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猫池罵詈雑言雑記帳
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 鳩山政権が、はためにはサクサクと施策に打って出ている。なかには大いに疑問符がつくものもあるが、いまのところ賛成できるものも少なくはない。20から21日にかけて起きた郵政会社社長の交替劇もそのひとつである。すでに国民の多くのみならず、とうの郵政会社内でさえ留任が問題視されてきた西川善文前社長を退かせたことは、郵政民営化見直しへの道筋にもつながっており、歓迎すべきできごとといえるだろう。

 しかし、後任人事に関してはいささかの疑問がある。
 後任に内定している元大蔵事務次官の斎藤次郎氏については、じつはあまり知識を持っていないが、テレビニュースで第1報をみたときに、直感的な違和感を抱いた。自民党をはじめマスメディアの多くは、斉藤氏が元官僚であることを取り上げ、鳩山政権が掲げる“脱官僚”と相容れない旨の論を展開している。たしかにそれもあるかもしれない。しかし、鳩山政権の真意はともかく、国民の立場からみた“脱官僚”の要諦は、天下りをはじめとする合法的利権体質からの脱却であり、政治を通して官僚の仕事を適正化するところにあるハズで、なにがなんでも官僚を排除せよという極論ではないと考えている。なにを言われようと、国家を運営するという意味で官僚が果たしてきた役割は無視できないのであり、問題は官僚制度そのものにあるのではないからだ。そうではなく、利権構造や不正の温床を監視、監督することなしにこれまで野放しにしてきた歴代の政権、その反民主主義的なセンスにこそ害悪があるのではないか。斉藤氏個人についての論はさしあたり避けたいが、それが官僚出身だからダメだということは少なくともない。
 ではどこに違和感を覚えたのか。ひとえに、斉藤氏が大蔵事務次官という金融畑の人物であるところによる。民間と官僚という違いこそあれ、郵政のトップに金融の専門職続けてが就くことへの違和感。いうまでもなく郵政会社には保険や郵貯をはじめとする金融事業があり、重要な分野であることは否定できないだろう。しかし、根幹となるべきは郵便およびそれに関連する物流事業ではないのか。そうした事業体のトップに、2代続いて金融職が就く。そこにはある種の狙いがあり、根本的な部分では前任となんら変わらないことを示唆しているような気がしてならないのである。

 さて、けっしてテンポ感が悪いともいえない鳩山政権だが、ここにきて先々に向けての危険性を感じるようになってきた。たびたび紹介させていただいている弁護士の白川勝彦氏は、氏のブログ上で鳩山政権(および民主党)が「政治的に未熟である」とし、その脆弱性に警鐘を発している。
「永田町徒然草 政治家失格…!?」)。

[「国民の生活が第一」という民主党の一枚看板から外れ、一端(いっぱし)の為政者気取りになっているところであろう。いま鳩山内閣の閣僚たちがハシャいでいる問題は、国民の生活の中でいちばん切実に悩んでいること・希望していることからだいぶズレている。なぜ国民の生活実感からズレてしまうのか。それは民主党の議員たちが国民と深い対話していないからであろう。](リンク記事)
 あるいは、
[民主党の閣僚はマニフェストに書いてあることを金科玉条としているが、一利を興す決定的理由にはならない。そもそも新しいことを行うことについては、いろいろな意見や選択肢があるのである。その合意形成は、非常に難しいのである。この政治の要諦が、どうも分かっていないようである。](下記リンク記事)
「"一害を除く"に徹せよ!」
 である。

 政権公約をタテに強硬ともいえる施策が打ち出されているという見方は、すでにあちらこちらで指摘されているが、白川氏の論はまさに正鵠を得ているといえるだろう。「政権公約」に示しておいたからなんでも信任されたということにはなりはしないし、先のコイズミスネオ大勝利選挙(*注)といい今回の政権交替選挙といい、有権者のどこまでが仔細に目を通し納得したのかもアヤシイものだ。いわんや政権公約が信任されていると判断されたとしても、その実行にはなお議論があってしかるべきであろう。どうも鳩山政権をみていると、あまりに拙速にすぎるような気がしてならないのである(もちろんスピードは必要だが)。
 拙ブログでは、前原誠司国交相のひととなりを拠りどころに、政治家としてのの“資質”について疑問を出したことがあった(「ニクソンと旧政権の巻」)が、これは前原氏個人のみならず、現政権の多くの場面に該当することかもしれない。サクサクと小気味よいのはいい。だが、暴走の危険性をも孕んでいるのではないだろうか。たとえば憲法改定。たとえば共謀罪。あるいはスネオ以降、事実上コケたともいえる新自由主義的施策。いまは官僚そのものや大型公共事業の見直しをはじめとする頂点側に手を入れている政権が、いつなんどき裾野側に対する強攻策をとらないとは言い切れないのである。スネオ政権は一般大衆に向けて“痛み”とやらを強要し失策を招いたが、そのアプローチが異なるだけで、現政権の目指すところというのはじつはそれと大きな違いがない可能性だってある。

 カネ貸しの契約書ではないが、民主党らが掲げた「マニフェスト」を再度点検してみてはどうか。あるいは今後の選挙に向けて発信される同種の主張を仔細に検分すべきである。圧倒的な数を得たという点で、前政権と変わらぬ力を持ったのが現政権だ。政権交替は果たした。つぎに国民がやるべきことは、せっかく誕生した新政権が、本当に国民のために機能するように監視し、ときに手をさしのべることではないのだろうか。このままでは、ことのほかあっさりと崩壊するような気がしてならない。


*注:
 あれだけ圧倒的な議席を自創政権にプレゼントし、いまなおそれなりの層を持つというコイズミスネオ支持者、あるいは当時彼らに票を投じたひとびとよ。ここはひとつ、現政権の施策に真っ向から抗議し、国会前なり民主党本部前なりでデモでもやってみたらどうか? なにしろ郵政民営化、極論すればその1点だけを問うように演出された選挙で莫大なる支持をしたのである。騙されただの誤魔化されただの知らなかったなどとは言わせねぇぞっ!
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