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猫池罵詈雑言雑記帳
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 近代兵器に身を固めていながら、近代的訓練をこれっぽちも受けていない兵士……。書名は失念したが、アフリカを主舞台にしたルポルタージュにそんな記述があったのを思いだす。中華人民共和国で起きた高速鉄道事故である。

 報道から判断すると、およそ近代鉄道の常識では考えられないレベルのお粗末な事故だったようだ。なにしろ、高速鉄道の追突事故である。現代中国の、それも都市間鉄道である。発展途上地域などでみられるような老朽化したまま保守すら放置されて運営されている鉄道などとは根本的に異なるハズである。なにしろ中国鉄道省みずからが「中国の高速鉄道技術は先進的」(事故後24日会見)と豪語したのである。事故の状況については各報道に委ねるが、その“先進的”の実態はどうなのか。
 最高時速275キロに設計された車両で時速350キロの営業運転が実施されていたともいわれるが、けっして十分とはいえない事実報道(公開)のなかからも、運転保安装置の不備(故障?)あるいは軽視しているという話もあり、鉄道における安全のイロハがどこまで徹底していたのかいささかアヤシイと思わざるをえない。だが、中華人民共和国はわが国のそれをしのぐ大規模な鉄道網を持ち、その歴史も深い。旅客・貨物ともに旺盛な需要に支えられ、鉄道愛好家の目でみれば憧れの鉄道でもある。そんな重厚な鉄道が常識でありえない大事故を起こした背景はこれから明らかになってゆくのだろうが、ひとつ仮説として思いついたのが、急ぎすぎた近代(高速)化である。

 北京〜上海間の高速新線が開業したのは記憶に新しいが、今回の舞台となった在来線の高速化を含めると、“高速鉄道”網はすでにわが国のそれをしのいでいるという。だが、高速化が施策として取り入れられたのは1997年という比較的新しい話であり、設計、建設、運営といったノウハウが十分に蓄積されていない可能性がある。本来ならば、ひとつひとつ実績と検証とを重ねながら技術を向上させるべきところを、一足飛びに高速化を果たそうとしたその結果が、今回の事故だったのではないかと思うのだ。

 あいにく現地の時刻表を持っていないのでダイヤを詳細に検証することができないが、代わりにわが国の新幹線をみてみれば、その難しさを窺うことができるだろう。たとえば東海道新幹線。現在、「のぞみ」「ひかり」「こだま」と速度や停車駅の異なる3種の列車が過密運転を続けている。当然、途中での追い越し(退避)が生じるが、それだけでなく車両(形式)ごとに異なる加減速などの性能差もまた影響してくるのだから、そのダイヤづくりと運行は極めてデリケートだといえるだろう。
 たとえば名古屋では2面4線のホームを巧みに使いひっ迫する線路容量をカバーしているのをみることができる。すなわち、後続列車が到着するタイミングでホーム対面で客扱いをしていた先行列車が発車、さらにその繰り返しである。名古屋折り返しの列車もあるので実態はさらに複雑だ。

 あるいはわずか2面4線の東京駅で東北(秋田・山形)・上越・長野の各新幹線の発着を捌くJR東日本。ここには車両基地などとのコンビネーションが含まれるが、それにしても高度な運営といえるだろう。肝心なのは、こうした運営が一朝一夕にして可能になったワケではないということである。明治以来発展してきたわが国の鉄道。1964年以来一歩一歩進化を続けてきたわが国の新幹線。そうした技術の伝統の積み重ねがあってこそ、現代ニッポンの高速鉄道があるのである。「のぞみ」や「はやぶさ」の超高速化もまた一緒だ。言い換えれば、表づらの技術さえ模倣すれば大丈夫だろうといった類の錯覚と驕りとが中国の鉄道当局にあったとはいえまいか? 中国のそれは、プールしか知らないスイマーがいきなりドーバー海峡に挑んだようなものではないのか。

 事故はわずか1日で復旧し、その過程において事故車両を破壊したうえで埋めたなどのとんでも施策も伝えられている。当局はあれこれ言い繕っているようだが、どうみたって証拠隠滅である。国家を挙げての証拠隠滅とは、あの国には事実を明らかにするという常識すら通じないのだろうか(ケースは大きく異なるが、これでは日本の右翼をうれしがらせるだけであろう。事実に対する誠意という点において。メクソハナクソである)。まっ、いくらか巧妙なだけで、わが国も似たり寄ったりかもしれないが(笑)。
 こうしたことに関して、中国市民からも疑問が噴出しているという。あたりまえだ。軍事的問題といい、昨今なにかと“負”の話題にのぼる中華人民共和国。そうした一連に関し、一般市民はどう捉えているのだろうかと思う。

 ところで、一部の報道では中国の事故と対比しつつわが国の鉄道の安全対策を絶賛するものがみられた。さきの大震災で東日本旅客鉄道がひとつの重大事故を起こさなかったのは立派で、とりわけ津波からの避難を滞りなく誘導できた常磐線の例などは賞賛にあたいすると考える。背景のひとつには新幹線はもとより完備された保安システムが十全に働いたことが挙げられるが、この実績はまさに「先進的」な鉄道技術をわが国が持っているその証拠になろう。だが、そうした「先進的技術」を持ちながら起きているいくつもの大事故はどうか。さきの北海道旅客鉄道におけるトンネル内列車火災。あるいは西日本旅客鉄道による福知山線脱線事故。北海道では幸いにして死者こそ出なかったものの、一歩間違えば大惨事であった。見落としてはならないのは、これらがいずれも(JR西日本では最新型の保安装置が設置されていなかったとはいえ)その「先進的」な保安システムに支えられたわが国の鉄道で起きたという事実である。中国でのそれは「先進的」との錯覚があったかもしれないが、わが国ではその弁が通用しないのである。
 そこには大雑把にふたつの背景がみえてこないだろうか。ひとつは機械的技術に対する過信。いまひとつは企業センスとしての安全軽視。こうなってくると、中国でのあの惨事は、まさにわが国の鉄道にとっての教訓、“他山の石”ということがいえるのかもしれない。
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