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猫池罵詈雑言雑記帳
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 今日は成田空港の開港30周年だそうである。子どものころからなにかとニュースで目にすることも多く、かつ地元・千葉県にある空港が開いてから、もうそんなに月日が経ったのかと思う。個人的には海外旅行にさほどでかけることもないため、実際にこの空港を使うのはごく限られた機会ではあるけれど、それでも海外への出発点としてはどうしても第一選択肢になる。
「飛行機? なんだ、お前ならてっきり船だと思ったんだが……」
 韓国取材から戻ってある友人と会ったらこんなことを言われたぐらいで、じつは韓国や中国、ロシアなどの隣国であれば汽車と船で行きたいものだと常々思いつつも、時間や費用などのことを考えるとどうしても飛行機になってしまう。したがって、成田に限らず空港整備の必要性は大いに認めるところなのだが、ちょっと待てよという気がする部分もある。

 新聞やテレビでも、この開港30周年関連のニュースが伝えられている。おそらくはその大半が「祝30周年」的(場当たり的)な視線であり、ちょっとしたアクシデントとして新型の巨大旅客機が天候不順の影響で予定していた成田への着陸ができなかったというニュースていどに絞られているハズだ。そんななか目を惹いたのが、NHK総合の「首都圏ネットワーク」(首都圏ローカル:18時10分〜19時)で組まれている特集「成田空港30年」である。

 第1回(19日)は「国際空港間競争」として、国内のみならず韓国の仁川空港などとの旅客獲得競争の実態などが紹介されていた。首都圏在住だとわかりづらいかもしれないが、番組で伝えられていたとおり、たとえば新潟空港から仁川乗継ぎでヨーロッパやアメリカ合州国に向かう経路などはわりとスタンダードなようである。ネット上の航空券サイトを開いてみれば、こうした乗継ぎ航空券の類をみつけることもできるだろう。そうした実態を初回にぶつけることにより、30周年を機会として成田空港をめぐる諸問題を取り上げてゆこうという番組制作者の意図はまずみえてきた。

 そして今日、第2回が「発着枠拡大へ 地元の反応」である。
 現在、騒音問題や滑走路容量などから発着枠は年間20万回に制限されているという。これが適量なのかどうかはシロウトにはわからないが、定期旅客便だけに限ってみても、たとえば「JR時刻表」の巻末付近にまとめられた国際線航空ダイヤのうち成田発着ぶんを開いてみれば、かなりのボリュームであることが窺える。数年前、空港の近くにあるルアー釣り用の釣り堀に立寄ったことがあり、飛行機の爆音がほとんどひっきりなしといっていいほどに轟き渡っているのを体験して、騒音被害の一端を垣間見たような気にはなった。ようはそれだけ頻繁な離発着が繰り返されているということであり、20万回というのがそういう数字であるということではないかと思う。おかげで、飛行機を利用せざるを得ないときにも、空港周辺の環境問題が気になってならないのだが……。
「地元」では、これを30万回に増やしたいとしているという。これは、おもに地元の経済界が牽引役となって進められているそうなのだが、ごく素朴な疑問として、空港と地元の経済とがどこまでつながりあっているのだろうかとまず思った。これは時代の違いからして異なるので比較に適しているかどうかはわからないけれど、かつての港湾都市が街としても発展したケースが多々あったのに対して、現代の空港にそれがあてはまるかどうかと考えたことがある。果たして、成田空港を利用する旅客は鉄道なり空港バスなりで成田という街をその大半が素通りしているのではないか(利用便などの関係で空港周辺のホテルが利用されることはあるが)。幸いにして成田山新勝寺をはじめとする観光資源もあるため、来訪客数そのものはけっして少なくはないと思うが、それが成田空港があるゆえかどうかという点については疑問がある(*注)。これは貨物にしても同様であろう。空港からはそのまま東関東自動車道に直結し、市中の道や施設が利用されることは少ないハズだ。はたして、具体的どのようなビジョンが持たれているのであろうか。その点には番組では触れられてはいなかったが。

 じつは、この回の主役はそうした財界ではなく、地元で暮らすふつうのひとびとであったところに、この特集を評価したいところがある。発着回数増にも関連して、現状で未完成状態にある滑走路の整備なども今後に向けて展開するらしいのだが、そこには当然のようにいま現在暮らしているひとびとがいる。
 成田市久住地区。スイカ栽培などが盛んな農村である。
 住民の一部に対しては、整備に伴う補償が提示されているという。ようはカネと引き換えで出ていけということであろう。しかし、なかには動きたくても動けないひとも少なくない。それは仕事の関係もあろうし、(番組では触れられていなかったが)なにより地元への愛着もあろう。取材で紹介されていたのは農家を営む数人であった。大声を挙げなければ満足な会話もできないなかでの農作業と暮らし。狭い生活道1本を境にして補償対象となった世帯とならなかった世帯。しかし騒音という点ではその境にどれだけの意味があるのかはわからない。でも、それが提示された補償とやらなのだ。そしてスイカ農家。住居は補償対象区画に入った。しかし近所にあるスイカ畑はそのわずかな違いによって対象外となった。だが、スイカ栽培はその性格上、どうしても住居と農園とが至近距離になければ支障がでかねない。現在から、さらに先々に予想される騒音への悩みをもってしても、動きたくても動けないのである。これをカネと引き換えに動けというのは、その生活基盤をも捨てろということと同義であろう。
 そして、旧来の住民が歯抜けになっていく農村では、田畑や山林の荒廃も進む。番組では、そんな現状に甘んじることなく、荒れた山に手を入れタケノコの収穫などで抵抗するひとびとの姿を映し出す。
「荒れてゆく山をみるのは寂しいというより切ない」
 自分たちの郷土を眺めやり、農家のおじさんはそう語った(メモをとったわけではないので正確ではないかも知れないが)。

 現代にあって、成田のような大型空港が必要なことは間違いない。さらに便利で使いやすい施設になっていってもらいたいものだとも思う。しかし、その発展の隣り合わせに、こうしたふつうの暮らしがあって、いままさにそれが破壊されかねない状況にあるのだということを忘れないようにしたいとあらためて思った。

 日ごろはなにかと文句をつけたくなるNHKだが、「首都圏ネットワーク」は以前から好んでみている番組であり、今回の特集もまた、なかなか期待に応える内容である。明日以降は「厳重警備の空港」(21日)、「空港建設の歴史をどう見る」(22日)、「これからの成田空港」(23日)と続くそうなので、視聴可能で(地域外の方、御容赦を)ご興味のある方はぜひチャンネルを合わせてみていただきたいと思う。・・・ちょっととりとめのない話になってしまいましたが……。



*注:
 そんななか評価したいのが、空港を拠点として市内の見どころをめぐるという観光バスの設定である。これも同じく「首都圏ネットワーク」で紹介されていたように記憶しているが、おもに外国人旅客がトランジットとして成田に短時間の滞在をするさいに、その時間を使って観光してもらおうという取組みである。旅客にとっては退屈な時間を有効に使えるし、地元にとっては観光客増加ということになるし、成田そのものの宣伝にもなる。
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 ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
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