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猫池罵詈雑言雑記帳
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「しかし彼の論のすすめかたが、日本人を興がらせたのに違いない。もしこの本が日本名のだれかによって書かれていたとしたら、著者はほとんど即座に軍国主義者またはウルトラ右翼のレッテルを貼られ、本書は忘れ去られてしまっていたことであろう」

 これは、『にせユダヤ人と日本人』浅見定雄・朝日文庫)に付録として引用されたB.J.シュラクター氏の手による『日本人とユダヤ人』(イザヤベンダサン)の書評「論争の書、いまや英語に」の一節である。

 本書で浅見氏はイザヤベンダサンという人物が偽者のユダヤ人であり、出版社社長であった山本七平氏当人であることをすっぱ抜いているが、問題の『日本人とユダヤ人』はいまなお重版を重ねている超ベスト&ロングセラーである。発売当時の様子を、本書で引用されたシュラクター氏はつぎのように記している。

「一九七〇年に東京のあまり有名でない聖書関係専門の学術出版社から出るとすぐ、この『日本人とユダヤ人』は天井知らずのベストセラーとなった。
 有名人はみなこの本を読んだ。元総理大臣の佐藤栄作氏は国会でこの本を引き合いに出した。(中略)ほとんどずべての言論誌が書評を載せ、また本書とその作者にまつわる謎の物語を掲載した」

 浅見氏は付録としてこうした証言を引用しつつ、自らの学識と良識、あるいは信念にのっとって『日本人とユダヤ人』の偽書ぶりを暴いている。著者の正体なんてものはこのさい付録にすぎず、そこに書かれている内容そのものがウソだらけの“ペテン書”だということを浅見氏はおおやけにしたのであった。
 それでもなお『日本人とユダヤ人』が売れ続けているでろうことは驚嘆にあたいすると思うが、あれから半世紀が経ったいま、“ペテン書”がもたらした効果は侮りがたいものだったのだと感服せざるをえない。シュラクター氏が指摘したように、半世紀前であれば「ウルトラ右翼のレッテルを貼られ」というセンスを持っていたかもしれないわが国は、ものの見事にウルトラ右翼そのものが政権のトップに居座り、権力の中枢を握ることに成功してしまったからだ(もっとも、そろそろ化けの皮がはがれてきたとみえ、知人を含む保守的な人物からも戦争への懸念や引きずり下ろす必要があるという声を聞くようになってきたが)。
 
 しかし面白いのは、そんなウソで塗り固められたフィクション(つくり話)がこともあろうか業界内で有名かつ権威あるとされる「ノンフィクション賞」を受賞しているというところにもあろう。とてつもないペテンですね。フィクションにノンフィクションの「大賞」を授与しちゃったんですから(しかもその後に取り消しがあったワケでもない。ボクシング業界のほうがよほど清廉潔白である)。

 ところで、突然ふってわいたかのように、楽曲のつくりてをめぐっての真贋問題が浮上した。事実についてはいずれ明らかになるのだろうがオレ自身の第一印象についていえば「痛快」のひとことであった。
 問題として取りざたされていることのひとつに、NHK(ブラック公共放送)が放映した佐村河内守氏をめぐるドキュメンタリー番組がある。件の番組はタマタマだったがオレもみた。
「へぇ。こんなひともいるんだな」
「理論的には番組で説明されたような作曲法は可能だけど、(作曲法として紹介されていた)対位法的楽曲の作曲法としては不自然な面がありはしないか(とはいえ、ウソだとは思わなかった)」
「ではさて、対位法的楽曲以外ではどうなんだろう?」
 などとの感想は持ったが、多量の薬物に頼らざるを得ないほど悶絶の苦しみのなかでつくられ披露された肝心の楽曲を聴いても、さほどいい曲だとは思わなかったし、残念ながらココロにも響かなかった。なぜだかはわからないが。

 ところが世間というのは佐村河内氏的エピソードが大好きとみえ、氏の作品を収めたCDがベストセラーになったという。カネを払ったひとびとのうちのどれだけが音楽そのものを評価していらのかまでは知りようがないし、それ以前に「趣味・志向」の違いという面もあるからここではあまり踏み込まない。しかし、その作曲者の耳が聞こえないという付録がなかったら、はたしてどれだけのひとがカネをはたいたのだろうか。
 これは“にせユダヤ人”ともあるていど共通する現象ではないのか(「あるていど」というのは、“にぜユダヤ人”が別の次元でより悪質だという点をさす)。すなわち、
「もしこの曲が無名の健常者によって書かれていたとしたら、この曲は忘れ去られてしまっていたことであろう」
 ということはなかったのだろうか。言い換えると、その背景や真意はいざ知らず、大衆の心理をまんまとつかんだ現象でありビジネスだったのだ。そうしておいて事実の一端が暴露されるや右往左往して騒ぎたてる大衆。そんなザマをみるにつけ「痛快」という言葉が浮かんでくるワケだ。
 もっとも、今回は当局まで乗り出す騒ぎに発展しつつある。しかし、であれば山本ベンダサン氏やその偽作でカネモウケないしプロパガンダを続ける連中こそを問題としなければおかしい。

 この「痛快」。同じクラシック系音楽業界でいえば、たとえばハンディキャップを持つ演奏家がもてはやされているという現象にも結びつく。
 とある全盲のピアニストの演奏をテレビ番組ではじめて聴いたとき、「これは素晴らしい演奏だ!」と感激したものだ。「目がみえないなんていうのは余計なおまけ。そんな背景を知らずともこの演奏は十分に楽しめた」のである(とはいえ、CDにカネを払おうとまでは思わなかったし、もっといい演奏はいくらでもある。ようはその程度)。
 しかし同時に「“サーカス的”にビジネスツールとしてすり減らされなければいいのだが・・・」という一音楽ファンとしての懸念が芽生えるのも覚えた。
 それからときどきテレビ放送などで彼の演奏を耳にすることはあったが、あるときみたテレビ番組での演奏にはぎょっとせざるを得なかった。
「なんでこんなに音痴になってしまったのか・・・?」
 演奏はナマモノだという。したがって、タマタマその収録された演奏がそうだっただけなのかもしれない。だが、そのときの演奏からは最初に聞いたときに覚えたような感激の類は一切起きなかった。

 さて、こうしたハンディキャップを持つ演奏家のCD(あるいはDVDやライブ)。はたしておカネを払うひとは、どの部分に対しての対価だと思っているのだろうか。ひょっとするとそうした現象を含めての警鐘という意味がありはしないかということ、それが「痛快」の意味なのである。

 これは、たとえば世界遺産などにも結びつく。富士山の登山者が激増したというが、いうまでもなくその呼び込みとなったのは世界遺産への登録であろう。富士山は富士山。世界遺産なんてものはユネスコという一機関が施したデコレーションに過ぎないのに、なぜか「世界遺産だから」と飛びつくひとびと(先日、飛行機の窓に雲ひとつない富士山が浮かび上がった。韓国の航空会社だったが、「富士山がみえます」とのアナウンスがはいったほど見事な富士山風景だった(数十回乗って、そんなアナウンスははじめてだった)。が、同時にみえたのはその裾野を醜くえぐりとっている自衛隊の演習基地であった。嗚呼、世界遺産・富士山!)。

 自分自身でその価値を見出す努力を怠り、いわんやそのための感性も置き忘れ、まやかしのレッテルに操られるひとびと。今回の暴露になにを思うかはわからないが、怒ろうが悲しもうが笑い飛ばそうが、そのいずれもオレにとっては「痛快」だ。

 ひとつつけ加えると、佐村河内氏とイザヤベンダサンとの違いは、ベンダサンがメジャーレーベルであったのに対し、佐村河内氏がインディーズ的であったことであろう。日本を特殊かつ優れた国だというまやかしのテーゼを外国人が記すという手法などによって実益を勝ち得た偽書(繰り返すが、著者の正体のみならず、ノンフィクションを謳ったフィクションという点でもニセモノである)。方や広島や東日本大震災とたくみにからめつつ「現代のベートーベン」として実益を得つつあったショウ。ともに社会に漂う“空気”を利用した点でも共通点がある。しかし、その内容たるや、メジャー側のほうが比べるべくもないほど悪質だという点を強調しておく必要があるのだが。

 
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