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猫池罵詈雑言雑記帳
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 なにかのおりに記したかもしれないが、故・見沢知廉氏が代表作『囚人狂時代』など の著作のなかで、自らが収監されていた罪状を“政治犯”と表明していることに違和感 を覚えたことがあった。氏は当時幹部を務めていた政治グループで“公安スパイ”を殺 害したかどで12年におよぶ懲役を体験しており、著作のいくつかで服役中の模様が描き 出されているのだが、氏はここで自らを“政治犯”としているのである。しかし、事件 の背景が多分に政治的であることは認めるにしても、客観的にみれば殺人罪であり、い うまでもなく現在の刑法に政治犯という規定があるわけでもない。したがって、氏の捉 え方に共鳴できる部分はあるにせよ、そこに“いきがり”(失礼!)のようなものを感 じざるをえなかったのである。
 だが、ここにきて、氏の考えがある意味で正しかったのだと再認識させられた。

 さきごろ最高裁から判決が下された「ビラ配り事件」である。
 これは、共産党の政治ビラやアンケートの類を配布していた男性が住居侵入罪で逮捕 、起訴された裁判で、無罪とした1審の判決を2審の東京高裁が逆転有罪の判決を下し 、上告が棄却されたというものだ。

 事件そのものはきわめて単純である。東京都葛飾区内のオートロックのないマンショ ンで、玄関から入ったうえで各戸のドアポストに共産党の「区議団だより」などを配布 していたところを住民にとがめられ、住民の通報によって逮捕されたというものである 。マンションにはチラシなどを投函する行為を禁止する貼紙があったといい、2審以降 はこれをタテに「立ち入りが管理組合の意思に反することは明らか」と判断したのであ った。
 だが、実際問題として商用チラシなどの投函はごく日常的になされている。もちろん 、そうした一方的な配布物はときに迷惑ではあるが、はたしてそれを住居侵入罪として 刑事事件で起訴(しかもこの場合は重犯の類にも該当しない。また、住民側が「受取る 権利」だってあるのだ)するほどの重要案件だろうかという疑問がある。しかも、ポル ノチラシの類とは異なり、配布されたチラシそのものは公的に認められた政治活動の一 環であり、思想や信条はどうあれ権利として認められるものではないか。単に「気にく わない」で取り締まれるワケがないのである。たとえば、この判決に触れた「朝日新聞 」社説が「表現の自由は政治的立場の違いを超えて、民主主義の根幹である」(12月1 日)としているのはそのためだ。すなわち、この起訴や判決そのものが、共産党という いわば“反体制的な”政党(しかし公に認められている公党である)を標的にした政治 的な狙いをもって事件にもならない事件が利用されたということであることを疑わざる をえないのである。

 この事件がことさら政治ビラに的をしぼったと疑いうる理由はほかにもある。いみじ くも引用した同じ「朝日社説」が触れているが、自衛隊の官舎で「イラクへの派兵」を 反対する主張のビラを配って逮捕された男性(昨年に有罪が確定)は、逮捕からじつに 2カ月あまりも拘束されたという“実績”がある。今回の男性もじつに23日におよぶ拘 束があった(身元は僧侶でありきちんとしている)。これらは、現行法の解釈によって は犯罪を構成すると判断できる可能性をはらむとはいえ、そもそもが認められた権利の うえの行動にあっていいがかりをつけられた結果であり、別件を利用した立件なのだ。 あまりに異常な前例であるといえよう。
 たとえば、反社会的であり、もちろん法を明らかに無視しており、さまざまな意味で 社会的影響の強い芸能人らによる相次ぐ薬物乱用事件はどうか。なかば身元すらアヤシ イともいえる薬物乱用者を容疑者の段階であっけらかんと釈放し(拘束を解き)た事実 と比べると、単に政治ビラを配布しただけの人物がここまで長きにわたって拘束される ことがいかに異常であり異様なできごとなのかがわかるハズだ(しかも釈放された薬物 犯のひとりについては人命に関わる案件すら抱えている!*注)。かつ下される判決と いえば執行猶予つきである。これは“初犯”としては珍しくないらしいとはいえ、では ならばビラ配り起訴事件の「罰金5万円(の実刑)」というのがなんともバランスを欠 いているという解釈にもならないか?

 同じく「朝日」の社説は「強引な捜査とあいまいな司法判断は、自由な政治活動が畏 縮する、息苦しい社会を招きかねない」としているが、まさにそのとおりである。逮捕 にいたった事件そのものはとるに足らない案件を重罪のごとくでっちあげたシロモノで あり、にも関わらず司法がそれをあっさりと追認してみせたというのが、今回の事件の 根幹ということだ。これがきわめて恐ろしいできごと(前例)になったということを、 きちんと見据えてゆく必要がある。

 ひるがえって……。見沢氏の表現を云々するまでもなく、この事件は司法を巻き込ん だまさに政治事件であり、形としては「住居侵入罪」(初犯)という微罪ながらも、そ の正体はまごうことなき“政治犯”ということになってしまう。法のうえで政治犯が規 定されていないわが国・日本。だが、その実態はどんどんと反民主主義的な抑圧国家へ の道を歩んでいるということのようだ。思想や信条はさまざまあるにせよ、こうした前 例がけっして一般大衆にとって有利になりえないということを認識すべきではないだろ うか。


*注:
 薬物事件にさいして、いわゆる泳がせのような意味合いで釈放することがあるという が、これらの事件がそれに該当するかどうかはアヤシイだろう。
 それにしても。執行猶予中にあり、「罪をつぐなっていない」薬物犯を、こともあろ うか宣伝塔として利用するバカ学校ときたらどうか。薬物犯罪は日本政府が従属してや まないアメリカ合州国をはじめ、世界の多くの国々やひとびとが撲滅に取組んでいる重 要犯罪である。ご存じのように死刑になる国だって珍しくない。もちろんだからといっ て重刑に処すればいいということではないし、更正の機会は保障すべきであろうけれど 、だからといってというものがある。恥を知れとはこのことか。
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