インフルエンザの世界的大流行が現実のものとして懸念されている。
ここ数年にわたって、トリ由来のインフルエンザの大流行が取り沙汰されてきたところに、ブタ由来の疾患が発生したということもあって、人類にとっては、警戒の隙をつかれたかのような感じすらする。伝えられるところによれば、トリ由来と比較して毒性が低いとのことだが、それでもすでに多数の死者があるといわれ、要警戒疾患であることは否定できないだろうと思う。WHOの警戒レベルでは、すでに世界的大流行の一歩手前にあたるフェーズ5が示されているというのだからなおさらであろう。
ここ数年にわたって、トリ由来のインフルエンザの大流行が取り沙汰されてきたところに、ブタ由来の疾患が発生したということもあって、人類にとっては、警戒の隙をつかれたかのような感じすらする。伝えられるところによれば、トリ由来と比較して毒性が低いとのことだが、それでもすでに多数の死者があるといわれ、要警戒疾患であることは否定できないだろうと思う。WHOの警戒レベルでは、すでに世界的大流行の一歩手前にあたるフェーズ5が示されているというのだからなおさらであろう。
しかし、テレビニュースをみるにつけ、いささか騒ぎ過ぎではないのかという気もしてくる。テレビニュースは伝えるだけではあるが、宇宙服ふうの防護服が紹介されたり、機械的観測による飛行場での体温検査、あるいは患者発生を想定して準備されているらしい特別病室の存在などが明らかにされている。どこぞの役場が市民にマスクを配っただのという話題もあった。
それらはおそらくは必要なのであろう。しかし、検疫にあたっては、係官の人数が不足しているとも伝えられるなか、それでも有効と思われる手立てをしないわけにはいかない現場の苦労も窺わせているが、疾病の性格上、そうした水際の防御がどこまで可能なのだろうかという疑問もわく。マスクはどうか? 相手はナノメートル(10億分の1メートル)の世界である(インフルエンザウィルス粒子は80〜120ナノメートル)。まったくの無防備よりは安心感があるかもしれないが、はたしてどれほどの実効があるのだろう。それよりは、手洗いとうがいの励行という基本があって、十分な栄養と休養をとるということにつきるのではないか? そのうえでおかしいと感じたら早急に医療機関にかかり、かつ他人に感染させないように気を配る(*注)。極論すればそんな単純なことなのではないかと思うのだ。本気で感染から逃れたいとしたら、宇宙へでも逃げるか、それとも違う世界にゆくかであろう(タチのよくない冗談にて失礼)。
ラッサ熱というウィルス性疾患がある。西アフリカを中心に広がり、有効な治療を施さなかった場合の致死率は3〜6割前後にも達する重篤な感染症である(リバビリンという薬の有効性が認められ、早期に投与することにより現在の死亡率は数パーセントていど)。宿主であるネズミの尿や患者の血液など体液を介して感染するため、空気感染するインフルエンザと比べれば感染効率は極めて低いといえるだろう。
この病気の調査にあたって、初期にこんなエピソードがあったという。
西アフリカのシエラレオネで研究にあたっていたイギリス人医師が、自らの感染への恐怖にかられて仕事がまっとうできなくなり、勤務していたアメリカ合州国のCDC(疾病対策センター)に戻ることになった。ところが、空路、ロンドン経由でアメリカに渡ろうとしたところ、イギリス当局に身柄を拘束されてしまったのである。もちろんラッサ熱でもなければ、それらしい兆候があったわけでもない。単に、乗り合わせた乗客に、自分がシエラレオネでラッサ熱の研究をしたという話をしたのが密告されただけで、熱病専門の病院に幽閉されてしまったのだった。そこには気密性の巨大なプラスチック製隔離装置があり、医師はそこに閉じ込められたという。しかし、たとえラッサ熱患者だったとしても、空気感染をしない疾患にあって、そんな大層なシロモノが必要なのかどうかは冷静になればだれでもわかる。結局はCDCが説得にあたって解放されたというこのエピソードのむすびにはつぎのように書かれてある。
ウィルス性の伝染病を前にして、理性を失ったり、「常軌を逸した行動」に出るのは、なにもアフリカ人にかぎったことではないのである。(『レベル4致死性ウイルス』J・B・マコーミック&S・フィッシャー=ホウク著・武者圭子訳/早川書房)
ここで語られたイギリス当局の所業を笑い飛ばすわけにはいかないと思うが、こうした過剰な反応が起こる裏には無知からくる恐怖感があるとはいえる。いまのわが国の“慌てぶり”はどうだろう。あるテレビニュースでは、あれこれ煽っておいて、「どうか冷静に」ときた。
いくつかの報道によれば、スペイン風邪の例からすると、本格的な大流行は秋以降になる可能性があるという。現在、すぐにでもわが国に上陸する可能性があるとはいえ、感染爆発が起こったわけではないのだ。ならば、薬剤の確保や医療機関の訓練などを進めるとともに、より正しい知識を大衆に発してゆくのがいまなすべきことではないのだろうか。やたらセンセーションを強調するのではなく、現実的な対策としてだ。ウィルス性疾患の大流行に対し、ひとりひとりができることなどたかが知れているのだろうが、だからこそ基本に立ち返った予防の心がけこそが重要だと考える。
*補足:
いまひとつ危険性を感じているのが都市部以外での医療機関への受診体制である。都心などでは徒歩圏内に病院なり診療所なりがあったり、そうでなくとも鉄道やバスなどの公共交通機関が発達しているので、いざというときにも受診はしやすい。ところが、少し郊外に目を向けると、医療機関の軒数の絶対的な少なさとともに、マイカーなしでは受診ひとつままならない情況がある。バス便があれば(あったとしても日常的に使えるダイヤでないケースもある)まだしも、それさえない地域にあって、はたして十全な対処ができるのであろうか。タミフルなどの抗ウィルス剤は、できるだけ初期の投与が望ましいというが、こうしたロケーションにあってそれがどこまで可能なのだろうかと思う。家族のひとりでもマイカーを運転できる状態ならいいが、そうならない可能性だって考慮しておくべきであろう。医師の確保と診療体制について、早急な見直しが必要なのではないだろうか。
*注:
それにしても。電車のなかなどで、周囲にお構いなしにセキをしたりクシャミをしたりという人間がいかに多いことか……。これだけマスメディアがインフルエンザがどうのと騒いでいるなかで、平気の平でゴホンゴホン。するのはだれでも一緒だし、出るものは仕方がないが、せめてハンカチを口にあてて、ひとがいないほうを向くなどをしろってんだ。こうなっちゃうと、知識がどうのとか国の対策がどうのとかいう以前に、躾の問題になってくる。老若男女問わず、躾のよろしくない輩の多さにアタマがクラクラしてくるというものだ。
※参考:国立感染症研究所
※お知らせ:BBSが、ときおり「403」になって接続できないことがあります。原因は不明ですが、そういうさいには時間をおいて再度接続してみてください。ご不便をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。
それらはおそらくは必要なのであろう。しかし、検疫にあたっては、係官の人数が不足しているとも伝えられるなか、それでも有効と思われる手立てをしないわけにはいかない現場の苦労も窺わせているが、疾病の性格上、そうした水際の防御がどこまで可能なのだろうかという疑問もわく。マスクはどうか? 相手はナノメートル(10億分の1メートル)の世界である(インフルエンザウィルス粒子は80〜120ナノメートル)。まったくの無防備よりは安心感があるかもしれないが、はたしてどれほどの実効があるのだろう。それよりは、手洗いとうがいの励行という基本があって、十分な栄養と休養をとるということにつきるのではないか? そのうえでおかしいと感じたら早急に医療機関にかかり、かつ他人に感染させないように気を配る(*注)。極論すればそんな単純なことなのではないかと思うのだ。本気で感染から逃れたいとしたら、宇宙へでも逃げるか、それとも違う世界にゆくかであろう(タチのよくない冗談にて失礼)。
ラッサ熱というウィルス性疾患がある。西アフリカを中心に広がり、有効な治療を施さなかった場合の致死率は3〜6割前後にも達する重篤な感染症である(リバビリンという薬の有効性が認められ、早期に投与することにより現在の死亡率は数パーセントていど)。宿主であるネズミの尿や患者の血液など体液を介して感染するため、空気感染するインフルエンザと比べれば感染効率は極めて低いといえるだろう。
この病気の調査にあたって、初期にこんなエピソードがあったという。
西アフリカのシエラレオネで研究にあたっていたイギリス人医師が、自らの感染への恐怖にかられて仕事がまっとうできなくなり、勤務していたアメリカ合州国のCDC(疾病対策センター)に戻ることになった。ところが、空路、ロンドン経由でアメリカに渡ろうとしたところ、イギリス当局に身柄を拘束されてしまったのである。もちろんラッサ熱でもなければ、それらしい兆候があったわけでもない。単に、乗り合わせた乗客に、自分がシエラレオネでラッサ熱の研究をしたという話をしたのが密告されただけで、熱病専門の病院に幽閉されてしまったのだった。そこには気密性の巨大なプラスチック製隔離装置があり、医師はそこに閉じ込められたという。しかし、たとえラッサ熱患者だったとしても、空気感染をしない疾患にあって、そんな大層なシロモノが必要なのかどうかは冷静になればだれでもわかる。結局はCDCが説得にあたって解放されたというこのエピソードのむすびにはつぎのように書かれてある。
ウィルス性の伝染病を前にして、理性を失ったり、「常軌を逸した行動」に出るのは、なにもアフリカ人にかぎったことではないのである。(『レベル4致死性ウイルス』J・B・マコーミック&S・フィッシャー=ホウク著・武者圭子訳/早川書房)
ここで語られたイギリス当局の所業を笑い飛ばすわけにはいかないと思うが、こうした過剰な反応が起こる裏には無知からくる恐怖感があるとはいえる。いまのわが国の“慌てぶり”はどうだろう。あるテレビニュースでは、あれこれ煽っておいて、「どうか冷静に」ときた。
いくつかの報道によれば、スペイン風邪の例からすると、本格的な大流行は秋以降になる可能性があるという。現在、すぐにでもわが国に上陸する可能性があるとはいえ、感染爆発が起こったわけではないのだ。ならば、薬剤の確保や医療機関の訓練などを進めるとともに、より正しい知識を大衆に発してゆくのがいまなすべきことではないのだろうか。やたらセンセーションを強調するのではなく、現実的な対策としてだ。ウィルス性疾患の大流行に対し、ひとりひとりができることなどたかが知れているのだろうが、だからこそ基本に立ち返った予防の心がけこそが重要だと考える。
*補足:
いまひとつ危険性を感じているのが都市部以外での医療機関への受診体制である。都心などでは徒歩圏内に病院なり診療所なりがあったり、そうでなくとも鉄道やバスなどの公共交通機関が発達しているので、いざというときにも受診はしやすい。ところが、少し郊外に目を向けると、医療機関の軒数の絶対的な少なさとともに、マイカーなしでは受診ひとつままならない情況がある。バス便があれば(あったとしても日常的に使えるダイヤでないケースもある)まだしも、それさえない地域にあって、はたして十全な対処ができるのであろうか。タミフルなどの抗ウィルス剤は、できるだけ初期の投与が望ましいというが、こうしたロケーションにあってそれがどこまで可能なのだろうかと思う。家族のひとりでもマイカーを運転できる状態ならいいが、そうならない可能性だって考慮しておくべきであろう。医師の確保と診療体制について、早急な見直しが必要なのではないだろうか。
*注:
それにしても。電車のなかなどで、周囲にお構いなしにセキをしたりクシャミをしたりという人間がいかに多いことか……。これだけマスメディアがインフルエンザがどうのと騒いでいるなかで、平気の平でゴホンゴホン。するのはだれでも一緒だし、出るものは仕方がないが、せめてハンカチを口にあてて、ひとがいないほうを向くなどをしろってんだ。こうなっちゃうと、知識がどうのとか国の対策がどうのとかいう以前に、躾の問題になってくる。老若男女問わず、躾のよろしくない輩の多さにアタマがクラクラしてくるというものだ。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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