わが国はいうまでもなく医療先進国である。これは、なんらかの病気に対する診療・治療が優れているというだけでなく、公衆衛生が幅広く確立し普及していることも含まれる。衛生上の整備という点では、たとえば上下水道の整備などが必須であって、もちろん単純に医療の問題だけではないけれど、国民が安心して暮らす社会ということで、日本の状況は先進国のレッテルに恥じないレベルにあるといえよう。同時に、国民皆保険制度がそれを強固なものにする重要な位置づけを持つ。衛生的な環境でかつ医療制度を公的にフォローする。これは世界に誇るべき制度であり、大いに胸を張るべきものだ。
14日夕方のNHKニュースで、郷土・千葉県における医療問題が短く報じられていた(http://www.nhk.or.jp/chiba/lnews/01.html)。
ここでも触れられている銚子市における公立病院の閉鎖問題は、すでに大きく報道されてきたが、地域医療を支えるべき大病院が経営破綻したという恐るべき事態であった。まさに医療の崩壊が足元からはじまっている。
破綻にいたる要因をひとことでくくることは避けたいが、リンク記事が紹介しているように、「4年前に国が始めた医師の臨床研修制度」がその重要な部分を占めていることはもはや広く認識されていることである。「東京新聞」は10月13日朝刊で関東1都6県の自治体病院の9割近くで医師不足が生じているという実態について、同紙が実施したアンケートをもとに報じており、『医師不足の理由(複数回答可)で最も多かったのは、二〇〇四年度に始まった新臨床研修制度の影響、「大学病院の医局に医師を引き揚げられた」』という現場の姿を明らかにしている(*注)。ようは国政の失敗なのである。なんら想像力を持ち合わせておらず、かつ責任の意味を知らぬ連中がゴリ押しした制度のツケが、早くも国民にもたらせられているということなのだ(しかも当時の責任者はあのコイズミスネオである!)。
そしてわが郷土。千葉県行政のこの腐り加減には正直かなりおったまげた。こんなすでにわかりきった失敗について、いまごろになって腰を上げるという愚劣さはどうか(しかもこれだって単なるポーズ以上のものでない可能性がある)。
現在、千葉県では県主導により医療施設の改廃が進められている。たとえば、成東などを含む山武地域では新たに地域医療センターの設立が取り沙汰されており、現在関係市町を巻き込んで議論が繰り広げられている。新病院ができるということだけみれば前進に思うかもしれないが、じつは県の計画の根幹にあるのは「地域の医療は地域で」という予算の切り離しであり、既存の県立病院を改廃することこそが狙いなのである(このことは、二次救急のみならず、三次救急──より専門性の高い救命救急──までを国や県ではなく地域自治体の責任にするということも意味する)。この地域にある成東病院と東金病院、大網病院というそれぞれの中核病院の拡充ではなく、なぜ新病院を立ち上げるのか。各地では、これらの病院の存続を危惧し県に訴えているのだが、それに対する答弁たるや「包括的支援を約束」を繰り返すのみで、なんら具体的な方針が示されていないのである。しかも、運営予算についても現状の3施設と抱合せ的内容であり(つまり予算不足は明らか)、建設費にいたっては起債で賄うという乱暴な計画だ。当然のごとく、医師の確保に明るい見通しがあるわけでもない。
わかっていながら手を打たず、いまさらのように動くポーズをとる愚劣なる行政。そしておそらくは事実や実態を知らぬ大勢のひとびと。そこにはびこっているのは無能と無知と無責任ではないのか? わが国が誇るべき先進的医療制度。その崩壊は、こうして着実に進められているのであろうか。
*注:
同記事では、医師不足のほかの要因として、「診療体制強化や医療の質向上のため」、「応募者がいない」、「医師が開業して辞めた」、「過酷労働が原因で医師が辞めた」が挙げられているが、「過酷労働が原因」というのもまた、「新臨床研修制度の影響」が少なからずあるといっていいだろう。
ここでも触れられている銚子市における公立病院の閉鎖問題は、すでに大きく報道されてきたが、地域医療を支えるべき大病院が経営破綻したという恐るべき事態であった。まさに医療の崩壊が足元からはじまっている。
破綻にいたる要因をひとことでくくることは避けたいが、リンク記事が紹介しているように、「4年前に国が始めた医師の臨床研修制度」がその重要な部分を占めていることはもはや広く認識されていることである。「東京新聞」は10月13日朝刊で関東1都6県の自治体病院の9割近くで医師不足が生じているという実態について、同紙が実施したアンケートをもとに報じており、『医師不足の理由(複数回答可)で最も多かったのは、二〇〇四年度に始まった新臨床研修制度の影響、「大学病院の医局に医師を引き揚げられた」』という現場の姿を明らかにしている(*注)。ようは国政の失敗なのである。なんら想像力を持ち合わせておらず、かつ責任の意味を知らぬ連中がゴリ押しした制度のツケが、早くも国民にもたらせられているということなのだ(しかも当時の責任者はあのコイズミスネオである!)。
そしてわが郷土。千葉県行政のこの腐り加減には正直かなりおったまげた。こんなすでにわかりきった失敗について、いまごろになって腰を上げるという愚劣さはどうか(しかもこれだって単なるポーズ以上のものでない可能性がある)。
現在、千葉県では県主導により医療施設の改廃が進められている。たとえば、成東などを含む山武地域では新たに地域医療センターの設立が取り沙汰されており、現在関係市町を巻き込んで議論が繰り広げられている。新病院ができるということだけみれば前進に思うかもしれないが、じつは県の計画の根幹にあるのは「地域の医療は地域で」という予算の切り離しであり、既存の県立病院を改廃することこそが狙いなのである(このことは、二次救急のみならず、三次救急──より専門性の高い救命救急──までを国や県ではなく地域自治体の責任にするということも意味する)。この地域にある成東病院と東金病院、大網病院というそれぞれの中核病院の拡充ではなく、なぜ新病院を立ち上げるのか。各地では、これらの病院の存続を危惧し県に訴えているのだが、それに対する答弁たるや「包括的支援を約束」を繰り返すのみで、なんら具体的な方針が示されていないのである。しかも、運営予算についても現状の3施設と抱合せ的内容であり(つまり予算不足は明らか)、建設費にいたっては起債で賄うという乱暴な計画だ。当然のごとく、医師の確保に明るい見通しがあるわけでもない。
わかっていながら手を打たず、いまさらのように動くポーズをとる愚劣なる行政。そしておそらくは事実や実態を知らぬ大勢のひとびと。そこにはびこっているのは無能と無知と無責任ではないのか? わが国が誇るべき先進的医療制度。その崩壊は、こうして着実に進められているのであろうか。
*注:
同記事では、医師不足のほかの要因として、「診療体制強化や医療の質向上のため」、「応募者がいない」、「医師が開業して辞めた」、「過酷労働が原因で医師が辞めた」が挙げられているが、「過酷労働が原因」というのもまた、「新臨床研修制度の影響」が少なからずあるといっていいだろう。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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