先週末、五能線方面に取材旅行にでかけてきた。五能線は東能代と川部とを結ぶ147・2キロのローカル線で、沿線にある五所川原と能代のアタマをとった線名を持つ。
この路線の特徴は八森付近から鯵ヶ沢まで80キロ以上にわたって日本海ぞいに進むことにある。素寒貧とした海岸線が延々と続き、ときおり小さな漁港が車窓をよぎる。人口が希薄な地域を通ることからどことなく寂寥とした雰囲気もあって、そんなところが魅力になっているわけだ。一方、陸地側に目を向ければ白神山地が連なり、秘境とはいかないまでもそれに近い気分を味あわせてくれる路線ではある。
五能線のあとは弘前でレンタカーを利用し、白神ラインなる長大林道をドライブしてみた。いうまでもなく白神山地の片鱗を窺ってみるためである。
白神山地と聞いて世界遺産を思い浮かべるひとは少なくないだろう。ユネスコにより1993年に自然遺産として登録されたものだが、13万ヘクタールといわれる同山地のうち、登録の対象とされたのはおよそ1万7000ヘクタールにすぎず、その後の開発が気になっているところだ。たしかに指定地域では開発を行なわないタテマエになっており、核心部では入山制限が布かれ禁漁(猟)とされるなど一定の保護施策はみられる。しかしいわゆる緩衝地域を含む周辺については、行楽客の増加による山荒れがみられるなど芳しくない話が聞こえてこないでもない。
五能線乗車中もそうだったが、クルマで現地を見回してみれば、「世界遺産」のキャッチとともに観光客向けのハコやら看板やらがやたらに目立つ。五能線は数年ぶりの乗車だったが、そういえばこの路線もなんだか俗っぽさが目立つようになったにゃぁ。
以前にも記したとおり、オレ自身は世界遺産というカテゴライズに対して疑念を抱いているが、ここでもまたその嫌悪の対象として「世界遺産イコール観光資源」という図式をみせられるハメになったのである。
白神ラインへは弘前から西目屋を経由し、つづら折れのダートで山地を縦断、日本海ぞいの岩崎に抜けるコースをとった。
ちなみに、矛盾するようだけれど、山道を走るのは嫌いではない。ときおり立ち止まって景色を眺めたりしながら曲がりくねる細道をゆくのは面白いといえばいえるからだ。とはいえ、走りながら「どうしてここにこんな道が?」と面白くない気分になるのも事実で、この日のドライブもまさにそれ。仮に弘前から岩崎やら深浦に行くとすれば海岸ぞいの国道101号線を使うほうが速く快適。よほどのことがなければ、わざわざこんな羊腸のダートを選ぶことはないだろう。もちろん沿線に集落はない。とすれば、考えられるのは林業のほかなんらかの開発のための先進道路ということになるのだが、なんにしてもよくわからない道である。
そこここで土木工事が行なわれているのは冬に備えての補修なのか、それとも鋪装化を含む開発なのか。いままさにパワーショベルが轟音をたてている現場もあれば、支線の入口に「この先工事中」などと記した標識があったりする。一見するとただの森なのだが、あるいはその奥にはショッカーが登場しそうな瓦礫の山かなにかがあるのかもしれない。そして先々の開発を予想させるただし書き。
「白神ラインは整備中です。まだ砂利道が多く(攻略)」
そんななか現れた観光施設。ログハウスふうのハコや、アスレチックを模した滑り台なんてのもある。大型の観光バスが停まっている。さぞや運転はたいへんだったのであろう。ここにも世界遺産の文字がある。まぁ、いちいち目くじらをたてるほどのことではないが。
この日は、平日ということもあったのか、工事関係車を除けばほかのクルマとはほとんど出会わなかった。すでに紅葉もあらかた終わり、あと1〜2週間もすれば雪に被われるのであろうが、あるいは1〜2週も早ければ観光客が押し寄せていた可能性はある。たしかに眺望はよく、ときおりクルマを停めてはカメラを取り出して冬枯れの山地に向けてみたりもする。
やがて行きついたサミットらしき地点には「津軽峠」なる木製の看板があった。降りてみると「マザーツリー」なる案内板があり、400メートルほどだというので歩いてみる。ウッドチップが敷かれているのか、妙な感触の道を歩いてたどりつくと、簡単な柵を施されたブナがあった。樹齢400年。しかし、ブナとしては異例ともいえる樹齢らしい古木が植物園よろしくみせものにされているとしか思えない。へんてこりんなヨコモジのレッテルを貼り、これでは却って観光客らの慰みものにされ樹が痛んでゆくだけではないのか? そんなことを思わせる光景である。サミットのすぐ先には鋪装された駐車場やトイレがあった。ここはお手軽観光コースの一種にされているらしい。
そんなこんなでおよそ2時間半をかけて岩崎にたどり着いた。ほんの瞥見したにすぎないなかであれこれ記すのは気がひけるが、やはり危険なニオイがした。世界遺産の看板のの裏側で合法的に痛めつけられている周辺地域。核心部はたしかにいいだろう。だが、本気でこの“遺産”を守ろうというのであれば、たとえすでにあった道だとしても思いきって廃道にするぐらいの施策があってもいいのではないか。路面維持のためにコンクリートで被われた斜面などをみせつけられると、さらにそんな気持ちになってくる。廃道が難しいのであれば、マイカー規制をするぐらいの手立てがほしい。むろん観光遊技施設などもってのほか。ビジターセンターなど最小限のハコぐらいはあってもいいが、いかに周辺地域だとはいえ、この貴重な天然の大地を町なかの公園よろしくいじくるべきではない。それとも、わが国における世界遺産登録というのは、公園化への入口なのだろうか?
そんな道をお手軽ドライブで伝い、なんとも複雑な気持ちにされされMASITAという今回の話でございます。
白神山地と聞いて世界遺産を思い浮かべるひとは少なくないだろう。ユネスコにより1993年に自然遺産として登録されたものだが、13万ヘクタールといわれる同山地のうち、登録の対象とされたのはおよそ1万7000ヘクタールにすぎず、その後の開発が気になっているところだ。たしかに指定地域では開発を行なわないタテマエになっており、核心部では入山制限が布かれ禁漁(猟)とされるなど一定の保護施策はみられる。しかしいわゆる緩衝地域を含む周辺については、行楽客の増加による山荒れがみられるなど芳しくない話が聞こえてこないでもない。
五能線乗車中もそうだったが、クルマで現地を見回してみれば、「世界遺産」のキャッチとともに観光客向けのハコやら看板やらがやたらに目立つ。五能線は数年ぶりの乗車だったが、そういえばこの路線もなんだか俗っぽさが目立つようになったにゃぁ。
以前にも記したとおり、オレ自身は世界遺産というカテゴライズに対して疑念を抱いているが、ここでもまたその嫌悪の対象として「世界遺産イコール観光資源」という図式をみせられるハメになったのである。
白神ラインへは弘前から西目屋を経由し、つづら折れのダートで山地を縦断、日本海ぞいの岩崎に抜けるコースをとった。
ちなみに、矛盾するようだけれど、山道を走るのは嫌いではない。ときおり立ち止まって景色を眺めたりしながら曲がりくねる細道をゆくのは面白いといえばいえるからだ。とはいえ、走りながら「どうしてここにこんな道が?」と面白くない気分になるのも事実で、この日のドライブもまさにそれ。仮に弘前から岩崎やら深浦に行くとすれば海岸ぞいの国道101号線を使うほうが速く快適。よほどのことがなければ、わざわざこんな羊腸のダートを選ぶことはないだろう。もちろん沿線に集落はない。とすれば、考えられるのは林業のほかなんらかの開発のための先進道路ということになるのだが、なんにしてもよくわからない道である。
そこここで土木工事が行なわれているのは冬に備えての補修なのか、それとも鋪装化を含む開発なのか。いままさにパワーショベルが轟音をたてている現場もあれば、支線の入口に「この先工事中」などと記した標識があったりする。一見するとただの森なのだが、あるいはその奥にはショッカーが登場しそうな瓦礫の山かなにかがあるのかもしれない。そして先々の開発を予想させるただし書き。
「白神ラインは整備中です。まだ砂利道が多く(攻略)」
そんななか現れた観光施設。ログハウスふうのハコや、アスレチックを模した滑り台なんてのもある。大型の観光バスが停まっている。さぞや運転はたいへんだったのであろう。ここにも世界遺産の文字がある。まぁ、いちいち目くじらをたてるほどのことではないが。
この日は、平日ということもあったのか、工事関係車を除けばほかのクルマとはほとんど出会わなかった。すでに紅葉もあらかた終わり、あと1〜2週間もすれば雪に被われるのであろうが、あるいは1〜2週も早ければ観光客が押し寄せていた可能性はある。たしかに眺望はよく、ときおりクルマを停めてはカメラを取り出して冬枯れの山地に向けてみたりもする。
やがて行きついたサミットらしき地点には「津軽峠」なる木製の看板があった。降りてみると「マザーツリー」なる案内板があり、400メートルほどだというので歩いてみる。ウッドチップが敷かれているのか、妙な感触の道を歩いてたどりつくと、簡単な柵を施されたブナがあった。樹齢400年。しかし、ブナとしては異例ともいえる樹齢らしい古木が植物園よろしくみせものにされているとしか思えない。へんてこりんなヨコモジのレッテルを貼り、これでは却って観光客らの慰みものにされ樹が痛んでゆくだけではないのか? そんなことを思わせる光景である。サミットのすぐ先には鋪装された駐車場やトイレがあった。ここはお手軽観光コースの一種にされているらしい。
そんなこんなでおよそ2時間半をかけて岩崎にたどり着いた。ほんの瞥見したにすぎないなかであれこれ記すのは気がひけるが、やはり危険なニオイがした。世界遺産の看板のの裏側で合法的に痛めつけられている周辺地域。核心部はたしかにいいだろう。だが、本気でこの“遺産”を守ろうというのであれば、たとえすでにあった道だとしても思いきって廃道にするぐらいの施策があってもいいのではないか。路面維持のためにコンクリートで被われた斜面などをみせつけられると、さらにそんな気持ちになってくる。廃道が難しいのであれば、マイカー規制をするぐらいの手立てがほしい。むろん観光遊技施設などもってのほか。ビジターセンターなど最小限のハコぐらいはあってもいいが、いかに周辺地域だとはいえ、この貴重な天然の大地を町なかの公園よろしくいじくるべきではない。それとも、わが国における世界遺産登録というのは、公園化への入口なのだろうか?
そんな道をお手軽ドライブで伝い、なんとも複雑な気持ちにされされMASITAという今回の話でございます。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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