>スーパーマーケットのフロアのスペースと最大に確保するために、たとえば一つの石鹸会社が、互いに競争する三種類の液体洗剤を売り出す(「分身!」これも「タケチャンマン」の演技のレパートリーの一つである)というようなフェイント(見せかけ)を披露したりした。
上の一文は『東京漂流』(藤原新也・朝日文庫)からの引用である。コイケマエハラだの維新だのといったアベ自民党と同工異曲のカストリ政党が続発するザマを垣間見つつ、「なんかコレに似た話がどこかにあったような……」とふと思ったその正解がこのくだりであった。
アベ自民にとって、コイケマエハラが単に「補完勢力」と片づけられないほどに一心同体に近い存在であることを考えるとき、あるいは「維新」だのと威勢のいいタイトルをつけた一派が、その根幹の部分でアベ自民と同種であることを考えるとき、ここで述べられている「フェイント」との親和性を強く感じないではいられないのである。言い換えると、きたる衆院選において、この3勢力のどこが議席を確保しようと、それは「一つの石鹸会社」の(おそらくは内容に大差のない)商品を買うのと同じことであり、商品棚に並べられた「レパートリー」に騙されているだけの結果になることは間違いない。
もっといえば、コイケを利して「反アベ」とすることの実態は、単にイヌのクソをかっ喰らうかブタのクソを喰らわされるかほどの違いでしかないだろう(この“たとえ”はイヌとブタに失礼というものだな。五木寛之に説教されるかもしれん・笑)。
ところで、引用箇所の直後には、(カネモウケのために)「まったく新しい発明がないというわけでもなかった」(同)として「トランキライザー(精神安定剤)」を挙げている。
>苦境に陥った経営者たちは、この新種の神のお世話になり(同)・・・。
ある種「クスリヅケ」となって久しい自民党。
しかし、『東京漂流』のこのくだりで取り上げられているアメリカ合州国は、戦争によって「消費文明を活性化」させる道から後戻りができなくなっている。そして、それに追従するニッポンもまた、いよいよ後戻りが効かなくなるその寸前に追い込まれてしまった。はたして、わが同胞の意識やいかに?
>五〇年代で低迷していたアメリカ経済は、奇跡的に蘇った。それを蘇らせた連邦政府の大きな政策の一つが、年間一〇〇〇億ドル、国民総生産の約一〇パーセントに当たる大規模な国防予算である。このあたりも、実に八〇年代ニッポンとよく似てきているのである。八〇年代の日本政府が、なぜ急激に右傾化し始めたかという理由が、いま一つはっきりしなかったのだが、(中略)兵器産業こそが、イノベーションの老年期にある消費文明を活性化させるのだ。(同)
このあと述べられる「東西間の緊張」は「テロ」に差し替えられ、わが国では「北朝鮮」や「中国」が用いられている。「テロ」や「北朝鮮危機」が重要問題であることを否定するものではないが、危機をあおりながらそれを自らの利だけのために結びつけている層が、支配層の中枢に巣食っているであろうこともまた否定できないであろう。
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