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猫池罵詈雑言雑記帳
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 東京都の言論弾圧条例は、まんまと権力側の思惑どおりに成立してしまった。瀬戸際で起きた民主党の寝返りなども伝えられたが、そんなものは「民主党だから」で片づく類の瑣末なできごとであり、本質はファッショ化を増大する石原一派と東京都のつけあがりを看過してきた大衆の愚かしさにこそある。石原都政が権力側のみの論理で数々の弾圧を繰り広げていることは、民主的な常識を持つひとならばたいていはわかっている。たとえば、「強制はしない」というときの首相の“言質”すら無視し教育現場などでなにをしてきたか。権力側が一方的に内心の自由に踏み込み、“合法”をでっちあげる。“敬う”気持ちを権利ではなく義務と化す愚。これだけを取り上げても、石原のおとっつあんが毛嫌いする中華人民共和国と変わらぬ思想統制であり、ファシズムの発露だと断言できる。

 今回の条例成立は、本質的にはこれと同じ思想統制につながる言論弾圧である。
 表向きの狙いはマンガとその周辺をターゲットに、ポルノを取り締まるというものらしく、それが青少年育成の健全化につながるという論理のようだ。たしかに、そういう志向のない人間からみると、「なんだこりゃ?」とクビをかしげたくなるようなエロマンガやエロゲーム、エロアニメの類はいくらでもある。おとっつあんでなくとも「こんなものおおやけに出すな!」というふうに考えているひとも少なくないハズで、その気持ちそのものは理解できる。だが、だからといって権力を行使して禁止し、取り締まればいいという問題ではないのではないか? あえて“あんなモノ”と言ってしまうが、その多くはごく限られた範囲にある表現でありメディアである。たとえば、エロマンガと取り上げてみても、基本的にはそれを読みたいひとのみがカネを払って買わなければ目にすることもないメディアであるハズだ。しかも対面販売であれば(青)“少年”が購入することがないタテマエにあり、にも拘わらず彼らの目に触れているというのは、ひとつには流通の問題であり、いまひとつは少年期ならではのごく自然な好奇心(成長の過程だ)ゆえといえる。
 オレ自身のことでいえば、大方の男子がそうであるように、少年期に異性や性に目覚めてからは、それなりに工夫をこらしてエロメディアの入手を試みたものだ。いまのように、ネットひとつでいくらでも無修正かつ過激なエロが入手できる時代とは異なり、一般で売られている成人向け週刊誌のグラビアなどがせいぜいだったが、そのたしなみ方(笑)も、そうやって自然と覚えてきたように思う(高校時代に、友人たちと持ち寄ったエロ雑誌で盛り上がったのもいい思い出である)。では、それで“不健全”になったかといえば、友人たちを含めそんなことは一切ないと断言できる(まったくの“健全”かどうかはいざしらずだが、では“健全”とはなんぞやという疑問も湧いてくる)。

 もちろん個人差はあって、そうして覗きみたエロから過剰な影響を受ける人間だっているのかもしれない。現代ならば、(成人になってからを含め)AVになんらかの影響を受けているケースもあるだろう。たとえば、AV作品のスタンダードともいえる“顔射”やコンドームなしの射精などをあたりまえと信じきってしまっているムキだってあるに違いなく、そういう点でみればその影響を懸念したくなる考えも理解できなくもない。あんなモノが大手を振ってるからいけないだというワケだ。だが、彼らはどうしてAVなどエロメディアの影響をそんなに受けているのか。むしろそのほうが問題の本質なのではないのか。言い換えれば、エロはエロとして楽しむのは結構、だけど現実の性はそればかりじゃないのだというその区別ができないのはなぜか。ひょっとすると、見てみぬフリを決め込んできた周囲のおとなたちにこそ問題があるのではないか。エロだけではない。大量殺戮ゲームと現実の殺人との区別がつかない。ゲームのなかの死と現実の死との区別がつけられない。そんな成長を許してきたのはいったいだれなのか、またそれはどうしてなのか。注意してほしいのは、そうしたゲームがエロメディアに触れて育ったことがイコール“変態”や“犯罪者”になっているわけではないという事実である。メディアはメディアとして、それを仮想世界として消化できるための教育をしてこない側にこそ、むしろ問題の本質はないのかと思うわけだ。少部数のエロマンガなど影響力はたかが知れている。明らかに悪辣なレベルを含めエログロはネットなどを通じていくらでも手に入る時代なのである。ということは、それらを封鎖することばかりでなく、受け手のための“教育”にもっと真剣に向き合うことこそが大切なのではないだろうか。

 さて、石原のおとっつあんらにかくも毛嫌いされたエロマンガの類だが、これを個人レベルでなしにマスとしての社会でみた場合、はたしてどれほどの影響力を持つのか、そこに疑問を感じる。いうまでもなく、性およびエロ表現は、年を追うごとに変化し、社会の受容の度合いも変わってきた。まったくの野放しといった時代もあったが、そうしたもののなかには自然な社会的合意をもって規制されたものもある。反面、エロマンガなどとは格段に異なる影響力を持つテレビなどの大手メディアがエロを、それもキレイゴトのように売り物にしてきたという歴史があることも忘れてはならない。家族団欒の時間帯なのに、ごく一般のドラマのなかに(ほとんど意味もなく)ベッドシーンが登場する。子どももみているような時間帯に飾りとして女性の入浴シーンが現われ、ご丁寧にオッパイまで拝ませてくれる。あるいはまた、単なる陰毛部分が無修正になっただけのヌード写真集を「ヘアヌード」などと銘打って「ヘアヌード解禁!」などと一般メディア(芸能・一般に拘わらないテレビニュースなど)で煽り立てる。“純情な”少年時代(笑)、正直にいえば、そんなニュースがオヤと一緒のときに流れると、それなりに恥ずかしい感じがしたものだが、問題のひとつは、そうしたエロシーンつきドラマやヘアヌード写真集の類の多くが、専門のエロマンガ会社などではなくれっきとした大手が扱っていた事実であろう。アヤシゲななんとか出版ではなく、天下のテレビなんちゃらにわが国を代表する出版社の某。ごく大雑把に社会的影響ということでみた場合、その度合いはエロマンガなど累も及ばないハズではないか(そういえば、実態はエログロ系風俗を描いた軽小説なのにも拘わらずなんとか文学賞の類を戴いたなんていう例もあるが、そうしてしかつめらしく流行したモノのなかには、石原のおとっつあん的センスでいう“悪影響”とやらを及ぼした例もあるかもしれない。むしろ堂々としているぶんだけ、その影響度は大きいもちろん、作品そのものに罪はなく、そんなのをありがたがる側のセンスにこそ問題があるのだが……)。

 断っておくが、だからそうしたもろもろを規制しろというではない。社会的な変化のなかで、そうしたものが出てくるのはむしろ自然のなりゆきである。エロに拘わらず、つぎつぎと新たな商品や表現が現われ、あるいは流行していったなかで自然に立ち消えたものもあれば、社会的合意もとに規制されていったものもある(風俗営業の歴史をみると案外おもしろい)。受け手側がそうしたもろもろと相対したときに、どうするか。それこそが真の社会的成長とはいえないだろうかと思うのだ。
 今回の石原条例は、社会的合意とはいえないばかりか、憲法が保障する表現の自由との関連においてもなんら合意が得られていない一方的規制だ(噛み砕いていえば、「社会的合意によらず、権力の介入・行使」ということ。言論で「(エロマンガは)よくない」と主張するのとは段違いだということである)。しかも、度を超した表現に対する規制の類であれば、現行のきまりや仕組みでもって対応できるし事実してきたのである。そのうわ載せを施す狙いはいったいなんなのか? 彼ら権力が望むのは、自分たち都合の悪い言論を規制することではないのか。だとすれば、それは中華人民共和国当局のそれといかほどの違いがあるというのか!?

 これまでの都政をみれば、その解釈がどこまで好きにされるかもわからず、思わぬ拡大解釈をされる危険性が極めて高い。言い換えれば、石原のおとっつあんご本人の出世作の類だって、いつなんどき規制を受けるかわからないシロモノをこしらえてしまったのである。そんなモノを、たとえ“元”であろうと表現者であったハズのモノ書き崩れがつくったことの愚を、はたしてあの男は理解することができるのだろうか……?

*参考リンク:
 エロマンガ編集者の塩山芳明氏が、この問題をスパッとえぐり出している。ぜひご一読を!
「漫画表現への都条例改悪による弾圧の本質は、納税者いじめにこそあり。"青少年保護”を錦の御旗に、公金をしゃぶり尽くそうとする裏金ハレンチ役人の腐臭まみれの魔手から、打出の小槌をただちに奪い返せ!!」
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