今日から上期最後の大韓取材である。7〜9月は暑いし航空券が高いしで国外脱出はしばらくお休みだが、その間にわが国の鉄道模様をじっくりと見直してみたいとも思う。
さて、リニア新幹線の建設が決定したのは周知のとおりだが、その計画を受けて、事業用地を提供する長野県に対しある提案をしたくなったというのが今日の話。
さて、リニア新幹線の建設が決定したのは周知のとおりだが、その計画を受けて、事業用地を提供する長野県に対しある提案をしたくなったというのが今日の話。
リニア新幹線は、東京〜大阪間を現在の中央本線に近い内陸ルートで結ぶというもので、まずは2014年度に東京〜名古屋間が着工されるという。同区間の途中では神奈川、山梨、長野、岐阜の4県を通過するが、それぞれに1駅ずつの駅を設置するといわれている。そのため、事業者側の東海旅客鉄道株式会社は6月7日に駅設置の候補地を発表したワケだが、そのさいに問題になったのが長野県との調整だった。つまり、長野県としては地域経済などの問題からJR側が計画するルートよりやや南側にある飯田へのリニア駅設置を訴えてきたのに対し、JRは極力最短距離としての直線ルートに固執、両者の食い違いから長野県のみ駅設置候補地の発表を見送ったのである。
リニア新幹線の狙いからすれば、JRが主張する直線ルートのほうがよりふさわしいのはあたりまえで、ひょっとすると計画の駅数すら理想からすれば多いといえるかもしれない。だが、沿線自治体としてはリニア開業を地域の活性化につなげたいというのが当然であり、また、鉄道の特性からいっても、地域ごとに停車場を持つのは理にかなった方策だといえよう。つまり、都市間交通で速達のみを重視するのであれば東京〜大阪間は名古屋ひと駅でも十分といえるが、それでは飛行機とまったく変わらないこととなってしまうだけでなく、通過沿線での潜在的部分を含む利用者をハナっから無視することとなり、運営上でもさまざまな問題となってるくハズだ。したがって、両者の主張を片方だけにたよってどちらがいいとは決め難い面があるのも事実ではないかと思う。
だが、あえて進言したいのは、長野県としてリニア新幹線の駅の一切を拒否してみたらどうかということである。なぜか? それはもっぱらJR側の姿勢による。
つまり、ターミナルとなる東京都名古屋、大阪の3駅についてはJR自身が整備をする(あたりまえだ)一方で、沿線の途中駅に関しては地元自治体などに対し建設負担を要求しているのがまずおかしい。しかもそのココロときたら「受益者である地元で負担せよ」という傲慢かつ大ウソの論によっているから腹立たしいではないか。
沿線が受益者だって? バカも休み休みに言ってもらいたい。受益者が沿線自治体などならば、とうの東海旅客鉄道株式会社はいかなる理由でリニア新幹線を建設したいというのか? それも大枚をはたいて。ようは、簡単にいえば最大の受益者は事業者たるJR東海そのものではないのか? それに、よほど無用の駅でもないかぎり、新幹線ともなればそれ相応の利用者が見込める(在来新幹線にいくつかの例外があるが、駅数をより絞り込むことになるリニア新幹線では事情が異なるだろう)うえに、駅やその界隈を利用したJRお得意の独占型商売だって可能になる。それでもなお地元こそが「受益者」だと強弁したいのであれば、それはすなわち「そんな儲からないところに駅なんぞつくりたくない」というホンネがあるのかもしれない。だとしたら、それほど通過沿線をバカにした話もないだろう。これは侵略者と侵略を受ける“ドジン”との関係に極めて近い。
そこでだ。長野県としては駅の設置を拒否する一方で、長野県の土地を利用してカネモウケをしたいという「受益者」たるJR東海に対し、その利用料を含めた増税をもって臨んでみたらどうかと思うワケだ。もちろん、周辺インフラ整備を含むいかなる建設に関しても県としては負担をしない。なんらかの建設物や設置物があれば、それぞれに課税をする。もちろん新たな条例をつくり、税率の加算も必要だろう。なにしろただ通り過ぎるだけでなく、騒音や電磁波といった新たな公害をもたらす危険性だってあるのである。加えて、新幹線開業を期に在来線の廃止や特急列車の削減といった問題も浮上するだろう。つまりは、「受益者」であるJR東海が儲かるだけで、地元にとってはなにひとついいことがないのだ。せめて税を相応に負担してもらうというのがスジではないか。
じつはほかにもさまざまな問題をシミュレーションできるのがリニア新幹線であり、その多くは十数年も前に評論家の川島令三氏が指摘しているが、そうした点についても機会があれば触れてみたいと思う。
*補足:
ところで、その東海旅客鉄道株式会社の新幹線車両内で配布されている「WEDGE」なる雑誌の7月号が原発推進の特集を組んだ。
※公式サイト(ココには「東海道・山陽新幹線のグリーン車全座席に搭載(持ち帰り自由)」とあるほか、キヨスク等が販売箇所として明記されている。しかも「時代の先端をゆく雑誌」とかなんとかの売り文句で車内で売り歩いているようだ)
それにしても。見出しだけみても、「SAPIO」か「諸君!」かといった勢いのソレだが、これが公共交通期間の車内で無料配布されているワケだ。あっぱれですね(笑)。版元の株式会社ジェイアール東海エージェンシーというのは、いうまでもなく東海旅客鉄道株式会社の関連企業である。
あくまで一企業の雑誌ゆえ、そこでなにを訴えようと自由というものだが、問題はコレを取り扱う鉄道会社のセンスにある。この特集、一般メディアでどこまで取り上げられたかは不明だが、「しんぶん赤旗」が問題視したうえで、JR東海に問い合わせたという。すると、同社からは「内容にはいっさい関知しない」旨の返答があったというのだ。つまりは、自社関連企業として原発推進を主張しておきながら、自分は関係ない。言い換えれば、暴力団幹部が「やったのは末端の判断であって、組としては関知していない」と開き直るがごとし。いや金正日方式かな? しかしコレ、いつぞやのトヨタ自動車とどっこいどっこいの言い訳ではないか(念のためつけくわえておけば、同社が雑誌のとおりの考えなのであればそれはそれで結構。ただしそれならそれで、もっと堂々と主張してみたらどうだ? 新幹線車両に原発宣伝のラッピングなんてのもシビレそうだ)。
一方真面目に考えるならば、これまでJRは言論媒体に対して言葉どおりに「内容に関知」してこなかったか? JR東海が(主体として)どこまで関わったかはともかく、JRとそれに関連する企業が自社に対する批判を掲載した雑誌や書籍を自社の販売網から締め出した前例はなかったか(影響を慮り実名は秘すが、ある小説家がご自身に関わった類似の実例を苦笑まじりに明かしてくれたことがある。しかしコトはもっと重大だ)。そういうハナっから破綻した言い訳などしていていいんですか?
嗚呼! ホントに乗るのがイヤになる。仕事上のやむを得ないケースはともかく、これからは飛行機と高速バスにとって代わられるんだろうねぇ。わが交通手段と楽しみとは。
リニア新幹線の狙いからすれば、JRが主張する直線ルートのほうがよりふさわしいのはあたりまえで、ひょっとすると計画の駅数すら理想からすれば多いといえるかもしれない。だが、沿線自治体としてはリニア開業を地域の活性化につなげたいというのが当然であり、また、鉄道の特性からいっても、地域ごとに停車場を持つのは理にかなった方策だといえよう。つまり、都市間交通で速達のみを重視するのであれば東京〜大阪間は名古屋ひと駅でも十分といえるが、それでは飛行機とまったく変わらないこととなってしまうだけでなく、通過沿線での潜在的部分を含む利用者をハナっから無視することとなり、運営上でもさまざまな問題となってるくハズだ。したがって、両者の主張を片方だけにたよってどちらがいいとは決め難い面があるのも事実ではないかと思う。
だが、あえて進言したいのは、長野県としてリニア新幹線の駅の一切を拒否してみたらどうかということである。なぜか? それはもっぱらJR側の姿勢による。
つまり、ターミナルとなる東京都名古屋、大阪の3駅についてはJR自身が整備をする(あたりまえだ)一方で、沿線の途中駅に関しては地元自治体などに対し建設負担を要求しているのがまずおかしい。しかもそのココロときたら「受益者である地元で負担せよ」という傲慢かつ大ウソの論によっているから腹立たしいではないか。
沿線が受益者だって? バカも休み休みに言ってもらいたい。受益者が沿線自治体などならば、とうの東海旅客鉄道株式会社はいかなる理由でリニア新幹線を建設したいというのか? それも大枚をはたいて。ようは、簡単にいえば最大の受益者は事業者たるJR東海そのものではないのか? それに、よほど無用の駅でもないかぎり、新幹線ともなればそれ相応の利用者が見込める(在来新幹線にいくつかの例外があるが、駅数をより絞り込むことになるリニア新幹線では事情が異なるだろう)うえに、駅やその界隈を利用したJRお得意の独占型商売だって可能になる。それでもなお地元こそが「受益者」だと強弁したいのであれば、それはすなわち「そんな儲からないところに駅なんぞつくりたくない」というホンネがあるのかもしれない。だとしたら、それほど通過沿線をバカにした話もないだろう。これは侵略者と侵略を受ける“ドジン”との関係に極めて近い。
そこでだ。長野県としては駅の設置を拒否する一方で、長野県の土地を利用してカネモウケをしたいという「受益者」たるJR東海に対し、その利用料を含めた増税をもって臨んでみたらどうかと思うワケだ。もちろん、周辺インフラ整備を含むいかなる建設に関しても県としては負担をしない。なんらかの建設物や設置物があれば、それぞれに課税をする。もちろん新たな条例をつくり、税率の加算も必要だろう。なにしろただ通り過ぎるだけでなく、騒音や電磁波といった新たな公害をもたらす危険性だってあるのである。加えて、新幹線開業を期に在来線の廃止や特急列車の削減といった問題も浮上するだろう。つまりは、「受益者」であるJR東海が儲かるだけで、地元にとってはなにひとついいことがないのだ。せめて税を相応に負担してもらうというのがスジではないか。
じつはほかにもさまざまな問題をシミュレーションできるのがリニア新幹線であり、その多くは十数年も前に評論家の川島令三氏が指摘しているが、そうした点についても機会があれば触れてみたいと思う。
*補足:
ところで、その東海旅客鉄道株式会社の新幹線車両内で配布されている「WEDGE」なる雑誌の7月号が原発推進の特集を組んだ。
※公式サイト(ココには「東海道・山陽新幹線のグリーン車全座席に搭載(持ち帰り自由)」とあるほか、キヨスク等が販売箇所として明記されている。しかも「時代の先端をゆく雑誌」とかなんとかの売り文句で車内で売り歩いているようだ)
それにしても。見出しだけみても、「SAPIO」か「諸君!」かといった勢いのソレだが、これが公共交通期間の車内で無料配布されているワケだ。あっぱれですね(笑)。版元の株式会社ジェイアール東海エージェンシーというのは、いうまでもなく東海旅客鉄道株式会社の関連企業である。
あくまで一企業の雑誌ゆえ、そこでなにを訴えようと自由というものだが、問題はコレを取り扱う鉄道会社のセンスにある。この特集、一般メディアでどこまで取り上げられたかは不明だが、「しんぶん赤旗」が問題視したうえで、JR東海に問い合わせたという。すると、同社からは「内容にはいっさい関知しない」旨の返答があったというのだ。つまりは、自社関連企業として原発推進を主張しておきながら、自分は関係ない。言い換えれば、暴力団幹部が「やったのは末端の判断であって、組としては関知していない」と開き直るがごとし。いや金正日方式かな? しかしコレ、いつぞやのトヨタ自動車とどっこいどっこいの言い訳ではないか(念のためつけくわえておけば、同社が雑誌のとおりの考えなのであればそれはそれで結構。ただしそれならそれで、もっと堂々と主張してみたらどうだ? 新幹線車両に原発宣伝のラッピングなんてのもシビレそうだ)。
一方真面目に考えるならば、これまでJRは言論媒体に対して言葉どおりに「内容に関知」してこなかったか? JR東海が(主体として)どこまで関わったかはともかく、JRとそれに関連する企業が自社に対する批判を掲載した雑誌や書籍を自社の販売網から締め出した前例はなかったか(影響を慮り実名は秘すが、ある小説家がご自身に関わった類似の実例を苦笑まじりに明かしてくれたことがある。しかしコトはもっと重大だ)。そういうハナっから破綻した言い訳などしていていいんですか?
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レジャーライター=植村誠の別館ブログです。
ここではおもに時事ネタを中心に独断と偏見にて雑感を記してゆきます。本館サイトアトリエ猫池ともどもお楽しみください。
なお、トラックバックおよび「コメント」は受けつけない設定にしております(当面はBBSへどうぞ!)。
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