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猫池罵詈雑言雑記帳
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 物騒な事件が続発している。秋葉原で起きた無差別殺傷事件はさまざまな意味で社会的影響を及ぼしたが、22日には八王子で無差別殺人事件が起き、テレビをはじめとする“報道系番組”を占拠している状態にある。23日のNHK19時のニュースもこの事件をトップに挙げたばかりでなく、現場検証的な内容から一般市民の声、加害者肉親のコメントなどを事細かに報じていた。まるでワイドショウのようであったが、ふと思ったのは、この番組枠でここまで詳細に取り上げる必要が果たしてあるのかということであった。この事件そのものの深刻さとある種のブキミさを否定するつもりはないし、日常的な危機意識を喚起されられたという意味ではむしろ秋葉原の事件以上のものがあるが、そかしこれが19時のニュースで10分以上にわたって独占するほどの事件がどうかということについてはいささかの疑問を感じざるをえない。この陰で抹殺された内容はなにか。むしろこのほうが気になってくるというものだ。

 さて、今回の事件の容疑者も秋葉原の事件と同様に、職業あるいは社会的“身分”という意味できわめて脆弱な立場にあったことが伝えられている。その点に共通点を見い出し、社会的格差が犯罪の要因になっているとの指摘もあり、それそのものについては同意できる部分も少なくない。むろん、だからといって犯罪を免罪できるということになはらず、ここでしたり顔で論評のマネごとをするのは控えたいが、事件から派生することを含め、若干の感じたことを述べておくことにしたい。

 事件をめぐって、ある知人と話題になったさい、職業という当然に認められる社会参加すらマトモに認められない層が存在し拡大するなか、そういう立場にある人間が社会的責任をどうして会得することができようかという見方を耳にすることができた。同感である。社会人1年生のころ、紋切り型のセリフとして「いつまでの学生気分でいるな」というのをよく聞かされた。これそのものは間違いではなく、職業を得て社会参加をするなかでさまざまな責任ができ、その責任を通じてさらに社会参加をしてゆくということがあり、それは学生時代までのそれと明らかに異なるからである。
 仕事をするということは、いうまでもなく食い扶持を稼ぐということではあるけれど、単にカネを得るということではなく、仕事をすることによって社会参加をするという意味が大きい。また、そこの喜びがある。しかし、昨今の状況はその仕事をして不安定なばかりでなく、大手を振った使い捨てがまかり通り、いったんドロップアウトするや社会の敗者の烙印を捺される事態にすらなっている。いやむしろそのドロップアウトする以前の段階で正常な社会参加すら望めない社会にされてしまっているともいえる。政治評論家の森田実氏はこうした点に触れ、自国民と自国の経済を“宗主国”たるアメリカ合州国に差し出してしまったわが国の為政者の正体を明らかにしている(http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C04453.HTML
 そう。森田氏が指摘するとおり、日本はこれほどの酷い社会になってしまったのであった。

   しかし、本当に酷いなと感じるのは、じつはこうした犯罪をめぐる状況ではない。

 まずひとつ。「毎日新聞」が18日に報じたニュースによれば、背中に「死ね」と書かれたワイシャツを着た少年が警察からおかんむりを喰らったという事件にもならぬできごとがあったという。『ガーゼで右目を覆い、白色ワイシャツの背中に墨で「死ね」、灰色ズボンに「役立たず」と書かれていた』(同紙)というのだが、問題はここではない。とうの少年は、演劇の勉強をしていてちょっとした度胸試し(というか、少年的なシャレであろう。とはいえ不用意にすぎるが)だったととがめたJR駅員に応えたらしいのだが、これを受けて、JR職員が110番通報したしたところに引っ掛かりを感じざるをえないのである。たしかに、陰湿ないじめというのはいつの時代でもあり、そういう意味ではこういういたずらをとがめた駅員の態度はおとなとして正しいといえる。しかし、警察に通報するというのはいかがなものか。通報した人物ととがめた人物とは別のようなのだが、いかにも無責任に感じられないだろうか、通報した側のおとなが。そもそも、こんなものは警察の仕事ではないし、仮にいじめではないかと認識にしたのであれば、とがめた駅員のように直に問いただすか、あるいは学校に連絡を入れるべきであって、それを飛び越して110番というのは、単に面倒なことに関わりたくないから警察にでも任せておけばいいという安易かつ無責任な行動でというものである。そして、「いじめではないか」との住民からの連絡があったという高校の教頭。いわく「いじめの風評が広がると困る」だとさ。あんた教育者でもなんでもないよ。単なる小公務員の責任逃れでしかないなんとも羞悪なその姿。

 いまひとつは、福島で起きたプール事故をめぐる福島県教育委員会のドタバタである。
 これは、学校のプールで飛び込みをした高校生が死亡し、その“対応策”として県教育委員会が県立学校のプールでのスタート台からの飛び込みを全面禁止するという通達を出したという劇である。ネット報道では、この措置をめぐって、県の高校の水泳部員が困惑しており、練習ひとつできない状況にあることが伝えられている。水泳部員のそれも高校生ともなれば、いっぱしの経験者あるいは専門家であり、それ相応の訓練が積まれているハズである。ところが、教育委員会ときたら、十把ひとからげに飛び込み禁止というのだからシャレにならない。夏である。部員が目標にしてやりがいとしている総体もあり、このままではその生き甲斐すら奪ってしまうことになりそうだ。もちろん、水泳部関係者は「部活動だけでも早く禁止を解除して」としているのだが、この訴えに対する教育委員会の無責任ぶりときたらどうか。いわく「再発防止策が決まっておらず、夏休み中に解除するかは分からない」というのであるから笑止千万、バカ丸出しといっていい。なにが「再発防止策」だ。そんなものがあるハズないではないか。バカも休み休みに言えとはことのことである。
 考えてみてほしい。たとえば同じく高校生が通学路を歩いていたらクルマに跳ねられて亡くなった。そりゃぁ一大事だ! では、歩いて通学するのを禁止しよう。あるいは、高校生が電車内で痴漢に遭った。では、電車通学を禁止しよう。むろんこんなのは冗談のたとえではあるけれど、ではこの冗談と福島県教育委員会の措置との間に、本質的な意味でどれだけの差があるといえるだろう。管理することが責任を負うことにはならず、むしろ管理のポーズをとることによってその責任を逃れたいという意図がみえみえではないか! ここに挙げた両者とも。

 以前にも触れたが、子どもにケガをさせたらオヤが怒鳴り込んでくる。したがって子どもを遊ばせないというやり方と一緒だ。言い換えればロボトミー的手法ともいえるだろう。禁止してしまえば事件も起きず、したがって自らの責任を問われることもないだろうという無責任かつ卑怯な論理。事故のリスクは減らせるかもしれないが、それによってどれだけのモノが失われるのか、周囲のおとなはちょっとでも考えることがあるのだろうか(まぁ、これは「怒鳴り込む」オヤを含めてのことではあるが)。
 件の飛び込み事故などきわめて特殊な事例といえる(そもそも、学校教育の現場だけでも、どれだけの飛び込みがあったというのか?)。その希有な事故をことさら重大視し教育の自由を奪っているのである。ここには、社会人としての責任感など皆無である。

 さて、正常な社会参加さえままならず、社会的責任を実感することもできないひとびとがいる一方で、それを生み出す側がいる。その生み出す側、たとえばある種の企業は人材の使い捨てを奨励することによって、いみじくも犯罪を犯してしまったひとびとと同様に企業の責任の無自覚という意味などで反社会的行動に及んでいるのだ。残念ながら、たいていはその自覚すらないのであろう。さきごろ某コーヒー店チェーンが大幅リストラを発表するや、株価が上昇したなんていうニュースもあったけれど、従業員のクビを切ることが株価上昇という形で評価を得ている本末転倒な現代社会である。ホントはクビ切りをせざるをえないほどアブナイ業績であるハズなのに、クビを切ればいいという無責任が評価されるこの世の中とは、いったいなんなのだろうか。
 責任を放棄した先に待つものに想像を巡らすと、とても明るい未来はみえてこない。

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 レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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