「日本人の核アレルギーは……」
とある知人(日本人)のセリフである。
9月25日、アメリカ合州国海軍横須賀基地に配備された原子力空母ジョージワシントンにからむ小さな発言だ。ごく身近でこんな言葉を耳にしたこともあり、いささかタイミングを逸したが、この配備問題について少しだけ触れておくことにしたい。
とある知人(日本人)のセリフである。
9月25日、アメリカ合州国海軍横須賀基地に配備された原子力空母ジョージワシントンにからむ小さな発言だ。ごく身近でこんな言葉を耳にしたこともあり、いささかタイミングを逸したが、この配備問題について少しだけ触れておくことにしたい。
この知人の発言にみるまでもなく(知人に限らず、こういう意見を聞くことは少なくない)、わが国では核エネルギー使用に対する反対あるいは慎重論は強くあり、今回の配備にさいしても多数の反対の声があがっている。だが、最初に言ってしまえば、こうしたことは日本人に特有の“アレルギー”でもなんでもないことを指摘しておく必要がある。
なるほど、たしかにアメリカ合州国だけをみても各地に原子力兵器の類は多数配備されている。たとえば、世界的リゾート地であるハワイでもそれは例外ではない。核と隣り合ってなかよく暮らしているかのようにさえみえる。そんな状況をスタンダードだと捉えれば、慎重論などナンセンスにみえてくるのかもしれない。だが、仮に周辺住民らがなんら抵抗なく核の配備を受け入れているとしたら、それは単なる無知のなせることによるたまさかの蜜月だといえるだろう。すなわち、彼らは核使用のリスクを知らないだけなのだ。知らなければ反対することなどできはしない。あるのはせいぜい消極的な賛成だけだ。言い換えれば、仮になんらかの大事故が起きた場合、こんな平和な状態などあっという間に反故にされ、彼らもまた知人言うところの“日本人”と同様に“核アレルギー”を発揮することになる。
思いだしてみてほしい。有名なスリーマイル島での原発事故(1979年)を受けて、アメリカの世論になにが起きたか? チェルノブイリ原発事故(1986年)が世界に投げかけたものはなにか? なにも日本人じゃなくとも、“核アレルギー”を発症することの格好の証明であったし、たとえばドイツ連邦共和国で“脱原発”が進められているのもよく知られた話であろう。ドイツでは2020年までに19カ所あった原発のすべてを閉鎖する予定だという。エネルギー活用という意味で、原発の是非を単純に判断しようとまでは思っていないが、日本人が核アレルギーならば、ドイツ人についてどのように評価すればいいのだろうという皮肉の例である。ようはアレルギーなどという問題ではないのだ。事実を知り、それをどのように活かすかというセンスと能力の問題にほかならないのではないか。それに、アレルギーどころか、わが国では過去に2度も国土に核爆弾が炸裂させられた経験があり、核実験によって被爆したという甚大な被害を経験している。慎重になってあたりまえである。しかも、とうのジョージワシントンは、この5月に火災事故を起こすという立派な前科持ちなのである。
さて、ここまでは前置きである。今回の配備が理解させたもの。そこを問題としたい。
配備にさいして、受け入れ側である横須賀市も難色を示してきた。蒲谷亮一市長をして、配備の再考を要請したほどである。しかし、日米両政府はそうした声を完全に無視、横須賀市民のおよそ7割が疑問視している(08年6月)ともいわれるなか、配備は計画どおりに完了している。
もちろん賛成の声もある。23日のテレビニュース番組「首都圏ネットワーク」(NHK総合18時10分〜)がこの配備問題を報道、そのなかで市民目線による賛否両論を伝えるシーンがあった。
「反対というが、じゃぁだれが日本を守ってくれるのだ?」
録画したわけではないので抄録になるけれど、そんな声も流された。このひとの言いたいのは、日米安保というのが文字どおり日本の安全保障を意味する条約であり、そのきめごとに則って今回の配備がある。これはわが国をはじめとする東アジア地域の安保に寄与する日米共同の戦略だ。反対するということは、敵の脅威についてどういうことになるのか? といったところであろう。どうも、侵略者たちがわが国を常に狙っているようなのである。
そこで思ったのだ。侵略とはなんだろう? たとえば、日本でいえば中国に対する侵略。あれはなんのためだったか。ただいたずらにドンパチをするためではなく、そこにあるさまざまな資源を手中にし、さらに覇権を拡大せんがための軍事行動ではなかったか。たとえば、アメリカはいままさにイラク侵略を続行中だが、あれが石油利権を狙った侵略であることは明らかになっている(ただし、アメリカの場合は、ドンパチそのものが重要な公共事業になっているという見方もあるが)。つまり、目的があってこその軍事による侵略なのである。ということは、見方を変えると、軍事行動──というのは、ここでは狭義の「ドンパチ」を指すが──を伴わない侵略ということもあるわけで、さしずめ現代ニッポンのアメリカに対する従属ぶりなどは、その作戦がまんまとハマっている好例となろう。なにも戦争だけが侵略ではないのだ。ということは、“侵略者”たちの脅威とやらに怯えていながら、じつはその一方で侵略され、蹂躙されているという実態を、このたまさかの声の主が気がつかなければならないことになろう。受け入れさせられる側の自治体の長の訴えすら無視されたという事実。これは主権に対する立派な蹂躙である。これこそが、今回の事件が持つ最大の問題点だ。そして、そんなささやかな抵抗すら、国は守ってはくれないのだ。その傀儡ぶりときたらどうか。これこそが今回の配備強行があらためて知らしめてくれたわが国の哀しき正体なのである。
残念ながら、アメリカ合州国によるわが国への侵略は、こうして着々と成就しつつあるようだ。ここまで家畜同様に成り下がった被侵略側の例が、歴史上ほかにどこにあろうか?
*おまけ1:
記事を書くにあたって、あれこれ新聞記事などを資料にさせてもらった。まぁ、いつものことである。これはなにもそのときになって集めるということではなく、日ごろから気になるソースを保存してあるのだが、それだけでは不足なので、新たに調べ直してからとりかかることのほうが多い。で、今回もっとも役にたったのが、以下にリンクする「しんぶん赤旗」の執拗ともいえる報道ぶり(もちろんほめ言葉)だった。特定の政党機関紙ということをさっ引いてもなお、ジャーナリズムのあり方として評価できると思う。
※http://www.jcp.or.jp/ranking/page/251_inc.html
*おまけ2:
ところで横須賀といえば、あのコイズミスネオの本拠地だ。あの御仁、どうやら表舞台からの逃亡を謀ったとのことで、ムスコに代役をやらせるつもりらしい。今回の配備に関する密約とスネオとの関係にも注目する必要はあるが、なによりもこんな現状(というのは米軍問題だけではないが)を拒否したいのであれば、地元からあんな男を国政に送らなければよかったのだ。つぎの総選挙は、横須賀市民の民度が試される絶好の機会ともいえよう。
なるほど、たしかにアメリカ合州国だけをみても各地に原子力兵器の類は多数配備されている。たとえば、世界的リゾート地であるハワイでもそれは例外ではない。核と隣り合ってなかよく暮らしているかのようにさえみえる。そんな状況をスタンダードだと捉えれば、慎重論などナンセンスにみえてくるのかもしれない。だが、仮に周辺住民らがなんら抵抗なく核の配備を受け入れているとしたら、それは単なる無知のなせることによるたまさかの蜜月だといえるだろう。すなわち、彼らは核使用のリスクを知らないだけなのだ。知らなければ反対することなどできはしない。あるのはせいぜい消極的な賛成だけだ。言い換えれば、仮になんらかの大事故が起きた場合、こんな平和な状態などあっという間に反故にされ、彼らもまた知人言うところの“日本人”と同様に“核アレルギー”を発揮することになる。
思いだしてみてほしい。有名なスリーマイル島での原発事故(1979年)を受けて、アメリカの世論になにが起きたか? チェルノブイリ原発事故(1986年)が世界に投げかけたものはなにか? なにも日本人じゃなくとも、“核アレルギー”を発症することの格好の証明であったし、たとえばドイツ連邦共和国で“脱原発”が進められているのもよく知られた話であろう。ドイツでは2020年までに19カ所あった原発のすべてを閉鎖する予定だという。エネルギー活用という意味で、原発の是非を単純に判断しようとまでは思っていないが、日本人が核アレルギーならば、ドイツ人についてどのように評価すればいいのだろうという皮肉の例である。ようはアレルギーなどという問題ではないのだ。事実を知り、それをどのように活かすかというセンスと能力の問題にほかならないのではないか。それに、アレルギーどころか、わが国では過去に2度も国土に核爆弾が炸裂させられた経験があり、核実験によって被爆したという甚大な被害を経験している。慎重になってあたりまえである。しかも、とうのジョージワシントンは、この5月に火災事故を起こすという立派な前科持ちなのである。
さて、ここまでは前置きである。今回の配備が理解させたもの。そこを問題としたい。
配備にさいして、受け入れ側である横須賀市も難色を示してきた。蒲谷亮一市長をして、配備の再考を要請したほどである。しかし、日米両政府はそうした声を完全に無視、横須賀市民のおよそ7割が疑問視している(08年6月)ともいわれるなか、配備は計画どおりに完了している。
もちろん賛成の声もある。23日のテレビニュース番組「首都圏ネットワーク」(NHK総合18時10分〜)がこの配備問題を報道、そのなかで市民目線による賛否両論を伝えるシーンがあった。
「反対というが、じゃぁだれが日本を守ってくれるのだ?」
録画したわけではないので抄録になるけれど、そんな声も流された。このひとの言いたいのは、日米安保というのが文字どおり日本の安全保障を意味する条約であり、そのきめごとに則って今回の配備がある。これはわが国をはじめとする東アジア地域の安保に寄与する日米共同の戦略だ。反対するということは、敵の脅威についてどういうことになるのか? といったところであろう。どうも、侵略者たちがわが国を常に狙っているようなのである。
そこで思ったのだ。侵略とはなんだろう? たとえば、日本でいえば中国に対する侵略。あれはなんのためだったか。ただいたずらにドンパチをするためではなく、そこにあるさまざまな資源を手中にし、さらに覇権を拡大せんがための軍事行動ではなかったか。たとえば、アメリカはいままさにイラク侵略を続行中だが、あれが石油利権を狙った侵略であることは明らかになっている(ただし、アメリカの場合は、ドンパチそのものが重要な公共事業になっているという見方もあるが)。つまり、目的があってこその軍事による侵略なのである。ということは、見方を変えると、軍事行動──というのは、ここでは狭義の「ドンパチ」を指すが──を伴わない侵略ということもあるわけで、さしずめ現代ニッポンのアメリカに対する従属ぶりなどは、その作戦がまんまとハマっている好例となろう。なにも戦争だけが侵略ではないのだ。ということは、“侵略者”たちの脅威とやらに怯えていながら、じつはその一方で侵略され、蹂躙されているという実態を、このたまさかの声の主が気がつかなければならないことになろう。受け入れさせられる側の自治体の長の訴えすら無視されたという事実。これは主権に対する立派な蹂躙である。これこそが、今回の事件が持つ最大の問題点だ。そして、そんなささやかな抵抗すら、国は守ってはくれないのだ。その傀儡ぶりときたらどうか。これこそが今回の配備強行があらためて知らしめてくれたわが国の哀しき正体なのである。
残念ながら、アメリカ合州国によるわが国への侵略は、こうして着々と成就しつつあるようだ。ここまで家畜同様に成り下がった被侵略側の例が、歴史上ほかにどこにあろうか?
*おまけ1:
記事を書くにあたって、あれこれ新聞記事などを資料にさせてもらった。まぁ、いつものことである。これはなにもそのときになって集めるということではなく、日ごろから気になるソースを保存してあるのだが、それだけでは不足なので、新たに調べ直してからとりかかることのほうが多い。で、今回もっとも役にたったのが、以下にリンクする「しんぶん赤旗」の執拗ともいえる報道ぶり(もちろんほめ言葉)だった。特定の政党機関紙ということをさっ引いてもなお、ジャーナリズムのあり方として評価できると思う。
※http://www.jcp.or.jp/ranking/page/251_inc.html
*おまけ2:
ところで横須賀といえば、あのコイズミスネオの本拠地だ。あの御仁、どうやら表舞台からの逃亡を謀ったとのことで、ムスコに代役をやらせるつもりらしい。今回の配備に関する密約とスネオとの関係にも注目する必要はあるが、なによりもこんな現状(というのは米軍問題だけではないが)を拒否したいのであれば、地元からあんな男を国政に送らなければよかったのだ。つぎの総選挙は、横須賀市民の民度が試される絶好の機会ともいえよう。
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ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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