航空自衛隊が中国四川省の震災被災地へ向け、救援物資等の輸送名目で派遣される方向にあるという。これは中国政府からの要請とされており、テントや毛布、医薬品などを現地に運び込むとされている。19時のNHKニュースはこれをトップで報じ、被災地における救援が重要な課題であることと先方からの要請であることのほか、仮に実行されれば史上初の例となることをクローズアップしていた。おそらくほかのおもだった報道もこれを似たり寄ったりの内容であろう。人道的支援として、自衛隊初の中国進出。しかしこれはとんでもない暴挙である。
今回の派遣にあたって、その根拠にされているのが「国際緊急援助隊法」(国際緊急援助隊の派遣に関する法律)という法律らしい。御多分にもれずあいまいな解釈の余地がある内容だが、「被災国政府等より国際緊急援助隊の派遣の要請」があるという点では今回のケースに相当するし、派遣される救援隊として自衛隊が検討されうると読んでよさそうではある。しかし、そもそもがわが国の憲法にあって、外国に対して軍事組織である自衛隊を派遣するなどということが許されるのかどうかという点と、この法律との整合性については考え直す必要があるのではないか? これが救援という人道的活動を目的としていても同様であり、それについては5月13日のこのブログに記した。NHKをはじめとして、憲法との関連性についてふれた報道はここまで一切目にしていないが、仮に派遣が実現するとすれば、とんでもない前例をつくりあげることになりかねないことに注意を払う必要がある。
中国側の姿勢にも疑問を感じる。なぜ外国の軍隊(ここでは自衛隊)に物資の手当てを依頼する必要があるというのか。こうした大災害の現場という異常な状況ということを考えてのことであれば、自国に強大な軍隊があるではないか。物資そのものだって手当てできないわけはないハズだ。中国という国そのものは、たとえば同じく自然災害に見舞われているビルマのように物資や資金が乏しいというわけではないだろう。しかしそれでも善意による人的支援や物資の供給ということはあっていいしあるべきだ。だが、他国に軍隊の派遣を要請するというのはやはりおかしいと言わざるをえない。にわかダムの決壊や強い余震の可能性などという危険ということを考慮した場合、軍隊のような特殊訓練を受けた部隊が必要という見方もあるかもしれない。しかしだとすればなおさらこれは自国の軍隊で賄うべき事態であり、こんな生死に関わる場面にそんな要請をするべきではない。仮に物資の調達が国内でできないとすれば、物資は物資として供給に協力(これなら軍隊の必要はない)すればいい話であり、現地への輸送にはそれこそ自国の軍隊なり訓練を受けた組織があたればいいということではないだろうか。なるほど、「自衛隊のテントや毛布などを自衛隊機で中国の空港まで運んでもらいたいという趣旨だと理解している。中国国内での輸送までは望んでいないようだ」(町村信孝官房長官)ではあるが、しかしこれなら物資のみの提供をすれば十分にコト足りる。輸送には自衛隊を派遣する必要がないではないか。
ひとつ穿った見方(妄想と紙一重かもしれないが)をすれば、中国側の狙いは自衛隊派遣そのものにあるのかもしれない。単なる前例づくりのために、自国内での大災害が利用されているのである。その背後で暗躍するのはアメリカ合州国だ。
評論家の田中宇氏は、アメリカが自国の覇権を分散する世界の“多極化”を狙うムキがあると長いこと主張している。じつはそれの意味するところがいまひとつ理解できない部分もあるのだが、仮に穿ったとおりにアメリカがからんでするとしたら、ひとつの筋書きがみえてくる可能性はある。すなわち、東アジア地域における覇権という点で干渉しないという中国との間の密約があるのではないか(中東に対する過干渉と対北朝鮮政策との違いはどうか)。一方で、自国プロパーの軍隊(ようは米軍)の派遣維持が資金的にも人材的にも困難になってきた状況にあって、その穴埋めとして日本の自衛隊に対する外部委託を強化したい(経費もかからずに使い捨て自由)。そのためには憲法9条が邪魔である。したがって、国民の多数の意思とは裏腹に圧倒的力を持つ自創政権はもちろん、政権交替が期待されている民主内の改憲勢力を利用すると同時に、自衛隊の海外派遣という既成事実をつくれるだけつくる。そのために、中国側に働きかけたという可能性はないのだろうかと思うのだ。中国という巨大国家との関係を重視しながら(最大の狙いは成長の可能性を持つ魅力的な中国市場であろう)東アジアにおける覇権のパーツとして日本という飼い殺しの国との関係を残すという狡猾な政策が、この裏にないと言い切れないように感じられてならない。
災害救援という常識的にみてだれもが反対しづらい機会を利用し前例を積み上げる。こうしたことは日常的にも警察の取り締まりなどにもよくみられることである。たとえばオウム真理教事件のような特殊な犯罪を機会にしてなにができたか? たとえばポルノ規制をタテマエに言論全般に網がかけられることは? たとえば実数としてはむしろ減少しているといわれる未成年者による凶悪犯罪を利用してなにか別のことが狙われている可能性はないのか?
中国にせよビルマにせよ、被災地に対する支援は必要である。だが、その手段についてはいまいちど考え直す必要はある。そして、性急に実行される方向にある自衛隊派遣について、背後にうごめく狙いとはなにかということを考えてみるのもムダではないのではないだろうか。
中国側の姿勢にも疑問を感じる。なぜ外国の軍隊(ここでは自衛隊)に物資の手当てを依頼する必要があるというのか。こうした大災害の現場という異常な状況ということを考えてのことであれば、自国に強大な軍隊があるではないか。物資そのものだって手当てできないわけはないハズだ。中国という国そのものは、たとえば同じく自然災害に見舞われているビルマのように物資や資金が乏しいというわけではないだろう。しかしそれでも善意による人的支援や物資の供給ということはあっていいしあるべきだ。だが、他国に軍隊の派遣を要請するというのはやはりおかしいと言わざるをえない。にわかダムの決壊や強い余震の可能性などという危険ということを考慮した場合、軍隊のような特殊訓練を受けた部隊が必要という見方もあるかもしれない。しかしだとすればなおさらこれは自国の軍隊で賄うべき事態であり、こんな生死に関わる場面にそんな要請をするべきではない。仮に物資の調達が国内でできないとすれば、物資は物資として供給に協力(これなら軍隊の必要はない)すればいい話であり、現地への輸送にはそれこそ自国の軍隊なり訓練を受けた組織があたればいいということではないだろうか。なるほど、「自衛隊のテントや毛布などを自衛隊機で中国の空港まで運んでもらいたいという趣旨だと理解している。中国国内での輸送までは望んでいないようだ」(町村信孝官房長官)ではあるが、しかしこれなら物資のみの提供をすれば十分にコト足りる。輸送には自衛隊を派遣する必要がないではないか。
ひとつ穿った見方(妄想と紙一重かもしれないが)をすれば、中国側の狙いは自衛隊派遣そのものにあるのかもしれない。単なる前例づくりのために、自国内での大災害が利用されているのである。その背後で暗躍するのはアメリカ合州国だ。
評論家の田中宇氏は、アメリカが自国の覇権を分散する世界の“多極化”を狙うムキがあると長いこと主張している。じつはそれの意味するところがいまひとつ理解できない部分もあるのだが、仮に穿ったとおりにアメリカがからんでするとしたら、ひとつの筋書きがみえてくる可能性はある。すなわち、東アジア地域における覇権という点で干渉しないという中国との間の密約があるのではないか(中東に対する過干渉と対北朝鮮政策との違いはどうか)。一方で、自国プロパーの軍隊(ようは米軍)の派遣維持が資金的にも人材的にも困難になってきた状況にあって、その穴埋めとして日本の自衛隊に対する外部委託を強化したい(経費もかからずに使い捨て自由)。そのためには憲法9条が邪魔である。したがって、国民の多数の意思とは裏腹に圧倒的力を持つ自創政権はもちろん、政権交替が期待されている民主内の改憲勢力を利用すると同時に、自衛隊の海外派遣という既成事実をつくれるだけつくる。そのために、中国側に働きかけたという可能性はないのだろうかと思うのだ。中国という巨大国家との関係を重視しながら(最大の狙いは成長の可能性を持つ魅力的な中国市場であろう)東アジアにおける覇権のパーツとして日本という飼い殺しの国との関係を残すという狡猾な政策が、この裏にないと言い切れないように感じられてならない。
災害救援という常識的にみてだれもが反対しづらい機会を利用し前例を積み上げる。こうしたことは日常的にも警察の取り締まりなどにもよくみられることである。たとえばオウム真理教事件のような特殊な犯罪を機会にしてなにができたか? たとえばポルノ規制をタテマエに言論全般に網がかけられることは? たとえば実数としてはむしろ減少しているといわれる未成年者による凶悪犯罪を利用してなにか別のことが狙われている可能性はないのか?
中国にせよビルマにせよ、被災地に対する支援は必要である。だが、その手段についてはいまいちど考え直す必要はある。そして、性急に実行される方向にある自衛隊派遣について、背後にうごめく狙いとはなにかということを考えてみるのもムダではないのではないだろうか。
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