2011Aug/01 中国は日本の鏡か？．．．の巻。鉄道事故などをめぐる誠意なき共通点

　中国高速鉄道事故報道花ざかり。つい先日、クルマのなかでラジオをつけていたら、専門家だか識者だかよくわからないが、事故をめぐるウンチクを延々と語っていたものだ。
　中国当局の対応もあり、事故の直接の原因や背景などがハッキリしていない段階だが、はたえるかな、よくよく聞いてみればその多くは毒にも薬にもならない一般論であり、あるいは推測にすぎなかった。それはいまのところそうかもしれない。だが、同時に語られる「日本では安全」「日本では起こり得ない事故」といった“安全神話”の類にはクビをかしげざるをえなかった。そしてまた、中国当局がしでかしている隠蔽工作の類が、あたかも中国独自のセンスであるかのようなモノ言い。そこから感じられるのは、事実報道云々ではなく、これらは中国の失態をタネに溜飲を下げてればいいという低レベルのエンタテイメントではないかということであった。

　たしかに、今回の鉄道事故はもとより、中華人民共和国には問題点が多々ある。原因はさておいても、ああした大事故が現実に発生したことからしてすでに常軌を逸している。強引な撤去作業や取り沙汰されている人命軽視の姿勢は野蛮ですらあると思う。そのほかの事象でいえば、インターネットを含む国民への管理と弾圧。わが国を含む他国との軋轢（歴代自民党政権とならんで、北朝鮮金王朝を延命させ利用している点も指摘しておかなければならない）。
　だが、はたしてわが国のとりわけマスメディアと政治は、そうした中国の暗部や失態をどこまであげつらうことができるというのか。鉄道の件でいえば、拙ブログの「“先進的”の驕りと錯覚の巻」で少し触れておいた。いまいちど繰り返しておこう。

　・・・この実績はまさに「先進的」な鉄道技術をわが国が持っているその証拠になろう。だが、そうした「先進的技術」を持ちながら起きているいくつもの大事故はどうか。さきの北海道旅客鉄道におけるトンネル内列車火災。あるいは西日本旅客鉄道による福知山線脱線事故。北海道では幸いにして死者こそ出なかったものの、一歩間違えば大惨事であった。見落としてはならないのは、これらがいずれも（ＪＲ西日本では最新型の保安装置が設置されていなかったとはいえ）その「先進的」な保安システムに支えられたわが国の鉄道で起きたという事実である。中国でのそれは「先進的」との錯覚があったかもしれないが、わが国ではその弁が通用しないのである。

　わが国の鉄道でも、形こそ違えど、双肩しうる重大事故が、それも近年になって起きているのである。この点だけでもわが国鉄道もまた絶対安全などありえず、“安全神話”の類がいかに愚かしいかが理解できるのではないだろうか。そして今般の原発事故。日本という先進国の政府や世界一流の部類に入る大企業、財界がこぞって「安全」と謳い続けてきた挙げ句の大事故。しかも規模こそ違えど、原子力関連の重大事故はこれがはじめてではないという事実。そして、西日本旅客鉄道株式会社福知山線脱線虐殺事故と原子力事故とは、共通してカネモウケ優先の論理がその背景を覆っている……。
　くわえて愚かしいのは、事実を明らかにしなければならないなかで、相当の隠蔽が現実に起きているということだ。ＪＲの事故では会社側の説明が二転三転しいまだに揉めている最中だが、原発もまた然りで、国民のなかには東京電力や国の発表をどこまで信じていいのかという疑念が蔓延しつつある。いま現在の原発事故現場の状況は本当のところどうなのか。日々タレ流されている電力使用状況の類は信頼できるデータなのか。そして、いまも続く原発や原子力開発にからむカネ、カネ、カネ。ウソ八百の説明に加え札束で住民を騙してつくりあげてきた原子力施設の数々。そうしたことが、この“自由主義国家”ニッポンにあってなおごく限られた報道しかなされていないという事実。嗚呼、隠蔽国家ニッポン！

　最近になって、九州電力などでは原発推進のための“やらせ”発言などが暴露された。あるいは多額の税金を投入してのインターネット上での発言監視（回線断絶こそしていないようだが、こりゃぁ中国と似たり寄ったりの発想でありますな）。なども明らかになったが、あんなものは氷山の一角にすぎないだろう。結果として大きな事実の隠れみのにされてオシマイというのがせいぜいであり、ああした連中がいかにルール違反をやらかし、重大事故を起こしたところで、たいした罪に問われることがないのも日本という国なのである（それどころか、被害地域住民に対する十全な補償すらなされないのがわが国の実態だ）。
　しかしコレ、外国からはどうみられているんだろうねぇ。隣国のていたらくに溜飲を下げているのはのんきな日本人だけで、案外「メクソハナクソ」「五十歩百歩」ぐらいに思われているのではあるまいか？　“安全神話”のオオボラと現実に対する国を挙げての誠意なき態度。なんつうか、「おまえら似たもの同士なんだから、もっと仲よくできないのかよ」とでも笑っているかもしれませんね（笑）。

　繰り返すが、中国の鉄道事故をめぐる諸問題は、ほかならぬわが国および日本国民にとっての他山の石である。極論すれば、外国の一事故や内政をめぐる問題などその国の勝手というものだが、少なくとも冷笑の類はわれわれのためにこそ禁物だ。