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猫池罵詈雑言雑記帳
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 法(きめごと)の見直しは常に必要であろう。そこに法があっても、その枠にかからないか、あるいはかからないように解釈されているかなどの理由で、運用ができなかったりすることもあれば、まるっきり想定されていなかった事態に対応する必要に迫られることもあるので、社会的状況に応じて新たなきまりをつくる必要もある。法治国家にあっては当然のことである。実際問題、法の隙間を縫うようにして犯罪が行使されたり、犯罪ギリギリの“脱法行為”もさまざまな分野にあることから、新たな立法や改正によってある種の犯罪に対応していく必要を認めないわけにもいかないだろう。

 閣僚を含む国会議員らの間に不透明な経理がまかり通り、目黒区議会(東京都)などの自治体にあっても類似する“放慢経理”(明らかな不正を含む)の実態が明らかになるなか、一部の自治体では議員の経理を透明化する議案が続々と提出され、可決される状況にある。きまりをもって正すのもときにはいいかもしれない。しかし、ようは「議員がズサンで、それが大衆にバレたのでそれらしいきまりをつくろう」というものではないかと思うが、そんなニュースの類に接すると、この国の蔓延しているモラルの欠如さ加減をあらためてみせつけられる感じがしてならないのである。


 そもそもが、公人たる議員がカネ(税金)を使うにあたって常識も節度も持ち合わせていないというのからして本来は仰天すべきことなのだが、それが指摘されるや「きまりが明らかでないのが悪い」かのごとくきめごとを制定する慌ただしさ……。一連の“不正あるいは不透明経理”問題など、現行のきまりの枠内で本来は処理できるのではないかという気もするし、それともとことんまで下世話な縛りがないことには自らの行動ひとつ律することができないというのだろうか。イヌやネコではあるまいし、なんとも気の毒なひとびとであり社会である。

 このブログのテーマのひとつに「モラルで生きるのかルールで生きるのか」という写真家の秋月岩魚氏の言がある。
 ルールに書かれていないから(本当はダメだと半分自覚していても)やって構わない?
 そんなことは、たとえ明確な犯罪の類でなくとも身の回りをみればいくらでもある。たとえば、「禁煙」でない公的な場所での喫煙。近ごろはごていねいにも路上喫煙を禁止するところもみられるが、そうでないにしても小さな子どもさえいるような雑踏で火のついたタバコを手に歩いているひとは多い。はたして禁煙場所が拡大の一途だが、そうでなければ節度のある喫煙ができないのだろうか。
 一部掲示板を中心とするネット上の公的スペースでの誹謗中傷や脅迫の類も常に問題視されている。相変わらずの状況が続くだけでなく、ていどの差こそあれ書き込み者の常識を疑いたくなるような言葉遣いをみかけることはきわめて多い。そして、こんなところにも規制がかかる可能性が示唆されている。

『「DQN」は名誉毀損 2ちゃん語が危ない (J-CAST)』

 現にある掲示板管理者が家宅捜査を受けた事例もある。これは無修正ポルノ画像の投稿が放置されていたことが表向きの理由だったようだが、範囲を拡げながら取り締まりの前例がつくられていく可能性はある。

 もちろん、過剰に畏縮して本来はやっていいことやできることを放棄してしまっては仕方がないが、いまの日本の社会をみていると、やっていいことをやろうという気力(積極性と言い換えてもいいか?)に乏しい反面、ズル賢い目利きばかりが蔓延してみえる。しかし、いまはいちおうの規制の対象となっていなくとも、やがて身動きしづらい状況がやってくるかもしれない。そのときのもっともらしい材料にされるのが、こうしたモラルのなさに基づく行ないの実態なのであろう(もっとも、本当に小賢しい連中は、仮にそうなっても自分たちだけはトクをして生き延びられるようにするのだが……)。  


■門番法
 どうしたことか、マスメディアはむろんのことネット上でも詳報に接する機会に乏しいけれど、「ゲートキーパー法」と通称される法案が衆議院本会議によって可決されている。
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-03-24/2007032402_04_0.html
 これは、いわゆるマネーロンダリング(資金清浄)を防止する目的とされる法案で、保険会社や貴金属業者など38業種を「特定事業者」に指定、「犯罪の疑いのある取引」について関係省庁に通報する「密告の義務」を負わるというものだ。現行でも銀行に対して同種の通報義務が課せられているが、たとえばオレのようなちょっとした貧乏人が多額の預金を銀行にしたり、宝くじでもあたってそのカネで女性でも口説こうと高級宝石の類でも買いにゆけば、「アヤシイ」とみなされる・・・といより銀行や貴金属店にとっては「アヤシイとみなければならず」、本人が知らないところで警察に密告され、銀行口座が凍結されてしまうことになる。仮に「いやぁ、宝くじがあたりまして」というオレの言葉を信じてくれたお店が、警察から「なんで報告しない?」と指摘されでもすれば、こんどはその良心的な店に罰が及ぶことになる・・・らしい。たとえ犯罪になんら関係がなくとも、「疑わしい」という主観をもって密告せよというものである。「共謀罪」に匹敵するとんでもない法案である。

●参考:「ゲートキーパー法が密告社会をつくる(1・2) ビデオニュース・ドットコム」

 上記リンク記事がわかりやすく解説していくれているのでぜひお読みいただきたいが、同法案は“疑わしい取引”(前述のように買い物も含まれる)イコール“犯罪”ではないのに、罰則をもって届け出を強制するところに特徴があり、そのうえで令状なしで警察が強制捜査できるというものだ。提案し推進しているのはとうの警察庁である。懸案のひとつとなっていた弁護士への強制はさしあたり撤回されてはいるものの、これだっていつ“改正”されるかわかったものではないだろう。
 リンク記事によれば、同種の法律を持ち弁護士に対して適用しているのはイギリスを含む一部のヨーロッパ諸国だというが、イギリスを除いては反発も大きく廃止も取り沙汰されているという。アメリカ合州国には存在せず、カナダでも撤回されたという。日本の場合、とても予断を許されるような状況であるとは言い切れないのではないだろうか。

 そして無気味なのは、累がジャーナリズムに及ぶ可能性が捨て切れないことである。同記事にも触れられているが、「マスコミは犯罪を知っていたのになぜ警察に通報しない」という時代が、このままだとすぐそばまで迫っていると思うのは大袈裟だろうか(*注)。
 しかもそんなに問題をはらむ法でありながら、ほとんど役に立たない可能性もあるというのだ。前例のあるイギリスでは一連の密告に基づいて重要な事例が摘発されたことがほどんとないらしいのだ(前出リンク記事の(2)を参照)。むしろ他人をより信用しない社会が深化することのほうがよほど恐ろしい。監視の親分は警察(公安)である。イギリスはおろか、北朝鮮を思わせる薄汚い法案ではないか。
 リンク記事から海渡雄一氏(弁護士)の言葉を引用して今回の「警鐘」としておきたい。

『共謀罪とゲートキーパー法は社会的な影響度や国際的な流れとしても共通したところにあるし、人間と社会に対する歪んだ見方「人を見たら悪人と思え。疑ってかかって密告しろ」という人間感でも共通していると思います。人と人が信頼し合えなくなっている心の闇に忍び込んできている法律なんです。』


*注:
「近代麻雀」(竹書房)でマンション麻雀(もちろん違法)に潜入した記事を掲載していたことがあるが、もちろんこんなのも「マスコミは犯罪を知っていたのになぜ警察に通報しない」とされる可能性がある。もっとも、現行でも犯罪等に関する市民からの通報はあるわけだが、どうしたことかマトモに警察が取り合わないという例も少なからず報道されている。個人的に、目の前で起こった交通事故(乗用車によるスクーターへの当て逃げ。信号無視をした乗用車がバイクに突っ込んで転倒させたもの)を110番したのにまったくとりあってくれなかった千葉県警。なんでしょうね???

 いまひとつは、国民総背番号制、完璧な管理統制によって税を吸い上げるそのためのパーツとしての意味もあるのかもしれない……。いずれまた触れてみたいと思う。ついでながら賛成したのは自民、公明、民主、国民新の各政党である。
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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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