・DMZ都羅山関連列車運用の変更

여수역

 このほか、中央線一部区間での新線へのつけ替えなどのほか、ダイヤ変更は日本の鉄道と比べてかなり大規模に実施されている。
 こういう案配もあって、現地取材を途切れさせられないのである。しかも当局からの情報発信が国内外向けを問わず改定の期近であるなど、それはそれでアタマの痛いところではあるけれど、逆に追い掛け甲斐があるともいえそうだ。

 さて、当ブログで韓国経済の破綻を憂える一文をアップしたことがあるが、こうした“発展”ぶりをみるにつけ、いよいよその心配が増してきた。
 4日には、標高何百メートルだかの超高層ビル計画が報道されたが、踵を接して原発開発の推進も伝えられている。鉄道で驚いたのは、「原州ー江陵線」などという新路線計画がいつの間にか登場しており、しかも2017年開業だというのである(つい先日、原州を通ったときには工事がはじめられている様子はみられず、文字どおりの突貫工事で開通させるつもりなのだろうか?)。これは、中央線の原州を起点に大関嶺などを経て東海岸の街・江陵に至るもので、ようは平昌オリンピックに関連した事業計画なのであった。韓国鉄道では、このほかにも都心および近郊のいくつかの路線や都心と忠州方面とを結ぶ路線(中部内陸線)などが計画されている。取材者としてはもとより、鉄道愛好家としても楽しみな話ではあるけれど、しかしはたして採算はとれるのだろうかとよその国のことながら心配になってくる。

 ちなみにいえば、江陵市の人口はおよそ22万人。周辺の東海市(約9万)や三陟市(約7万)、束草市(約8万)と含めても規模はさほど大きくはない。また、原州〜江陵間はとうの平昌郡(約4万)を含み人口は希薄である。現状では、首都圏とを結ぶ唯一の鉄道路線である嶺東・太白・中央線ルートがナベヅル状に南側に迂回していることもあって、清凉里(ソウル)〜江陵間でおよそ6時間を要する。したがって、原州との間を短絡できれば格段に便利になるハズだ。しかし、韓国の庶民の足の主役を務める路線バス(高速道路経由)が十二分にフォローし、東ソウル〜江陵間の所要時間は半分にあたるおよそ2時間50分、ほぼ30分おきの発車というフリークエンシーで愛用されているのである。東海や三陟、束草などもほぼ同様だ。逆にいえば、通常はバスで十分な輸送需要であり、鉄道がそれを補完しているよいうのが実態なのである(くわえていえば、KTXで新線が開業したとしても、周辺地域と江陵とのアクセスロスを考えると、時間短縮はあまり期待できないだろう)。そういう地域だからこそ、江陵空港の代替として開業した襄陽国際空港は目下のところ一切の定期便を持たず、立派な設備と大人数の職員とを持て余してしまっているのだといえよう。
 おそらく、新線はKTX仕様とし、最高速度時速300キロ超で設計されるに違いなく、実現すれば首都圏と東海岸北部との間の鉄道輸送力は爆発的に向上するだろう。また、オリンピック期間では無二の活躍をするハズだ。だが、その後はどうするのか。日本以上に首都への集中が甚だしい国であるところに加え、江陵地方にその輸送力を必要とする産業が育っているワケでもない(三陟に原子力施設を誘致するという案があるが、そう簡単にはいかないだろう。また、すぐ南に位置する原発の街・蔚珍は人口わずか6万余人にすぎず、外部との往来はたかが知れている)。言い換えれば、新たに建設するにしてももっと必要なところがあるのではないか。あるいは改良すべき点を見落としてはいまいかと下世話ながら考えてしまうのである。
 残るは巨額のツケばかり……、そうならないことを祈りたい気持ちである。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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