9日から15日まで、今年4度目の韓国散歩を楽しんできた。今回は初日の夜のうちに大邱入りし、翌朝から鎮海〜晋州〜木浦〜光州〜群山〜保寧〜洪城……と、もちろん列車で周回。天気には恵まれたものの強気の陽気との戦いで、異国の夏をそれなりに堪能できたと思う。取材としての実入りも多く、充実した1週間であった(取材の模様は「つれなのふりや」上に適宜アップしています)。
ある田舎町の食堂で、こちらが日本人とわかるや、「前にも日本からお客さんが来てくれてね」と写真と手紙とを店のアジュンマがみせてくれた。まぁ、みせてくれたとはいえ、あくまで他人同士のやりとりなので日本語で書かれたその中身は読まなかったが、店での楽しかった思い出を礼状にしたためたものである。それはとてもいいことではある。しかし「嗚呼、ジャパニ〜ズだにゃぁ」と恥ずかしくなったのは、写真に添えられた説明であった。ようは、映っているだれがだれでというふうに別紙にトレースしてあるんだが、それぞれの名前を一所懸命にハングルで記してあるのはいいとして、どういうわけか姓名順をひっくり返しちゃってるんですよ。「マコト ウエムラ」のように。断っておくけれど、たとえば欧米人宛というのではなしに、日本人と韓国人とのやりとりですからね。
帰国前日に泊まったソウルの宿では、ニューヨーク州出身のアメリカ人と知り合った。2時間ほど他愛のない話で盛り上がったものだったが、自己紹介をするときに「ウエムラ マコト」とした。アドレス交換も「UEMURA,Makoto」とした。ただし、「マコトがあなたの国でいうファーストネームだ」というひとこともつけ加えた。しかし、そんなことは彼も承知の介。こんなことは、日本で立ち話をしたユダヤ人やインド人との間でもあったことだが、「そんなことは常識でしょう」というのが彼らの反応であり常識というものだ。
この彼は25歳。韓国の学校(ハイスクールと説明していたが、聞き直してもカレッジではなかった)に通っているという。わりとゆっくりめにしゃべってくれた(日本語がわからないので英語でつきあった)のでオレにしてはなんとか会話が成立したというのはいいとして、面白いと感じられたのは、初対面のそれも外国人と相対してのハッキリとした意思表示であった。こちらの英語の語彙があまりにも乏しいこともあって、話の大方の内容は音楽やら韓国の女のコがどうだとかそんなものなのだが、たとえばミュージシャンの話題にしても、相手の趣味はさておき自分が持つ評価をきちんと伝えてくる。もちろんこちらも望むところなので、好き勝手に応じてみる(25歳にしてはやたらいに古い音楽が好きだったり、プロレスの話題になったさいにハリー=レイスやテリー=ファンクなどの懐かしい名前が出てきて目頭がじ〜んときた。お互いに「WCW」に罵声を浴びせて大笑いもしたが)。しかしそんな他愛のない流れのなかでもナマグサイ話がいくらかは出てくる。知り合いの韓国人や中国人が、日本に対して好意を持っている部分とよくないと感じているところとがあるといった話を彼がするので、「それはわかる。オレ自身は日本をいい国だと思っているが、日本政府は最悪だ」と応じると、「そのとおり! 日本政府はよくない」とハッキリ言うのだ。
断っておくが、この彼の反応をオレは認めている。もちろん、たまさか意見が一致したからとかそういう意味ではない。初対面の年上の外国人に対して、その相手の国について自分の考えを述べることを評価しているのである。オレも言ってやった。「キミの国の戦争はよくない」。彼は、こちらの目をじっと見据えたまま、「そうだ」と同意してきた。もう少しいくらかでもマトモに言葉を操れたらもっと話題の発展もあったのだろうにとちょっと悔しい思いもするのだが、ここで大事なのは英語をしゃべれることにあるのではなく、その言葉を使って相手の意見にきちんと耳を傾け、自分の考えをハッキリと伝えられるかというところにある。わが国では、小学校段階で英語の授業を導入するだのという話になっているけれど、じゃぁそこで習った言葉をどのように活かしていけるのかという部分にこそ教育の重点を置くべきであろう。しかしそれは、仮に母語同士であっても自分の意思ひとつきちんと伝えられないようなムキが少なくない状態をみるにつけ、英語教育などとはまったく別の問題であるとの思いを強くする(もっとも、“日本人的”ななかにも素晴らしいところは多々あるのはいうまでもない。日本の文化にもっと誇りを持つべきだが、しかしそれを言葉に拘わらずどれだけ相手に伝えられるだろう?)。
彼との間の「日本政府は最悪だ」のくだりについて、ちょっとだけ補足すると、彼が「ドイツにも大戦時の問題があったが、戦後について日本とは異なる対応があった」と言うので、「そのとおり。日本政府は歴史の問題についてクリアにしていない。そこが問題だ」と応じた。彼も「そう思う」と答えてきた。これこそ「もっと言葉がわかれば」の典型的場面といえるというものだったが、逆にいえば、言葉がわかってもこうしたせっかくの話題についてゆくことができないのではどうしようもないともいえる。
さて、われわれ日本人は、自国やその周辺国の歴史について、どれだけモノ(年表的知識ということではなく)が言えますかな? 個人的には大和朝廷がどうのとか戦国武将がどのとかそういう古代や中世よりも、近代のほうがより重要だと思うのだが。
こんなことをあらためて記すのは、帰国前日のテレビニュースで日韓間でまたもや竹島問題が再燃していることを知ったからである。
正直に白状すれば、竹島問題については十分な知識がなく、その乏しい知識からはとても自分自身の意見をまとめられないと考えている。つまり、日本側にしても韓国側にしても、それぞれが自国の領土だと主張するのはムリもない歴史を辿ってきたともいえそうだし、ではなんらかの前進ということではどういう展開が考えられるのかといった点についても考えがまとめにくい。しかし、「一朝一夕に解決できる問題ではなく、あくまで平和的に解決を図らなければいけない」と高村正彦外相が述べたというのは、ここまでの両国の動きを無視したあまりにも幼稚かつ盲目的だといわざるをえないし、(韓国側と同様に)この島を自国の教育現場でナショナリズムと結びつけるかのように利用することには大いに疑問を挟まざるをえない。もちろん、日本側のやり方に対して「対馬も韓国領だと対応していくことが歴史の流れから見て意味のあることだ」だのと応じてきた韓国のハンナラ党の動きも、極めて低いレベルである(ただし、「日本メディアは国益のために政府と歩調を合わせるだけでなく、談合までしているのではとの印象も受ける」と鄭夢準氏(同党最高委員)の指摘は、わが国のマスメディア──とりわけ大新聞とテレビ──の実態をきちんと見抜いているとはいえる)。
この問題。欧米人の視点で書かれたごく短いコラムがあるのでざっと紹介しておきたい。ソースは『ロンリープラネット 韓国』(日本語版・メディアファクトリー)である(同書211ページ)。
著作権の問題もあるので最低限の引用にとどめておくが、「トット(独島)復帰を待ち望む」と題された一文は、「自分の家の近くに生えている木を想像してみてほしい」というくだりではじまる。実もならない樹。別段なにに使おうとも思わない樹。役に立たないから関心も持ってこなかった。そんな樹である。「ところがある日隣人が、それは自分の木だと公言すると、俄然その木が自分にとってとても重要なものになった」。
コラムは朝鮮半島が日本の占領下にあった1905年に日本が領有権を主張し名前を「竹島」と改めたことや、終戦後に建てられた慰霊碑が1952年に日本によって破壊された歴史に大雑把にだが触れている。そして、「ほとんどの日本人は竹島のことなど耳にしたこともないだろうが、多くの韓国人(中略)にとってトットは今でも身にしみる問題」としている(ここで書かれている「耳にしたこともないだろう」というのは、韓国人のそれと比較しつつも検討が必要に思うが、大筋ではあたっている。真剣に考えているひとびとがどれだけいるのかという点において。さらにここに記されたふたつのできごと──1905年と1952年──についてわが国でどれだけ知られているかという点において)。
その日本の一部メディア。
http://www.j-cast.com/2008/07/15023556.html
自国と近隣国との間の歴史について、自分たちの都合のいいようにしか解釈できないバカどもの主張には、毎度のことながらそのレベルの低さにアタマがクラクラしてくる。まだしも紹介した短いコラムのほうが事実に対して向き合っている。こういう一部メディアのような態度を、わが国では「井の中の蛙」という。
■それにしても。
国境だの領土だのといったレベルでは、たしかに結論を出すのは難しい問題であろうと思う。しかし、日本人として最低限忘れてはならないのは、かつてわが国があの国を侵略し不当に占拠したことがあるという事実である。そして、にも拘わらず戦後の謝罪や補償を十全にしてこない政府を持つという恥ずべき事実。ついでにいえば、この政府は外国および外国人に対してのみならず、自国民に対する補償すらおざなりにし続けているという事実もある。ソウルで知り合ったアメリカ人青年もこの点には気づいていた(これらが自分の国にも関わる問題だというのをどこまで理解できているかはわからないが)。こうした事実から目を背けては、あの国と国民とがどうしてここまで竹島(あるいは独島)にこだわるのかはいつまでも理解できないに違いない。残念ながら、上にリンクした「J-CAST」で取り上げられている各新聞、とくにSとYとには、そうした視点が見事に欠如しているように見受けられるのだが……。
帰国前日に泊まったソウルの宿では、ニューヨーク州出身のアメリカ人と知り合った。2時間ほど他愛のない話で盛り上がったものだったが、自己紹介をするときに「ウエムラ マコト」とした。アドレス交換も「UEMURA,Makoto」とした。ただし、「マコトがあなたの国でいうファーストネームだ」というひとこともつけ加えた。しかし、そんなことは彼も承知の介。こんなことは、日本で立ち話をしたユダヤ人やインド人との間でもあったことだが、「そんなことは常識でしょう」というのが彼らの反応であり常識というものだ。
この彼は25歳。韓国の学校(ハイスクールと説明していたが、聞き直してもカレッジではなかった)に通っているという。わりとゆっくりめにしゃべってくれた(日本語がわからないので英語でつきあった)のでオレにしてはなんとか会話が成立したというのはいいとして、面白いと感じられたのは、初対面のそれも外国人と相対してのハッキリとした意思表示であった。こちらの英語の語彙があまりにも乏しいこともあって、話の大方の内容は音楽やら韓国の女のコがどうだとかそんなものなのだが、たとえばミュージシャンの話題にしても、相手の趣味はさておき自分が持つ評価をきちんと伝えてくる。もちろんこちらも望むところなので、好き勝手に応じてみる(25歳にしてはやたらいに古い音楽が好きだったり、プロレスの話題になったさいにハリー=レイスやテリー=ファンクなどの懐かしい名前が出てきて目頭がじ〜んときた。お互いに「WCW」に罵声を浴びせて大笑いもしたが)。しかしそんな他愛のない流れのなかでもナマグサイ話がいくらかは出てくる。知り合いの韓国人や中国人が、日本に対して好意を持っている部分とよくないと感じているところとがあるといった話を彼がするので、「それはわかる。オレ自身は日本をいい国だと思っているが、日本政府は最悪だ」と応じると、「そのとおり! 日本政府はよくない」とハッキリ言うのだ。
断っておくが、この彼の反応をオレは認めている。もちろん、たまさか意見が一致したからとかそういう意味ではない。初対面の年上の外国人に対して、その相手の国について自分の考えを述べることを評価しているのである。オレも言ってやった。「キミの国の戦争はよくない」。彼は、こちらの目をじっと見据えたまま、「そうだ」と同意してきた。もう少しいくらかでもマトモに言葉を操れたらもっと話題の発展もあったのだろうにとちょっと悔しい思いもするのだが、ここで大事なのは英語をしゃべれることにあるのではなく、その言葉を使って相手の意見にきちんと耳を傾け、自分の考えをハッキリと伝えられるかというところにある。わが国では、小学校段階で英語の授業を導入するだのという話になっているけれど、じゃぁそこで習った言葉をどのように活かしていけるのかという部分にこそ教育の重点を置くべきであろう。しかしそれは、仮に母語同士であっても自分の意思ひとつきちんと伝えられないようなムキが少なくない状態をみるにつけ、英語教育などとはまったく別の問題であるとの思いを強くする(もっとも、“日本人的”ななかにも素晴らしいところは多々あるのはいうまでもない。日本の文化にもっと誇りを持つべきだが、しかしそれを言葉に拘わらずどれだけ相手に伝えられるだろう?)。
彼との間の「日本政府は最悪だ」のくだりについて、ちょっとだけ補足すると、彼が「ドイツにも大戦時の問題があったが、戦後について日本とは異なる対応があった」と言うので、「そのとおり。日本政府は歴史の問題についてクリアにしていない。そこが問題だ」と応じた。彼も「そう思う」と答えてきた。これこそ「もっと言葉がわかれば」の典型的場面といえるというものだったが、逆にいえば、言葉がわかってもこうしたせっかくの話題についてゆくことができないのではどうしようもないともいえる。
さて、われわれ日本人は、自国やその周辺国の歴史について、どれだけモノ(年表的知識ということではなく)が言えますかな? 個人的には大和朝廷がどうのとか戦国武将がどのとかそういう古代や中世よりも、近代のほうがより重要だと思うのだが。
こんなことをあらためて記すのは、帰国前日のテレビニュースで日韓間でまたもや竹島問題が再燃していることを知ったからである。
正直に白状すれば、竹島問題については十分な知識がなく、その乏しい知識からはとても自分自身の意見をまとめられないと考えている。つまり、日本側にしても韓国側にしても、それぞれが自国の領土だと主張するのはムリもない歴史を辿ってきたともいえそうだし、ではなんらかの前進ということではどういう展開が考えられるのかといった点についても考えがまとめにくい。しかし、「一朝一夕に解決できる問題ではなく、あくまで平和的に解決を図らなければいけない」と高村正彦外相が述べたというのは、ここまでの両国の動きを無視したあまりにも幼稚かつ盲目的だといわざるをえないし、(韓国側と同様に)この島を自国の教育現場でナショナリズムと結びつけるかのように利用することには大いに疑問を挟まざるをえない。もちろん、日本側のやり方に対して「対馬も韓国領だと対応していくことが歴史の流れから見て意味のあることだ」だのと応じてきた韓国のハンナラ党の動きも、極めて低いレベルである(ただし、「日本メディアは国益のために政府と歩調を合わせるだけでなく、談合までしているのではとの印象も受ける」と鄭夢準氏(同党最高委員)の指摘は、わが国のマスメディア──とりわけ大新聞とテレビ──の実態をきちんと見抜いているとはいえる)。
この問題。欧米人の視点で書かれたごく短いコラムがあるのでざっと紹介しておきたい。ソースは『ロンリープラネット 韓国』(日本語版・メディアファクトリー)である(同書211ページ)。
著作権の問題もあるので最低限の引用にとどめておくが、「トット(独島)復帰を待ち望む」と題された一文は、「自分の家の近くに生えている木を想像してみてほしい」というくだりではじまる。実もならない樹。別段なにに使おうとも思わない樹。役に立たないから関心も持ってこなかった。そんな樹である。「ところがある日隣人が、それは自分の木だと公言すると、俄然その木が自分にとってとても重要なものになった」。
コラムは朝鮮半島が日本の占領下にあった1905年に日本が領有権を主張し名前を「竹島」と改めたことや、終戦後に建てられた慰霊碑が1952年に日本によって破壊された歴史に大雑把にだが触れている。そして、「ほとんどの日本人は竹島のことなど耳にしたこともないだろうが、多くの韓国人(中略)にとってトットは今でも身にしみる問題」としている(ここで書かれている「耳にしたこともないだろう」というのは、韓国人のそれと比較しつつも検討が必要に思うが、大筋ではあたっている。真剣に考えているひとびとがどれだけいるのかという点において。さらにここに記されたふたつのできごと──1905年と1952年──についてわが国でどれだけ知られているかという点において)。
その日本の一部メディア。
http://www.j-cast.com/2008/07/15023556.html
自国と近隣国との間の歴史について、自分たちの都合のいいようにしか解釈できないバカどもの主張には、毎度のことながらそのレベルの低さにアタマがクラクラしてくる。まだしも紹介した短いコラムのほうが事実に対して向き合っている。こういう一部メディアのような態度を、わが国では「井の中の蛙」という。
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国境だの領土だのといったレベルでは、たしかに結論を出すのは難しい問題であろうと思う。しかし、日本人として最低限忘れてはならないのは、かつてわが国があの国を侵略し不当に占拠したことがあるという事実である。そして、にも拘わらず戦後の謝罪や補償を十全にしてこない政府を持つという恥ずべき事実。ついでにいえば、この政府は外国および外国人に対してのみならず、自国民に対する補償すらおざなりにし続けているという事実もある。ソウルで知り合ったアメリカ人青年もこの点には気づいていた(これらが自分の国にも関わる問題だというのをどこまで理解できているかはわからないが)。こうした事実から目を背けては、あの国と国民とがどうしてここまで竹島(あるいは独島)にこだわるのかはいつまでも理解できないに違いない。残念ながら、上にリンクした「J-CAST」で取り上げられている各新聞、とくにSとYとには、そうした視点が見事に欠如しているように見受けられるのだが……。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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