世の中には心底かわいそうな人間がいる。それは、たとえばなんらかの病気を患っているとか、あるいは極度の貧困で生活がままならないとか、またあるいは外国からの理不尽な爆撃によって肉親を殺されたとか、そういう立場のひとを慮ってのことではない。むしろ社会的立場も経済的にも恵まれており、にも拘わらず人間の本性という部分で哀れまざるをえないある種のひとびとにこそ向けられる皮肉な感情なのである。
昨日ふれた航空自衛隊幹部の論文問題は、とうの田母神俊雄前航空幕僚長が更迭後に定年という形で退職を命ぜられるという展開になった。
※http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000014-maip-pol
報道によれば、防衛省としては懲戒免職すら検討されたなかで、“異例”ともいえる定年退職となったという。なんでも、懲戒処分にするためには、明確な規律違反の事実があることとともに本人の同意(“罪状”を事実として認めるということだろうか?)が必要だといい、ようは手続きの煩雑さと世論からの批判を一刻も早く躱したいという思惑が働いたということなのであろう。簡単に言い換えれば、あくまで身内をかばったということである。しかし、そんな甘い処分のため、数千万円(!)にもおよぶ巨額の退職金とともに件の論文によって得た懸賞金300万円(! ほかの幾多の論文懸賞の類のそれと比較されたし!)もきちんと受領する方向にあるようだ。期近の報道の論調をみていると、まずはそのあたりに世論の批判が集まりそうではある。
さて、この処遇に関して、とうの本人は国会の参考人招致に応じる姿勢をみせるなど“独自の史観”を今後も主張し続けたいようである。大いに主張されたし。だが、いかにその史観をぶったところで、自らが暴露したその幼稚性と無知ぶりに関してますます世に知られてゆくことを、できる範囲でいいから理解してもらいたいものだと思う。
3日夜に開かれたという記者会見の席で、田母神氏は「政府見解に一言も反論できないとなると北朝鮮と同じだ」と主張したという。よろしい。言論の自由は認められなければならない。しかし、まずはご自分がどういう立場にある人間なのかということを、このひとが自覚していなかったことはこれで明らかになったハズだ。これが彼らの言う“民間人”であったり、あるいはああした公式の場の表明ではなく個人の考えとして持っている限りは問題ないのだが、航空幕僚長という重職にとって、そういうことがどこまで認められうるのかということを、このひと自身がその権力のなかで行使しなかったと思うからだ。
そして、この政府見解の意味をさっぱり理解できていないことの告白もしている。政府見解はいちおうは見解としているが、これは事実そのものが問題とされている。事実に基づいて国として立場を表明したものなのである。これを否定せんがために、国の認証そのものを否定しうるだけの別の事実を提示できるのであればまだしも、あんなレベルでいかに事実をゆがめようとしてもマトモに相手にするのもバカバカしいというものだ。それに、政府見解とて、氏曰くの「修正されるべき」だという「日本が悪い国だという認識」なんてどっこにもないと思うのだが。
もうひとつ。「北朝鮮と同じ」と類似の主張はほかにもありそうなので、その詭弁の正体(それも極めてていどの低い)について記しておこう。
コトは簡単。たとえば「即刻、日米安保を破棄せよ」、あるいは「日本の見解はなんら解決になっていない。もっと相手国を慮った戦後精算をすべきである」という意見が、同じく防衛省幹部あたりから表明されたら、このヒトどうするんだろうということである。さらに、たとえばナチスに関して日本の戦前ファシズムに対するそれなど及びもつかないほど激烈な禁止をしているドイツのような国は、このオッサンの感覚からするとやはり「北朝鮮と同じ」ということになってしまうのだろう。あの国で、「ナチスは正しかった」とでも言ってごらんなさい。さらに身近な国として、アメリカ合州国や大韓民国では共産党および共産主義的活動が(著しく)制限されている──韓国では極刑の可能性もある──けれど、これもまた「北朝鮮と同じ」ということのようだ。
まっ、こんな低レベルであれこれあげ足をとってもなんにもならないが、「戦後教育による侵略国家という呪縛が国民の自信を喪失させるとともに、自衛官の士気を低下させている」という氏の言を借りるならば、「戦前・戦中教育の呪縛から覚醒できない哀れな男が国民に恥をかかせるとともに、……」ということになろう。戦前・戦中教育を信奉するのもまた自由ではあるが、それ以前に事実は事実として認めなさい。そんなあたりまえのことすらできない人間について、もはや怒り云々ではなく「お気の毒に……」としか言いようがないのである。
※http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000014-maip-pol
報道によれば、防衛省としては懲戒免職すら検討されたなかで、“異例”ともいえる定年退職となったという。なんでも、懲戒処分にするためには、明確な規律違反の事実があることとともに本人の同意(“罪状”を事実として認めるということだろうか?)が必要だといい、ようは手続きの煩雑さと世論からの批判を一刻も早く躱したいという思惑が働いたということなのであろう。簡単に言い換えれば、あくまで身内をかばったということである。しかし、そんな甘い処分のため、数千万円(!)にもおよぶ巨額の退職金とともに件の論文によって得た懸賞金300万円(! ほかの幾多の論文懸賞の類のそれと比較されたし!)もきちんと受領する方向にあるようだ。期近の報道の論調をみていると、まずはそのあたりに世論の批判が集まりそうではある。
さて、この処遇に関して、とうの本人は国会の参考人招致に応じる姿勢をみせるなど“独自の史観”を今後も主張し続けたいようである。大いに主張されたし。だが、いかにその史観をぶったところで、自らが暴露したその幼稚性と無知ぶりに関してますます世に知られてゆくことを、できる範囲でいいから理解してもらいたいものだと思う。
3日夜に開かれたという記者会見の席で、田母神氏は「政府見解に一言も反論できないとなると北朝鮮と同じだ」と主張したという。よろしい。言論の自由は認められなければならない。しかし、まずはご自分がどういう立場にある人間なのかということを、このひとが自覚していなかったことはこれで明らかになったハズだ。これが彼らの言う“民間人”であったり、あるいはああした公式の場の表明ではなく個人の考えとして持っている限りは問題ないのだが、航空幕僚長という重職にとって、そういうことがどこまで認められうるのかということを、このひと自身がその権力のなかで行使しなかったと思うからだ。
そして、この政府見解の意味をさっぱり理解できていないことの告白もしている。政府見解はいちおうは見解としているが、これは事実そのものが問題とされている。事実に基づいて国として立場を表明したものなのである。これを否定せんがために、国の認証そのものを否定しうるだけの別の事実を提示できるのであればまだしも、あんなレベルでいかに事実をゆがめようとしてもマトモに相手にするのもバカバカしいというものだ。それに、政府見解とて、氏曰くの「修正されるべき」だという「日本が悪い国だという認識」なんてどっこにもないと思うのだが。
もうひとつ。「北朝鮮と同じ」と類似の主張はほかにもありそうなので、その詭弁の正体(それも極めてていどの低い)について記しておこう。
コトは簡単。たとえば「即刻、日米安保を破棄せよ」、あるいは「日本の見解はなんら解決になっていない。もっと相手国を慮った戦後精算をすべきである」という意見が、同じく防衛省幹部あたりから表明されたら、このヒトどうするんだろうということである。さらに、たとえばナチスに関して日本の戦前ファシズムに対するそれなど及びもつかないほど激烈な禁止をしているドイツのような国は、このオッサンの感覚からするとやはり「北朝鮮と同じ」ということになってしまうのだろう。あの国で、「ナチスは正しかった」とでも言ってごらんなさい。さらに身近な国として、アメリカ合州国や大韓民国では共産党および共産主義的活動が(著しく)制限されている──韓国では極刑の可能性もある──けれど、これもまた「北朝鮮と同じ」ということのようだ。
まっ、こんな低レベルであれこれあげ足をとってもなんにもならないが、「戦後教育による侵略国家という呪縛が国民の自信を喪失させるとともに、自衛官の士気を低下させている」という氏の言を借りるならば、「戦前・戦中教育の呪縛から覚醒できない哀れな男が国民に恥をかかせるとともに、……」ということになろう。戦前・戦中教育を信奉するのもまた自由ではあるが、それ以前に事実は事実として認めなさい。そんなあたりまえのことすらできない人間について、もはや怒り云々ではなく「お気の毒に……」としか言いようがないのである。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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